【上海の風景】ファストフードな外資系の食べ物屋さん

この記事の冒頭に出てくるチキン屋さんって、これですね。宿の近くにもありましたし、街歩きの中でもそこらじゅうで見かけました。店の前で行列しているところもよく見かけましたから、噂に違わぬ人気店です。食べたかったんですけど、タイミングがうまく合わなくて食べれませんでした。


フライドチキンはKFCだけではない
食の安全でブランドを生み出す台湾企業
内田 文雄
2013年3月1日(金)

 昨年からここ上海で「超級鶏車(Super Chicken)のフライドチキン食べてみた?」という会話が本当に多く聞かれるようになった。フライドチキンと言えばやはり中国でも「ケンタッキーフライドチキン」がその代表。「KFC」の看板はあちこちで見るし、中国全国では3000以上の店舗を構えているらしい。にもかかわらず、中国人の知人に「何が流行っているの」と聞くと、「食べ物だったら超級鶏車ですよ」と今でも、そういった返事が返ってくる。


超級鶏車の店頭。奥が食事をするスペース

 超級鶏車の店舗の多くは、対面販売の持ち帰りのみ。ただし、最近では食べる場所も用意したファストフード店の形態も多くなってきた。私がたまに訪れるのは、定西路と延安路という大きな道路が交わっていて、飲食店が多く建ち並んでいるエリアの中にある定西路店。定西路店には25席用意されていて、デリバリー注文も受け付けている。

味をうまくアピールする台湾企業

 メニューの一番人気である、ちょっと辛めの衣がついたフライドチキン「香辣大鶏排」が12元(約170円)。ほかにもフライドチキンのメニューとして、少し大ぶりなものやスパイシーなものなどがある。また、魚の唐揚げやフライドポテトなどの揚げ物もたくさんある。セットメニューも充実している。セットは17元、18元、23元の3種類がメインで、セットにすると約10%ほど得をする。

 フライドチキンは注文を受けてから揚げるので、ホクホク、アツアツが食べられる。あまりにも熱いので、刺して食べるための串が添えられる。味はというと、個人にもよるだろうが、私はケンタッキーフライドチキンなどと比べてもジューシーで、全くひけをとらないと感じた。ドリンク類も充実しており、コーラや各種ミルクティーなどがそれぞれ5元(約70円)。最近はこの超級鶏車をまねたとも思えるフライドチキン店、「鶏車達人」や「鶏排超人」といった名前の店もあり、いわばフライドチキン(唐揚げ)がちょっとしたブームとなっている。


超級鶏車のメニュー。フライドチキンの種類は4種類。サイドメニューも多く、またセットメニューも充実している。

 ベーカリーショップ「85度C」、ラーメン屋「味千拉麺」、定食屋「永和大王」、レストラン「代官山」、レストラン「一茶一座」、コーヒーショップ「真鍋珈琲」、コーヒーショップ「両岸珈琲」、ベーカリー&ケーキ屋「可頌坊」、お菓子屋「小林煎餅」、スイーツ「鮮芋仙」――これらは、いずれも上海の飲食街に軒を連ねる人気のある店舗。実は、超級鶏車を含めすべて台湾の企業が運営している。

 台湾の飲食企業が受ける理由は、まず何と言っても味。根は同じ東洋人ということもあると思うが、中国人に好まれる味を、見事に実現している。そして洗練されたインテリア、サービス、メニューの豊富さ、創作力などを特徴にしていることに加えて、それらをアピールするプレゼン能力にも長けている。これらが、現在中国において支持されている要因だと感じる。

 超級鶏車のキャラクターはヘルメットをかぶったチキン。中国でも人気が出てきているF1レースを意識してのキャラクター設定と思われる。同キャラクターを店舗のインテリアやメニュー、POPなどに全面的に展開。さらにはホームページでもF1レースの雰囲気を出し、子供にも親しみやすい印象を植え付けている。こういったプレゼン能力は、見習うものがある。

食事が重要、だから食の安全性にもシビア

 そして、もう一つ。中国人が食の安全性に非常に関心があることを理解して、それをビジネスに結びつけているのも台湾企業のうまいところ。店舗においてもホームページにおいても、台湾企業は安全な材料を使用していることをアピールしており、それが「台湾の食材や飲食店なら安心だ」という雰囲気を中国で生み出している。

