大阪と九州を結ぶ九州新幹線10年

九州、特に熊本・鹿児島方面に行くときに九州新幹線はしばしば乗ってきました。いやそれはもう、前線開通前と後では、大阪からの距離感が全く違いますよ。時短効果もさることながら、新大阪駅から熊本駅鹿児島中央駅に直行できる「みずほ」「さくら」の存在、その直通効果はものすごく大きいと思います。

いっぽう、飛行機も使いますけど、これは空港へのアプローチの時間を込みにしての所要時間や乗り換えの手間を考えると、新幹線といい勝負なんですね。飛行機の優位性が高まる新大阪以遠の地域を切り離し、新幹線でも乗り換えを必要とすることに割り切った「新大阪発着」という九州新幹線の設定が絶妙なんだと思います。

九州新幹線10年、航空機と二分 熊本ー大阪、時短効果で利用伸ばす
熊本日日新聞 | 03月01日 07:50

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多くの鉄道ファンに見送られて出発する新大阪行きの一番列車「さくら」(手前)=2011年3月12日、熊本市西区のJR熊本駅

 九州新幹線鹿児島ルート(博多-鹿児島中央)が全線開業して12日で10年を迎える。同時に新大阪までの山陽新幹線との相互乗り入れもスタート。それによる時間短縮効果もあって、熊本と大阪の間を移動する際の新幹線利用者が増え、航空機の利用割合とほぼきっ抗する状況になっていることが熊本日日新聞の分析で分かった。

 国土交通省の旅客地域流動調査や九州運輸局の統計データを基に、熊本と大阪をそれぞれ発着地として移動した人の数などを分析した。

 それによると、JR(新幹線と在来線の合算)と航空機を合わせた2010年度の輸送人員は72万人だったのが、データが最も新しい18年度には99万2千人と37・7%増加。移動時間の短縮効果や移動手段の多様化で往来する人の“パイ”が拡大した格好だ。

 移動手段の比率をみると、10年度は航空機が73・3%を占めていたのに対し、18年度は50・9%に低下。その分、新幹線利用の割合が増え、両地域の移動において航空機と二分する状態になっている。ただ“パイ”の拡大で、航空機の輸送人員の落ち込みは10年度に比べて2万3千人程度にとどまっている。

 また大阪以外の主要都市間のJRの輸送人員(18年度)は、熊本-広島が10年度比2・1倍の21万6千人、熊本-岡山が同2・2倍の9万7千人と、いずれも大きく伸びた。

 熊本-福岡も584万人と1・4倍に拡大した。一方、熊本-福岡の高速バスの輸送人員をみると、18年度は149万人で10年度比18・4%増。全線開業以降もおおむね年間140万~150万人を維持しており、すみ分けが図られている印象だ。(中原功一朗)

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◆直通運転 効果大きく

 この10年間で県内から大阪以西の都市間移動の際に存在感を増した新幹線。県内の関係者は九州新幹線が九州域内だけを行き来する“ローカル新幹線”ではなく、新大阪まで直通運転をするようになった効果が大きかったと指摘する。

 「熊本から乗り換えなしに関西や中国地方に新幹線で行ける。県民に心理的な近さを感じさせる効果があった」。交通政策に詳しい坂本正・熊本学園大シニア客員教授(73)は分析する。

 JR西日本大阪市)によると、熊本-大阪のJR利用のほぼ100%が新幹線。熊本-新大阪の所要時間は最速2時間57分と全線開業前に比べて1時間短縮しており、同区間について「全線開業直後、乗客数は開業前の3割増になり、その後も堅調に推移している」と話す。

 新大阪への直通運転は県内経済界有志の呼び掛けがきっかけだった。当初は博多での全面乗り換えが計画されていたが、利便性の向上を目指して誘致運動を展開。国会議員らを巻き込んでJR側に東京や大阪への乗り入れを働き掛けた。

 当時、発起人の一人として奔走した熊本第一信用金庫の森本孝会長(86)は「直通運転の実現で福岡はもちろん、大阪が近くなり、観光客が増加。新幹線が日本の地図を小さくした」。前熊本商工会議所会頭の田川憲生さん(73)=ホテル日航熊本最高顧問=も「九州新幹線が博多止まりだったら、従来の特急とあまり変わらなかった」と指摘。新大阪までの直通運転で「西日本と九州を結ぶ大動脈が出来上がった」と強調する。(中原功一朗)

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