「KANO」が作り出した甲子園の「台湾デー」

1本の映画が、確実に社会の流れを変えた。そういう実例を、私たちはいま目にしているのだと思います。

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15、16日の阪神オリックス戦 「台湾デー」に
2016年6月9日

 阪神タイガース阪神電鉄は15、16の両日、甲子園球場で行うセパ交流戦阪神オリックス戦を「台湾デー」として開催する。午後6時試合開始で、初日の始球式は台湾映画「KANO」で主役を演じた俳優の永瀬正敏さんが行う予定のほか、ゆるキャラやグルメなど球場内外が台湾カラーであふれる。

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台湾デーが企画されている甲子園球場。2日間にわたって球場内外が台湾カラーに染まる=兵庫県西宮市

 台湾デーはTigereair台湾、台湾観光協会大阪事務所の協力で実施。永瀬さん主演の映画「KANO」は、1931年の夏の甲子園に出場して準優勝した台湾代表・嘉義農林学校の実話を基にしている。

 台湾観光協会ゆるキャラ「?熊(Oh!Bear)」によるグリーティングのほか、オリジナルTシャツやグッズが当たるガラポン抽選会も行う。

 期間中には、台湾出身の来場者限定でお土産ゲットプレゼントも実施。限定フィギュアが入ったオリジナル菓子や甲子園歴史館オリジナル手ぬぐい、扇子、チケットホルダーなどをプレゼントする。

 各日45人の計90人に、関空-台北、関空高雄のTigerair台湾の無料航空券が当たるプレゼントナイターも実施する。

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/160609/20160609044.html

なぜ甲子園で「台湾デー」? 台湾人選手のいない阪神が開催した理由
2016.06.23

6月15日には、阪神甲子園球場で「台湾デー」が行われた。郭俊麟投手、C.C.リー投手が所属する西武ライオンズでは4月に行われたが、台湾人選手のいない阪神タイガースで、なぜ「台湾デー」が行われることになったのだろうか。

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photo Yurie Shinozaki

「確実に増える」甲子園への来場者、「より多くの台湾の方に球場に来ていただきたい」

 近年、日本球界と台湾球界のつながりはさらに強くなっている。多くの球団に台湾人選手が所属し、チーム内での存在感も増してきた。以前から熱狂的だった台湾におけるNPB人気もさらに上昇。現地ファンからの注目度も今まで以上に高まってきている。

 6月15日には、阪神甲子園球場で「台湾デー」が行われた。郭俊麟投手、C.C.リー投手が所属する西武ライオンズでは4月に行われたが、台湾人選手のいない阪神タイガースで、なぜ「台湾デー」が行われることになったのだろうか。阪神甲子園球場球場長代理の向井格郎さんに話を聞いた。

――なぜ「台湾デー」を行うことになったのですか?

「日本統治時代の台湾から、1931年に甲子園に初出場し準優勝した『嘉義農林学校野球部』の実話を基にした映画『KANO』が2014年に台湾で公開され、大ヒットしました。それをきっかけに、阪神甲子園球場に足を運ぶ台湾人の方が増え『甲子園歴史館』には、2014年に1万4000人、2015年は1万5000人もの方が台湾から来場されました。2014年以前は数千人でしたので、映画の影響で阪神甲子園球場が広く知られるようになったのだと思います。このような経緯を踏まえ、より多くの台湾の方に球場に来ていただきたいと『台湾デー』を開催することになりました」

――阪神甲子園球場で野球観戦をする台湾人の方も増えているのでしょうか?

「入場者の実数を調べることはできませんが、日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語で用意している球場案内のパンフレットの減り方が、中国語が一番多いので、確実に増えていると思います。昨年から、台湾の中学・高校の修学旅行生が阪神甲子園球場へ野球観戦に訪れています。台湾の学校が修学旅行で阪神甲子園球場を訪れたのは、昨年が初めてです。今年度は既に修学旅行で台湾から8団体が訪れています。やはり映画の影響が大きいと思います」

――台湾人選手は所属していませんが、台湾人の方に阪神タイガース阪神甲子園球場は知られていますか?

