南海追慕ヌリのお話の続きで、もう一つの、というか最初に設置された自然葬地である「追慕庭園」について、見ていくことにしましょう。
【南海の風景】南海追慕ヌリ・その2:平峴平里自然葬追慕墓域(後編)
それは、追慕ヌリの中ではいちばん奥、反対側の斜面に展開しています。山腹の自然の山林を切り開き、道をつけたり樹木を植え直したりして、自然葬地として造成したものです。
その墓域の様子はといえば、こんな感じです。
うーん。手前にある石碑には、葬られた人の名前を載せていくのだと思いますが、見事に空っぽです。
祭壇になっている空中庭園にも、人気はまるでありません。
右を見ても左を見ても、同じような状態です。
各墓域の象徴としておかれているであろう石積みも、場所によっては崩れるに任せた姿を晒しています。休憩用のベンチも、引っくり返ったままです。開発に失敗してゴーストタウン化した新都市みたいなものですね。
ただ、「入居者」が全くゼロなわけではないのです。自動車の進入路沿いのいちばん高いところに、ごくわずかな埋葬墓を見ることができます。
この「家族庭園1」「家族庭園2」など、アスファルト道路沿いのアクセスしやすい墓域に入っているこれらの方たちが、南海追慕ヌリの第1自然葬地である「追慕庭園」に眠っている人の全てということになります。私が歩き回って見た限りでは、2015年末の時点で20名はいないと思われます。
以前、「南海追慕ヌリの自然葬地の実質利用率はほぼゼロの状態である」という話を聞いていたのですが、それが裏付けられたと言ってもいいでしょう。現実問題として、南海追慕ヌリのこの「第1自然葬地」は、葬墓文化の革新という点では韓国でも屈指の先進地である南海郡においても、人々には受け入れられないでいるようです。
http://www.sjrnews24.com/news/view.html?section=photo&no=1188&PHPSESSID=f573648d64b04b864d89f6cf0f178999
▲남해군이 추모누리 공원을 만들면서 조성해 놓은 자연장지. 실질이용률이 거의 제로상태로 언론 등에서는 장사행정의 일번지로 많이 소개되고 있다.
まあ、樹木葬といえば樹木葬、芝生葬といえば芝生葬のような、どっちつかずで中途半端で不思議な形態もさることながら、墓域ごとに置かれた石碑の状況からして、もともとは個別の墓碑を置かない方針だったと思われます。こうした形式について韓国内での評判がよろしくないのは、仁川家族公園でも見てきたところです。
【仁川の風景】仁川家族公園の公園化は止まらない・その12:樹木葬林の沈滞
なので、「家族庭園1」「家族庭園2」の石碑に名前を掲載しながら、個別の石碑を地面に埋め込んでいるのは、テコ入れ策としての妥協の結果ではないかと推測されます。というのは、この自然葬地の他の多くの墓域では、そういう風にして個々のお墓を設置してそこにお参りすることを想定しているとは思えない作りになっているからです。
いちおう歩ける道は刻まれているものの、下のほうはけっこうな急斜面ですし、道と墓域の間には石垣で区切られた高低差があって、階段も入り口もありません。どう考えても、墓域に踏み込むことを想定した設計は本来されていないはずです。
地形的に考えて、この急傾斜は今さら如何ともしがたいのですが、もしこの自然葬地を活用したければ、せめてそうした構造を「改善」して、芝生地に個人の墓碑を置き、そこに参拝することのできる形式に改めることでしょうね。
だいたい、最初に見た時から思っていましたけど、ここまで人工的な造成工事をしておいて「自然葬」も何もあったものですか。見た目の「自然っぽさ」を保つのは素直に諦めた方が、何かとスムーズに事が運ぶと思われます。