9℃『目黒さんは初めてじゃない』を読む。

最近読んで面白かった作品。うっかり既刊を全部買って読んでしまった。

ええお話、というかひたすら羨ましいわこれ。何この当たりクジ同士のカップル。ずっと読んでられるぞ。

童貞ダサダサ野郎のように見えて、連載1ページ目で告白して、2ページ目でOKもらう古賀くん*1。自他ともにヘタレ認定されているけど、最初っからええ度胸してるやん。思っていることは言葉に出して、聞く耳を持って見守って、押し付けられたも同然の役回りでリーダーシップを発揮する素質まで兼ね備えたレアもんやんけ。チラチラ美形の片鱗見せてるし、今まで碌なの引いてこなかった目黒さんにとっては、向こうから跳んで火に飛び込んできた王子さま以外の何者でもない。
(ええ息子さんを育てましたねお母さん。)

美少女だけど(事実無根でもない)よからぬ噂が立っていた目黒さん。不思議だけど不思議でない、元カレにたくさん触れられてきたようで誰にも触れられていない。目立っていたはずなのに誰も引けてなかった一世一代の特賞当たりクジですやん、古賀くんにとって。目黒さんでも当たり引くまではけっこう苦労してるのに、いきなり初手でそれって、どんな善行を積んだらそんな功徳が得られるんや。

この世界では、目黒さんがビッチかどうかは古賀くんにとっても誰にとっても何の意味も持ってない。むしろ、目黒さんが今まで経験しそこなってきた大事なことを一つ一つ、何もかもが初めての古賀くんと一緒に経験していくストーリー。いずれ二人が経験するだろうセックスだって、最終的にリードするのはたぶん目黒さんじゃない。

目黒さんの「しあわせなセックス」の初めては、おそらくきっと、古賀くんと。

ほら、二人に最初に与えられた設定を一つ一つ乗り越えていけば、そこに見えるのは非の打ちどころのない理想形。こんなん現実にあったら、羨ましすぎてやさぐれそうになるわ。

まあでも、古賀くんも目黒さんも、みんなと一緒にずっとそこにいたんですよね。それを今の今まで見過ごして見下していたのが、その他大勢のモブキャラがモブキャラである所以なのでしょう。「だからお前らはそうなんだ」と。反省してます。

(ただし、カテキョーの先生!お前はカスだ!目黒さんにとって学ぶところがあったとしてもクズ、有罪だ有罪!)

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*1:宇崎ちゃんと桜井センパイの話なら、ここに至るまで1000年はかかります。