「2013年まで阪神タイガースに所属した林威助選手は、現在、台湾のプロ野球チーム中信兄弟でプレーしており、台湾でも人気です。また『嘉義農林学校野球部』で甲子園に出場した呉昌征さんは、その後、読売ジャイアンツ阪神タイガースでプレーしているので、台湾でも阪神タイガースはよく知られています。実際に旅行博に出展した際にチラシを配ると、甲子園のフレーズを見て手に取って下さる方は非常に多いです」

台湾人旅行者の更なる増加を目指す甲子園、「たくさんの人に野球観戦を楽しんでもらいたい」

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映画「KANO」に出演した永瀬正敏さん、陳永欣さんらによるトークショー【写真提供:阪神甲子園球場

――より多くの台湾人旅行者を阪神甲子園球場に呼び込むために、どんな戦略をお考えですか?

「先月(2016年5月)、台湾の台北・高雄で行われた旅行博に、『台湾デー』にもご協力していただいている台湾のLCC『タイガーエア台湾』と同じブースで出店し、阪神甲子園球場としてチケットを販売しました。今後も私たち『阪急・阪神ホールディングス』全体で力を入れていきたいと思っています。阪急交通社でツアーを組み、梅田のHERBISや六甲山に行ってもらい、野球を見てもらうということも考えています。ジェット風船を飛ばすのを楽しみにしている台湾人の方も多いので、たくさんの人に野球観戦を楽しんでもらいたいと思っています」

――台湾からもチケットは購入できるのでしょうか?

「私たちが運営している『甲チケ』システムを利用して、ホームページから直接購入できるようになっています。昨年から中国語にも対応していますし、カード払いも可能なので、試合が中止になっても返金がスムーズにできます。来年以降、いかに案内していくかが課題です」

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永瀬正敏さんも始球式に参加【写真提供:阪神甲子園球場

「台湾デー」のスポンサーである台湾のLCC「タイガーエア台湾」は、この「台湾デー」に合わせ「台北-関西空港」の4便と「高雄関西空港」の1便で客室乗務員が阪神タイガースとのコラボレーションで制作したユニフォームを着用。さらに、試合観戦者に航空券を抽選でプレゼントするなどのキャンペーンを実施した。「タイガーエア台湾」のCCO、アイリーン・フアンさんは「阪神タイガースは台湾でも人気があるチーム。映画『KANO』が公開され、台湾でもよく知られています」と話し、今後も甲子園ツアーを組むなど協力していく予定だという。

 16日には映画「KANO」に出演した永瀬正敏さん、陳永欣さんらがトークショーや始球式を行うなど、球場は台湾ムード一色となった。プロデューサーの魏徳聖さんは「台湾と日本は、地震の際などにお互い助け合うが、悲しいことではなく野球という共通の文化で親交を深められたら」と語った。

 セ・リーグの球団で初めて行われた「台湾デー」。映画をきっかけに、さらに台湾からの来場者を増やし、日本の野球に興味をもってもらえるか。阪神甲子園球場の今後の戦略に注目だ。

【了】

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

http://full-count.jp/2016/06/23/post36140/

「KANO」については、日本封切り時にいくつか記事にしていますし、嘉義で「KANOごっこ」もしてきました。関心があるようでしたら、適当に検索してみてください。

朝日新聞と毎日新聞の「KANOと甲子園」記事 - 大塚愛と死の哲学
KANO関連記事いろいろ:産経新聞・デイリースポーツその他 - 大塚愛と死の哲学
「KANO」をめぐる毎日新聞の記事とNHK「ニュース9」の特集 - 大塚愛と死の哲学
読売新聞の「KANO」評 - 大塚愛と死の哲学
「KANO」が得た高評価 - 大塚愛と死の哲学

でもって、次の機会には、台湾で始球式を成功させた稲村亜美もぜひ。

5月8日の稲村亜美:始球式のマウンドに立つ - 大塚愛と死の哲学