「週刊ポスト」の養子・里親の記事

「ペットを捨てるように、子どもも捨てる気か!」と、クリップした記事の見出しを見て思わずカッとなってしまったのですが、これは怒って済むような問題でもないようです。

養子縁組支援の団体「貰っても返せるんでしょ」の問合わせも
2013.05.09 16:00

 10組に1組が不妊に悩んでいるという「大不妊時代」を迎えている今、養子を“我が子”として育てたいという家族も増えている。

 昨年、14件の特別養子縁組を成立させた民間団体『アクロスジャパン』代表の小川多鶴氏が語る。

不妊などの問題を抱え、新生児の子を養子にほしいという方が多い。一方で、養子に出す方も民間団体に頼ることが増えています。

 子供を産んでも育てられないという妊婦が児童相談所に相談しても『産んでから来てください』と対応されることも少なくない。それでは遅いと困り果てた方が民間団体を頼ってくるケースも、ここ2〜3年で急増しています」

 中には、民間団体なら簡単に養子が手に入るだろうと、「子供ってどうやったらもらえるのか?」と、軽い気持ちでかけてきたと思われる電話や、「もらっても返せるんでしょ」という問い合わせもあるという。

 しかし、当たり前だが養子縁組はいい加減な気持ちでできるものではない。一度特別養子縁組が成立すると、特別の事情がない限り離縁できないと民法で定められているからだ。

 そのため、民間団体もまた、認定書の取得か、それに準ずる要件を満たすことを求めるなど、一定の基準を設けており、中には、数か月間、毎日乳児院に通うよう求められるケースもある。また、費用についても、目安として100万〜200万円が必要になるという。

週刊ポスト2013年5月17日号

http://www.news-postseven.com/archives/20130509_186013.html

週刊ポストの関連記事をたどっていくと指摘されているように、里親制度と養子縁組制度という、似ているようで異なる二つの制度が混同されているという背景を見る必要があると思われます。

また、同じ「養子」という言葉で表現されている「普通養子」と「特別養子」との違いも、広く理解されているとは言い難いでしょう。私自身、はっきりとは認識していませんでした。

養子縁組あっせん―立法試案の解説と資料

養子縁組あっせん―立法試案の解説と資料

「里親制度」と「養子縁組制度」 法律上の違いを詳細に解説
2013.05.01 07:00

 都内で働く43歳のA子さんは、1歳半になる娘を保育園に送り迎えするのが日課だ。生後5日で“我が家”に迎えた娘は、今では迎えに来たA子さんを見つけると、よちよちと駆け寄ってくるまでに成長した。

「熱を出して病院に連れて行くことも度々ですが、子育ての大変さを知るたびに親になれた喜びも味わっています」(A子さん)

 不妊治療を3年続けた末に体調を壊し、妊娠をあきらめ、その後、養子縁組で娘を授かったというA子さん。ママ友たちと子育ての話題を交わすA子さん親子の姿は、実の親子と何ら変わらない。

 こうした育ての親のことを「里親」と呼ぶ場合があるが、実際には「里親制度」と「養子縁組制度」には、その性格に違いがある。

「里親制度」は何らかの事情で家庭での養育が困難になった子供たちを、育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子供を預かって養育する制度で、親権は生みの親に残ったままである。

 一方、養子縁組の場合には子の親権も育ての親に移譲され、戸籍の上でも子供の「親」となる。

 さらに、養子縁組の中にも2つの種類がある。「普通養子」の場合、年齢に制限はなく、役所への届け出だけで済むが、戸籍上は「養子」、「養女」と記される。普通養子には跡取りや相続に絡んだケースが多い。その最たる例が、夫が妻の親と養子縁組する「婿養子」。これは本来、婿を跡取りとするため、妻の家の嫡出子として推定相続人とするものだが、今日ではマスオさんのように嫁の一家に入って生活することと混同されている場合も多い。

 もう1つが、冒頭のA子さんのケースのように、実子として育てる「特別養子」だ。年間374件(2011年度)が成立しているという特別養子縁組の場合では、6歳未満の子を対象にし、戸籍上も「長男」、「長女」と記載される一方、家庭裁判所の審判が不可欠であったりと、普通養子以上に、親となる条件は厳しい。

 特別養子を希望する場合、自治体の児童相談所か、自治体に届けを出している民間の斡旋団体に相談することになる。児童相談所で養子縁組をする場合、厚労省の「里親委託ガイドライン」に準じて各都道府県が定めた要件を満たす必要がある。

 東京都では、25歳以上50歳未満の婚姻関係にある夫婦で、最低2室10畳以上の居室を有していることの他に、里親認定基準もクリアしなければならない。

「心身ともに健全であること」、「世帯の収入額が生活保護基準を原則上回っていること」などが挙げられ、過去に児童虐待や児童買春に係る行為で処罰されたことがないことも条件となる。

 これらの要件を満たし、「里親認定書」が発行され、特別養子縁組が可能となる。

週刊ポスト2013年5月17日号

http://www.news-postseven.com/archives/20130501_185713.html

そういう具体的なケースを身近で見聞きでもしない限り、こんな話を日頃から気にしている人はあまりいないと思います。ただ、気にしようがすまいが、これは世の中の現実の一つとして、実際に「ある」ことです。

