『朝鮮日報』特集「追いつめられる大学生」

記事入力 : 2011/03/13 10:41:19
大学休学者の44%が「授業料準備できず」(上)
【特集】追いつめられる大学生

授業料・生活費を稼ぐため、焼き肉店や居酒屋でアルバイト
アルバイトをはしごしても学費や生活費まかなえず
貯蓄銀行で借金、返済できずに債務不履行者に
風俗店の求人広告に女子大生が殺到

 韓国では今、生活苦という崖っぷちに追いつめられ、苦労しながら大学に通う学生が増えている。「キャンパスのロマン」という言葉は最近、大学周辺で「死語」となって久しい。物価の上昇や景気低迷により、大学生の子どもに対する保護者の援助が難しくなる中、多くの大学生がアルバイトに追われている。

 東国大学2年のクさん(20)は学校に友人がいない。新入生のころ、同級生が新入生オリエンテーションに参加したり、学科の集まりに顔を出したりしているとき、一人でアルバイトをしていたためだ。同級生たちは「オリエンテーションに参加しないと大学生活が大変だ」と言って誘ったが、クさんにとって学校外での活動はぜいたくだった。1泊2日のMT(メンバーシップトレーニング=親睦を深めるために行う合宿のようなもの)で酒を飲むために払う会費1万ウォン(約720円)は、クさんの1週間の生活費に相当する金額だった。

 昨年1年間、クさんは勉強よりもアルバイトをした記憶の方が多い。学期中の平日にはソウル市道峰区倉洞で2時間、家庭教師のアルバイトをし、週末には午前10時から午後4時まで、同市江南区のファストフード店でハンバーガーを作った。夜10時から夜中2時まではバーでグラスを磨き、酔った客の話し相手をした。冬休み中にも、3月からの新学期の授業料のために家庭教師2カ所とバーテンダー補助のアルバイトをした。

 クさんはいわゆる「貧民層」ではない。1998年のアジア通貨危機の際、大企業に勤務していた父が失業し生活がやや苦しくなったが、故郷の慶尚南道蔚山に家もある。しかし1学期の授業料400万ウォン(約28万9900円)と1カ月100万ウォン(約7万2500円、家賃45万ウォン〈約3万2600円〉を含む)の生活費まで援助する力は保護者にはない。最近は母の関節炎が悪化し、治療費の負担も大きい。クさんは「あまりに疲れて授業中に居眠りすることも多い」と話した。

 大学生たちは、入学する前から生活費の準備に追われることも多い。今年忠北大学に入学するチョさん(19)は、入学を控え、家の近くの焼き肉店で時給6000ウォン(約430円)、1日6時間のアルバイトをしている。父が事業に失敗したため、自ら新学期の授業料と寮費を準備しなくてはならなくなった。チョさんは「国立大なので授業料が250万ウォン(約18万1200円)と、それでも負担が少ない方だが、学費のために1日3万6000ウォン(約2600円)ずつ稼ぎながら、今後どうやって生活していけばいいのか悩んでいる」と話した。


高い授業料や上昇し続ける物価に苦しむ大学生たちが、貯蓄銀行のローンに手を出すケースが増えている中、先月22日、ソウルのある貯蓄銀行の支店前で、1人の大学生がローン案内の電光掲示板を見ている。/写真=趙寅元(チョ・インウォン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20110313000011

記事入力 : 2011/03/13 10:41:23
大学休学者の44%が「授業料準備できず」(下)
【特集】追いつめられる大学生

 どうしようもなくなって、普通の銀行よりも利率が高い貯蓄銀行などで生活費を借り、返済できずに債務不履行者となる大学生も少なくない。

 釜山で大学を卒業したクォンさん(28)は、大学4年だった2008年9月、ある貯蓄銀行で生活費として500万ウォン(約36万2400円)を借りた後、督促に苦しめられている。クォンさんは「卒業して就職したら返すつもりだったが、地方大出身者は就職も楽ではない。借金の利子に追われて暮らしている」と話した。

