芸術系大学の学生の就職の可能性から

「美大・芸大の学生と就職」をめぐる取り組みについて書かれた、興味深い記事です。ある意味でごく簡単な発想の転換なのですが、そこからはいろいろな可能性が見えてきます。こういう記事を読んで、当の学生だけでなく、企業など採用側の視点も変わっていけばいいなと思います。

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美大・芸大生が「クリエイティブ職」以外でも強い理由
2014/3/26 14:00

美術・芸術大学の学生というと、卒業後は「自分の道」を突き進むか、デザイナーをはじめとする「クリエイティブ職」を目指すと思われがち。しかし彼らは、普通の文系・理系大学生の進路である「総合職」でも力を発揮するということで、企業からの注目が集まっている。

「文系・理系の学問では正解があって、学生たちはそれに向かって競い合いますよね。でも、実社会には答えがないことのほうが圧倒的に多い。美大・芸大の学生たちは答えがないことに取り組むトレーニングを積んでおり、実社会における仕事と同じ脳みそを使っているのです」

「日本初」の美大・芸大新卒採用専門マッチングサービスを展開しているエム・シー・アンド・ピー(MC&P)社マッチングデザインカンパニー代表の國田賢治さんはこう話す。

総合職での採用実績も

2012年秋にサービスを開始。当初は14年春に一期生を送り出すことを見込んでいたが、企業・学生双方からのニーズを受けて、13年春にすでに7人の学生を送り出した。

14年春には二期生100人以上が新卒入社を予定している。業種は外資の自動車メーカーや広告業、化粧品メーカー、ゲーム会社など多岐にわたり、デザイナーをはじめとするクリエイティブ職はもちろん、総合職で採用された人も少なくない。

これまで、美大・芸大生は卒業後の進路として、たとえば一般企業での営業職を希望してそれに十分な能力があっても、求人がなかなか見つけられないという問題があった。一方で、毛色の違う人材を探したいが、具体的にどうすればいいのかわからないという企業は存在する。こうしたミスマッチの問題に切り込んだのが、同社のサービスだ。

運営中の美大・芸大生専用の求人情報サイト「就活美系口」や大学教授・就職課への紹介依頼、学内でのポスター掲示で企業への就職を希望する学生をあつめ、一対一で話をしながら企業の求人とのすり合わせを行い、あるいは学生の希望する仕事がなければ、新たに企業を開拓するといったかたちで紹介をおこなう。同社のサービスを通じて就職した人たちは「仕事なので当然、大変なこともあるようですが、がんばっていますよ」という。

「学んできたことを背景に生かす」

「クリエイティブ職」以外でも美大・芸大生が活躍できる理由は何か。國田さんは彼ら彼女らの強みを一言でまとめるなら「創造力」だとし、冒頭の「答えのない課題に取り組んできた経験」に加えて、以下の利点を挙げた。

・即戦力になる表現技能
・一人で何役もこなせる多能性
・課題に対して必ず他人と違う答えを出そうとする
・理系の学生に勝るとも劣らない量の勉強をこなしている粘り強さ

そして、企業への就職を考えている美大・芸大の学生に向けてこうメッセージを送る。

「学んできたことを全面的に生かせるのはクリエイティブ職ですが、それに加えて、『学んできたことを背景に生かす』、ということを考えれば選択肢はぐっと広がりますよ」

サービスは当初関西圏を中心に展開していたが、14年春から東京方面に本格進出し、学生と就職先の企業も首都圏を中心にさらに拡大していく。すでに東京藝術大学武蔵野美術大学多摩美術大学といった有名大生がサービスを利用しており、今春の内定先にも東京の企業が多くあるという。ゆくゆくは、学生および就活ルートを全国各都市に展開し、世界にまで広げていきたい考えだ。<モノウォッチ>

http://www.j-cast.com/mono/2014/03/26200134.html?p=all

まあ、敢えて補足するとすれば、「文系・理系の学問では正解があって」とさらっと言われてしまっていますが、「正解がない問い」に取り組んでいるのは別に芸術系に限ったことではありません。例えば、哲学科や数学科の学生なら、芸術系の学生並みに「答えがないことに取り組むトレーニング」をたっぷり積んでますよ。

正解もなければ金にもならず、世間的には役にも立たないと思われているようなことに取り組んでいる文学部や理学部といった学部の学生にも、ここで書かれていることは希望の光となるかもしれません。

もしかしたら、こうした流れが出てきているのは、反実学、あるいは反・反知性主義の芽生えであったりしませんかね。だったらめでたいことなのですが。