何かが考えられ、議論され、決められるときに、たとえわずかであっても、こうした話が人々の脳裏をかすめ、考慮のうちに繰り込まれることを望みます。

例えば、沖縄大学のこの制度は、まさしくこの話に関わるものでした。

沖縄大学の授業料免除を維持し、支えるために

児童養護施設出身者の大学進学率はわずか10%という現実
2011.01.23 17:00

 全国に広がる「タイガーマスク運動」によって、クローズアップされる児童養護施設。それは、様々な事情で家族と暮らせない18才未満の子供たちが暮らす施設のことだが、18才を超えた子供たちは、どうするのだろうか。

 18才を超えると、子供たちは卒園し、施設を巣立っていく。大学には進学せず、社会に出て自立するケースがほとんどだという。「タイガーマスク運動」でランドセルのプレゼントを受けた東京・二葉学園の施設長で、全国児童養護施設協議会の制度政策部長・武藤素明さんはこういう。

「大半が就職します。中小企業やサービス業が多いです。大学に進学する子たちもいますが、全体の10%程度。全国の大学進学率は5割だから、やはり開きがあるんです。理由はやはり経済的保障がないこと。私立大学は授業料だけで年間100万円近くかかりますから」

 また、18才を待たずに施設を出る選択肢のひとつに、養子縁組がある。10才までの子供が入所している東京愛育苑向島学園の富田富士子園長の話。

「何年かにひとりのわずかな割合ですが、養護施設から養子縁組をして施設を出て行く子がいます。また、うちの施設では、里親に引き取ってもらう予定の子供が今年は1、2人います」

 多くの人が誤解しがちだが、「養子縁組」と「里親制度」とは違うものだ。養子縁組は子供を実子として引き取り、戸籍上の親子になること。一方、里親制度は養護施設同様、児童福祉法に定められた制度で、戸籍上は他人のまま、子供と「同居者」という立場になり。一定期間育てる制度のこと。養子縁組には家庭環境や収入などに厳しい審査があるが、里親になるための資格は、それに比べハードルが低い。

 このため養子縁組を認められなかった夫婦が里親になるケースが多いという。(手続きは児童相談所を窓口に行われる)。前出の武藤さんはいう。

「施設から里親の元に行く子供もいますし、里親との関係が不調になって施設に入所してくるという子供もいます。でも一般的に里親さんには施設より家庭で預かるほうがよいという考えがあって、施設の職員と意思疎通ができにくい現実があります。これからは、里親さんと施設との連携と交流が必要になってくると思います」

※女性セブン2011年2月3日号

http://www.news-postseven.com/archives/20110123_10779.html

児童相談所で保護される子供は3万8000人 里親になる方法
2010.09.29 06:23

 保護者が育児放棄をしたり、病気や貧困などで育児が困難だったり、虐待などで育てる四角がないなどを理由に、児童相談所や民間団体が保護している0−18才の子供(要保護児童)は全国で約3万8000人いる。

 里親制度は、そんな子供たちを、実の親に代わって育てる制度のことだ。養子縁組とは違い、里親は法律上「親」となるわけではなく、住民票上の続柄は「縁故者」として記される。

 つまり、里親として子供を育てる場合、親権は実親に残ったままで、里親はあくまで子供を一時的に預かる「同居者」という立場となる。

「養子縁組は戸籍上も親子関係を結び、一生親子関係を続ける制度。一方の里親制度は戸籍上は他人で“一時的”に子供を預かる制度のため、審査基準などに違いがあります」(里親制度を担当している東京都育成支援課)

 東京都児童相談センターの担当者はいう。

「里親を希望するかたの半数は、実の子供がいないけれど、養子縁組は認められず、それでも子供を育てたいというかたです。残りの半数は、実の子供もいるけれど、社会貢献のために子供を預かりたいというかたです」

 実際、里親を希望する場合は、各地方自治体の児童相談所か民間のあっせん団体に申し出る。

 諸条件は各自治体で異なるが、東京都の児童相談所の場合は、里親を希望する人は必ずしも夫婦である必要はなく、「25才以上65才未満」が条件となっている。その他に、収入、自宅の床面積や間取りなどの条件を満たすと、児童相談所に預かりたい子供の性別や年齢を伝えたうえで、里親になるための4日間の研修を受け、家庭調査が行われる。

 調査内容を都の認定部会が審査したうえで里親として認定されれば、子供を預かることができる。その後は2年ごとに預かり期間が見直されていく。

 東京都児童相談所では昨年度は里親を希望する105件の申請があったうち、102件が成立している。それでも里親を必要とする子供のうち、成立しているのはごく一部。全国で児童相談所などが保護している子供は約3万8000人いるのに対して約3900人の子供しか里親に預けられていない。

「子供に恵まれない夫婦の多くは、子供を預かるのではなく、“わが子として小さいころから育てたい”という希望を持っています。そのため里親ではなく養子縁組を望むケースが多いのです。また、一度預かっても“やっぱり難しい”と話が破談になることも少なくないのです」(前出・東京都児童相談所

※女性セブン2010年9月30日・10月7日号

http://www.news-postseven.com/archives/20130509_186013.html


韓国社会に関心を持っていれば、いつかどこかで「養子」の問題にぶつかることになりますが、多少事情は異なるとはいえ、それは日本でもやはり問題であるわけです。

赤ちゃんの値段

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