 全羅北道全州の大学に通っているヤンさん(24)は昨年6月、急に家族との連絡を絶った。数カ月後、母親(44)の元に貯蓄銀行3カ所から「ヤンさんが1300万ウォン(約94万2200円)を借りている」という書類が届いた。パクさんは「息子が1人で苦しんだ末に行方をくらましたようだ。大学生に1000万ウォン(約72万4800円)以上の大金を貸すなんて」と話した。

 貯蓄銀行などは、政府で保証する学資金ローンや一般銀行のローンと違い条件が緩いため、大学生たちが集まる。貸し付けの過程で在学状況や兵役を終えたかどうか、年齢、学年、返済延滞の有無などを確認するだけだ。しかし一部の貯蓄銀行は、広告に出している利子(8%‐37%)よりも高い平均24%から28%の利子を設定し、学生たちの負担を大きくしている。インターネット就職情報サイトのジョブ・コリアが昨年、大学卒業予定者1179人を対象に調査した結果によると、10人中7人以上が借金をしていた。

 家計が苦しい大学生たちは、休学が「選択」ではなく「必須」だ。アルバイト専門情報サイトの「アルバモン」が今年1月、大学生626人を対象に調査した結果、大学生4人に1人が「今年1学期は休学する予定だ」と回答し、あきらめた理由として「授業料を準備できないため」が44.7%と最も多かった。昨年の経済協力開発機構OECD)の指標によると、韓国の大学の授業料はOECD加盟国中、米国に次いで2番目に高い。

 ある風俗営業の店のオーナーは「数年前から、大学の長期休暇の際、インターネットに求人広告を載せると女子大生たちが殺到する。授業料のために金を稼がないといけないというが、ここまでして大学を卒業して何の意味があるのかと思う」と話した。

 大学生の授業料の問題を扱う民間団体、全国授業料対策ネットワークや参与連帯などは「昨年末、大学生1621人を対象にアンケート調査を行ったところ、回答者の88.6%が授業料を準備するのに苦しんでいる」と発表した。

李恵云(イ・ヘウン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20110313000012

記事入力 : 2011/03/13 10:49:35
大学キャンパスで進む2極化(上)
【特集】追いつめられる大学生

キャンパスに高級レストランが続々入店「学食で食べるのは貧困層
アルバイトに追われてうつ病に、生活苦から犯罪も

 「裕福な環境の友達を見ると、耐えられないほど腹が立つときがある。全て投げ出してしまいたい」

 アルバイトで生活しているというソウル市内の私立大4年生、チョンさん(24)は、先月28日に記者と会い「正直、生活費や授業料の心配をしている大学生は、みんな自分と同じように考えるだろう」と話した。チョンさんは「車で大学に来る学生を見ると、敵意を感じることもある」と話した。

 両親の経済力の差によって大学生の生活格差が広がり、二極化が深刻になっている。自分で生計を立てながら大学生活を送る大学生たちは、自分たちが相対的に搾取されているように感じることもある。

 特に最近、大学の構内に数万ウォン(数千円)台にもなる高級レストランが入店し、学生食堂で数千ウォン(数百円)の食事をする学生たちの反発を買っている。

 梨花女子大学の場合、構内に「キャセイ・ホー」という高級中華料理店が入っている。ランチメニューが2万4000ウォン(約1750円)から4万ウォン(約2910円)もする。「ドクター・ロビン」というパスタ料理店は、サラダが8000ウォン(約580円)だ。構内の学生食堂の価格は2000‐2800ウォン(約150円‐200円)なので、10倍以上も高いメニューを販売していることになる。同大学4年生のキムさん(23)は「キャセイ・ホーで昼食を取る学生と、学食で(食事のために)並んでいる学生との間に違和感がないと言えばうそになる」と話した。

