旭川大学の公立(市立)化

いま、地方の各地で起きている流れの一つです。こちらの記事でも名前が挙がっていました。これまでの公立化の事例を見ていると、「旭川市立大学」化のメリットはあるだろうと思います。

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「地方私立大学の公立化」という選択

旭川大の市立化検討 新年度予算案に調査費計上へ
01/26 16:00、01/26 17:15 更新

旭川公立大学の設置を目指している旭川市が、私立旭川大(山内亮史学長)の市立化を検討していることが26日、分かった。現在、同大関係者らとの協議を進めており、市は同大の方針を踏まえた上で、2016年度予算案に調査費を計上する方針。

 旭川市内で公立大の設置構想が持ち上がったのは、東海大芸術工学部旭川キャンパスの閉鎖(14年3月)計画が明らかになった10年秋。市内の経済界が木工など地域産業に密着した公立の「ものづくり大学」の設置を要望し、13年には少子化で学生の確保が困難になることを懸念した旭川大が市立化を提案している。

 市内には既に旭川医大、道教育大旭川校、旭川大がある上、ものづくりに特化した大学を新設する場合は校舎の新築に100億円規模の費用が必要。近隣大学との学生の争奪を避け、市の財政負担を軽くするためにも、関係者からは「旭川大の市立化が現実的では」との声が強くなっていた。

 旭川大は1968年、北日本学院大として開校。現在、経済と保健福祉の2学部があり、学生数は大学、短大を合わせて約千人いる。傘下に付属幼稚園や高校、専門学校を持ち、14年度の全体の決算は、経営状況を示す消費収支差額で1億7千万円以上の支出超過(赤字)となっている。

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0227418.html

ただ、北海道新聞のこの社説は…うーん。これ、「公立大学」の話はしてますけど、「私立大学の公立化」の話になってませんね。函館や釧路についての「複数の自治体による運営」という点の指摘はともかく、国際教養大なんてまるで参考にならんでしょう。

挙げるなら、名桜大とか小野田東京理科大のように、「市町村レベルでの公立大学化」を果たしたケースではないでしょうか。

旭川大の市立化 未来を見据えて検討を
01/28 08:50

 公立大学の設置を目指す旭川市が、私立旭川大学(山内亮史学長)の市立化を検討するという。大学側の考えを踏まえ、新年度予算案に調査費を計上する方針だ。

 旭川では、地元経済界などが公立の「ものづくり大学」設置を要望する一方、少子化で今後の学生の確保を懸念する旭川大が市立化を提案していた。

 地方都市では、大学が若者の流出を防ぎ、逆に呼び込む上で重要な存在になっている。市立化によって大学に新たな魅力が加わり、運営が安定するのであれば、検討する価値は十分にある。

 旭川の将来のまちづくりにも深く関わってくる。大学側や市議会だけでなく、市民とも議論を深めて、結論を導き出してほしい。

 学部のあり方など、乗り越えねばならぬ問題がいくつかある。

 家具製造が盛んな地元経済界が求めているのは、木工など地域産業に密着した大学だ。

 こうした分野で多くの人材を輩出してきた、東海大芸術工学部旭川キャンパスが2014年3月に閉鎖されたのが大きかった。

 現在、旭川大は経済と保健福祉の2学部で、「ものづくり」系の学部はない。

 ただ、旭川大は地域の産業を支援する理系学部の新設も提案している。

 市側も、単独で市立大を開設した場合の校舎新築費用捻出という課題を抱え、旭川大のキャンパスを活用すれば費用を抑えられるメリットがある。

 接点を探ることは可能だろう。付属の高校や幼稚園の扱いも含め、協議を重ねてほしい。

 私立大から公立大への移行は、実現すれば道内では初めてだ。

 前例が少ないだけに、学部の構成に加え、採算性などに関しては十分な検討が欠かせない。学生を集めるためにどんな特徴を持たせるかも重要だ。

 先行する道内外の公立大が参考になる。公立はこだて未来大は函館市の観光情報サイトに関わるなど、IT(情報技術)に特化している。釧路公立大は、地域経済に関わる研究・提言が盛んだ。

 秋田県が設置した国際教養大は英語を重視し、全員に留学を義務付け、国内外から学生を集めるなど高い評価を得ている。

 釧路と函館の公立大は複数の自治体により設置されている。

 道内第2の都市である旭川市だが、公立大の設置について近隣の自治体と連携を探るのも一つの考え方ではないか。

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0042489.html

現在進行形で少し先を行っている、似たような公立化のケースとしては、福知山公立大学があるでしょう。北海道新聞は、両丹日日新聞に取材に行くといいのでは…?