 逆に言うと、中国の食材はかなり怪しい。古くはメラミン入り粉ミルク、ニセ玉子、農薬や殺虫剤検出、産地未記載、最近では有毒偽羊肉など。中国では食の安全に関する報道が毎日といっていいほどある。それだけ、中国人は食の安全問題について関心がある一方で、危ない食材も多くあるというわけだ。我々中国に住む外国人の想像以上に、中国人は食の安全性についてシビアに見ている。

 今年1月、中国の国営通信社である新華社が以下のように報じた。食品と薬品に関する法律違反を発見して通報した場合、通報者には北京市が最大で30万元(約425万円)を支払うという。中国では相次ぐ規制強化にもかかわらず、食の安全の問題が絶えないことに、業を煮やした処置である。

 同じ1月、中国でケンタッキーフライドチキンを運営する米ファストフード大手のヤム・ブランズが、中国の店舗で提供している鶏肉製品の安全問題の対応で謝罪を表明した。この問題は、ケンタッキーフライドチキンに鶏肉を納入する一部の業者が、成長促進のためにニワトリに抗生物質ホルモン剤を投与していたというもの。中国の国営テレビCCTV中国中央電視台)が昨年12月、報道したことで明るみになった。

 前回の当コラム『中国人が大行列する「日本の定食屋」』でも述べたように、中国人は食べることを大変重要視する。だから異常とも思えるほど食の安全に関して興味があり、そこに台湾企業が目を付けたわけだ。さらに、超級鶏車がうまいのは、先ほども述べたように注文を受けてから揚げる点。目の前で調理しているのが見られるので、素材が安全かどうかは分からないまでも、調理に問題がないことは確認できる。揚げる時間は5分程度だが、この一手間が消費者の安心につながってると言える。

 加えて、席を用意した超級鶏車の大型店では、店舗内が非常に清潔だ。まだ、オープンして間もないというのもあるが、清掃に関して教育が徹底されていることが見てとれる。安全で出来たての食べ物を清潔な店内でゆっくりと食べられる。この超級鶏車のコンセプトが、客を大きく増やしていることにつながっている。

 最近では、衛生面に気を使っている店が中国でも増えてきた。街中のフードコートでも頭巾と透明マスク、ビニール手袋を付けて給仕してくれる姿をよく見る。以前ではあまりなかった光景だ。こういった姿も、食の安全に気を配っているという点をアピールする意味で効果があると思われる。

食の安全は日本企業の得意技

 このように、超級鶏車の成功の裏には、食の安全という中国特有の問題がある。そして、台湾企業と同様に食の安全性で定評がある日本企業にも、同様に成功のチャンスがあると感じる。「日本は素晴らしい、食に関して安全で羨ましい。うちの子供は日本の粉ミルクで育ったから元気だ」と胸を張って自慢する親御さんがいるように、日本の食に関しては安全神話もあるほどだ。

 昨年末、中国に第1号店を出した高島屋の中に、台湾系企業がエコをうたったレストランをオープンした。館全体では決して客数が多くない高島屋の中で、多くの地元中国の客を集めて異彩を放っている。店の売りは「有機栽培野菜」で産地も明らかにしている。こういった手法は、日本企業が得意とするはずだ。食問題は急成長したからこそひずみとして発生してしまった問題である。こういった問題に対して、日本の長所をもってうまく向き合い、ブランドを成長させてほしい。


これが流行りのフライドチキン。機会があれば、是非食べてもらいたい

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130227/244268/

本文中のリンク先にあるコラムで取り上げられているお店も、他のところで見かけました。中山公園にも行ったのですが、通り過ぎるだけでしたので、そちらのお店には気づきませんでした。


その周辺では、その他にも日系の食べ物屋さんがいくつか目につきました。


この他、例えば吉野家などはあちこちで見かけますし、地元民人気も上々だと聞きます。

こうした食べ物屋さんが定着しつつあるとすれば、地元ニーズに密着して対応した、日台それぞれの国の企業努力のたまものでしょう。