 ソウル大学も似たような状況だ。経営学部前の食堂の1階にある「ザ・キッチン」は、1万ウォン台(約700‐1400円)のピザと7000ウォン(約500円)前後のパスタを販売している。2階の学生食堂のメニューは2500ウォン(約180円)で、学生食堂で食事をすれば「貧困層」と言われるほどだ。ソウル大学4年生のキムさん(27)は「1000ウォン(約72円)の食費ももったいないほどなのに、数万ウォンのランチを食べる学生たちを見ると『あいつらは自分とは違う』と考える」と話した。


2月28日午後、ソウル大学の学生が、ソウル市冠岳区奉天洞にあるワンルームアパートで公認会計士の問題集を見ながら考え込んでいる。学生は「生活費がギリギリで予備校代まで出せないので、一人で勉強しているが、大変なことも多い」と話した。/趙寅元(チョ・インウォン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20110313000014

記事入力 : 2011/03/13 10:49:43
大学キャンパスで進む2極化(下)
【特集】追いつめられる大学生

 7平方メートルにも満たない、月50万ウォン(約3万6400円)の受験生用アパートで暮らす東国大の3学生(25)は「保証金1000万ウォン(約72万8000円)に、家賃95万ウォン(約6万9000円)もするオフィステル(オフィスとしても住居としても使えるマンション)に住んでいる友達を見ると距離を感じる。卒業して就職しても、この差を縮めるのは難しいだろう」と話した。明知大学の4年生(24)は「専門学校の受講料が払えないので、無料の特別講習を探して通っている。1講座が数十万ウォン(数万円)もする英会話学校に通っている友達がうらやましく、そんな友達には追い付けない二流の人生を送るのかと思うと怖い」と話した。

 生活費を稼ぐために三つ、四つのアルバイトに追われながら大学生活を送る学生たちは、経済的な苦しみ以上に、うつ病や挫折感など心理的にも不安でつらい状況に置かれている。ソウルにある私立大学を休学中のキムさん(29)は、2002年に入学して以降、授業料を稼ぐためにアルバイトに追われている。05年にはうつ病になった。キムさんは「薬を飲まなければ、全ての心配ごとが頭に浮かんで全く眠れず、日常生活が送れない」と話した。キムさんは休学と復学を繰り返している。

 苦しい生活に疲れ果てて自暴自棄になったり、窃盗などの犯罪やインターネットゲームに没頭したりするなど、現実逃避に走るケースも少なくない。

 全州では先月、近所のスーパーなどで80万ウォン(約5万9000円)を盗んだ疑いなどで、19歳の男が在宅のまま起訴された。男は全州市内にある大学の1年生で、午後2時から夜中の1時まで、家の近所の小規模な工場で働いて生活費を稼ぎながら勉強を続けていたが、授業料が足りずに窃盗を犯したことが明らかになった。一部ではあるが、女子大生が風俗店で働き始めるケースもある。ある大学4年の学生は「授業料の不足分と生活費を稼ぐために風俗店で働いているうちに金の味を覚え、(一般企業への)就職をやめた女子大生も多いらしい」と話した。

 高麗大学社会学科のユン・インジン教授は「アルバイトで生活費を稼がなくてはならない大学生たちは、学生時代の貧しさが卒業後の社会生活にもつながっていく可能性がある。このような状況が続けば貧しい学生は自暴自棄になり、社会に対する不満を抱くことになる」と述べた。

 さらに、極端な選択をする大学生も珍しくない。先月8日、江原道江陵市内谷洞のワンルームアパートで、大学4年生(23)が生活苦から炭を燃やして自殺したほか、昨年11月には大邱市西区飛山洞の住宅で、休学中だった大学生(21)が首をつって亡くなった。

 誠信女子大学心理学科のチェ・ギュマン教授は「自分の(貧しい)環境に対するあきらめの気持ちが生まれると、うつ病にかかりやすく、深刻な場合には自殺を試みる可能性が高い。生活苦にあえぐ大学生たちは、まさに崖っぷちに立っているようなものだ」と話した。

金城敏(キム・ソンミン)記者
チ・ヒョックン記者

http://www.chosunonline.com/news/20110313000015