大学以外に短期大学や高校などを抱える学校法人の私立大学を公立化するという点など、旭川とよく似たケースだと思いますよ。というか、2000年創立という歴史の浅い私立大学を8万都市である福知山市が公立化しようとしていることを考えれば、はるかに伝統があって地元に根づいた旭川大学を30万都市の旭川市が公立化するというのは、やってできないはずがない、とも思えてきます。

福知山公立大 府が認可 1学部2学科、来春開学 /京都
毎日新聞2015年11月25日 地方版

 福知山市が私立の成美大を公立化して来年4月に開学を目指す「公立大学法人福知山公立大学」について、府は24日、4年制大学として設立を認可した。文部科学省も同日、大学設置者を成美大を運営する成美学園から公立大学法人に変更する認可をした。

 来年4月1日に開学する福知山公立大は、成美大の1学部2学科体制(定員50人)を踏襲。市側は3、4年後には定員を200人に増やし、京都工芸繊維大(京都市左京区)が隣接地に開設予定の「福知山キャンパス」と連携した文理融合の教育を目指す。

 府庁山田啓二知事から認可書を受け取った松山正治市長は「10年先、20年先にあの時に踏み切ってよかったなと思われる大学にしていきたい」と決意を語った。山田知事は「地元の人を受け入れて、就職できるような環境を整えていくこと大事だ」と強調した。【野口由紀】

http://mainichi.jp/articles/20151125/ddl/k26/100/545000c

両丹日日新聞2016年1月 1日のニュース
福知山公立大学開学まで3カ月 実行すべき改革、将来の姿

■初代学長 井口和起氏にインタビュー■

 福知山市西小谷ケ丘の成美大学が、福知山公立大学として生まれ変わるまで、あと3カ月。学長、副学長、事務局長の法人三役人事が決定し、教職員や法人の体制、カリキュラムも整いつつある。将来を左右する開学からの4年間、大学のかじ取りを任されたのは、京都府立大学の元学長で、福知山市出身の井口和起氏(75)=京都市中京区。初代学長として、実行すべき改革や将来の大学像、意気込みなどを聞いた。

福知山のご出身ということで、郷里での思い出は。また現状の課題について、どうお考えですか】

 幼少時代は、戦後の解放感もあって、まちがとてもにぎやかでした。夏場の旧市街地では、どこの街角でも、深夜まで盆踊りをしていたのを覚えています。

 市の課題は多様で、いますぐには答えられませんが、一言でいうなら、当時と比べて、まちに元気と活気がないという印象。夜のまちの暗さと静けさは、たまらなく寂しいですね。

【学長就任について、相当悩んだとのことですが、その理由は。またなぜ引き受けられたのですか】

 悩んだ理由は、まず自分が高齢であるということ。もう一つは、館長や顧問という立場で、新しい府立総合資料館づくりに何年も携わってきて、ようやく来年度に建物が完成し、再来年度には新館が開館するという時期だから。最後の大きな課題が残っているときに、投げ出していいのか−との気持ちが強かったのです。

 一方、市の公立大学検討会議などで委員長を務め、学長も引き受けたというと、「お手盛りで自分が仕事を作って居座った」と受け取る方がいらっしゃるだろうとも思いました。

 それでも引き受けたのは、もうこの年だから私個人がどう見られようとかまわないと、少々開き直る気持ちが出てきたからです。

 賛否両論あるなかで、市が公立大学の開学をお決めになった。こうなった以上、失敗は許されない。ほかに引き受け手がないなら、故郷に少しでも恩返しできればと決断しました。

【学生が住民とともに議論し、地域課題の解決を目指すという授業の構想について、具体的なプランは】

 まずはやってみないと分かりません。初めから市民のみなさんのご信頼を得られるとは思っていないし、本音で語ってくださることも少ないでしょう。信頼関係を築いていくために、まずは教員が先頭に立って学生たちとともに、北近畿地域のまちやむら、市民のみなさんの仕事と暮らしの現場に出向き、学ぶ姿勢で臨まなければならないと思っています。

 ゆくゆくは、教員や学生が住民との交流を通じて課題を見いだし、それを解決する方法を一緒に考え、ともに学びあう場になる、そういう授業が理想ですね。

【市と成美学園は昨年、それぞれ京都工芸繊維大学と包括協定を結びましたが、工繊大に限らず他大学との連携の展望はありますか】

 大学間の包括協定を結ぶだけでは意味がなく、具体的なプランを立てた上での交流が必要。教員同士の共同研究のほか、学生の交流も大切で、カリキュラムが確定してからの話ですが、単位互換なども検討したい。工繊大との文理連携もまだ構想の段階。さらに国際交流の夢もあります。少し時間をいただいて、具体化をめざしたいと思います。

【大学をよりよいものにするためには、教員の意識改革が必要ではないかと思いますが、具体的にどういった方策を】

 年度内に、新しい大学の教職員全員で語りあえる場を持ちたい。教員は教育に関わる改革を中心に、職員は大学づくりの技能向上をめざして、共同で学びあいたいと考えています。

【現行の地域経営学部では、将来的に厳しいとの意見があります。改編する予定はありますか】

 市がまとめた基本構想では、5年後にみらい創生学部に改編することになっていますが、今後の検討課題です。どういう学問をする場なのか、明確に市民や高校生が分かる名称と内容でなければならないでしょう。

【5年先、10年先を見据え、学長としての夢、または大学の目指すべき姿は、どのようなものか教えてください】

 政府の地方創生政策と関わって、図書館を中核にしたまちづくりを進めている地域があります。知識の集積を次代に伝え、平等に提供するという本来の役割に加え、市民らの交流の場にすることによって、まちの中心にするというプランです。

 これを大学に置き換え、福知山公立大学を核にしたまちづくりはできないか。大学だから学生が中心ですが、授業やサークル活動などへの市民参加なども考えたいです。

 そして、まちの人たちが気軽に大学に来られるようにし、交流の場となり、大学からも学生や教職員がまちに出かける。自由に議論が巻き起こる関係が作れればいいですね。

公立大学の開学に賛否両論あるなかで、市民へのメッセージをお願いします】

 いまは水害からの復興や防災対策、福祉に税金を費やす時期で、大学にお金を使ってどうするんだ−という考えもあります。決して否定はしませんが、長期的な展望に立って、何かを成し遂げる作業を止めてしまえば、どんなまちになるか。緊急に必要な施策とは、分けて考えていただければ、ありがたいです。

 またお願いをするとすれば、新しくなる大学に来て、さまざまな活動に加わってほしいということ。そのうえで、具体的に賛成なり、批判なりの意見がいただきたい。ただ、大学づくりには少なくとも数年間かかります。長いスパンで活動に加わっていただき、判断してほしいと思います。

……………………

■開学までの経緯■

 学校法人成美学園が運営する成美大学(旧京都創成大学)は、市民の期待を背負い、2000年4月に市が約27億円を支援する「公私協力方式」で開学。当初から定員割れが続き、近年は数億円の赤字を計上し、経営危機に陥っていた。

 14年に、北近畿唯一の4年制大学を守ろうと、市民有志が募った公立化の要望書が提出され、市は4年制大学のあり方に関する有識者会議、公立大学検討会議を設置し、存続の可否などを議論してきた。

 その結果、地方創生のためにも大学の存続が必要と判断し、公立大学への転換を決断。市民のほか、市議会でも厳しい意見が出されたが、公立大関連の5議案が9月定例会で可決され、文科省や府に運営母体となる公立大学法人の認可申請などを提出した。

 これらが昨年11月に認可されたことを受け、市は学長就任予定者などを公表。現在も開学に向け、カリキュラムの作成などに急ピッチで取り組んでおり、2、3月には一般入試、またセンター利用入試も控えている。

 開学当初は、地域経営学部の1学部で、地域経営学科は定員40人、医療福祉マネジメント学科が定員10人のため、合わせて50人ほどを迎え、在学生105人と合わせ約150人で、新体制のスタートを切る。

http://www.ryoutan.co.jp/news/2016/01/01/009941.html