勤務時間の長さ、課外活動や事務作業の負担、自己評価の低さなど、「そらーそうでしょ」と思わせる調査結果ですね。
現在の大阪は論外としても、日本の教員が置かれている状況の厳しさは以前よりもさらに深刻なものになっていることは間違いないと思われます。こんな教育環境をよくしたければ、教員の負担軽減と待遇改善*1はまず避けては通れないはずです。こんなの、当たり前のことだと思うんですけど、どうもここのところ、その逆を行くような話しか聞こえてきません。
日本の先生 一番忙しい OECD中学校調査
2014年6月26日 朝刊経済協力開発機構(OECD)は二十五日、世界各国の中学校の教員を対象に実施した学校での指導状況や勤務環境に関する調査結果を公表した。日本の教員の一週間当たりの勤務時間は、調査に参加した三十四カ国・地域の教員の平均三八・三時間を大幅に上回る五三・九時間でトップだった。日本の教員の多忙さが、国際的な調査で初めて確認された。
調査は二〇一二〜一三年に行われ、〇八年に続き二回目。日本は今回が初参加で、昨年二〜三月、中学と中高一貫校百九十二校の校長と教員約三千七百人が回答した。
勤務時間の調査で特徴的だったのは、授業以外の課外活動に使った時間の比較。参加国平均の週二・一時間に対し、日本の教員は部活動も担当しているため、週七・七時間と突出していた。生徒指導と直接関係のない書類作成など事務作業に費やした時間も、日本は週五・五時間で平均の週二・九時間を上回った。
逆に授業の時間は、日本の教員が短い。参加国平均が週一九・三時間に対し、日本は週一七・七時間。授業の計画や準備に充てた時間は、日本は週八・七時間で、参加国平均の週七・一時間とほぼ同じだった。
調査では、担当教科の知識や指導法など、教員自身の技能を磨くための研修参加を妨げる要因も聞いた。日本の教員の86・4%は「自分の仕事とのスケジュールが合わないため」と回答し、参加国平均の50・6%を大幅に上回った。
日本の教員は、指導に関する自己評価の低さも目立った。「生徒に勉強ができると自信を持たせることができる」と答えた教員は、参加国平均の85・8%に対し、日本は17・6%。「勉強にあまり関心を示さない生徒に動機づけをすることができる」と答えた教員も日本は21・9%で、参加国平均の70%と開きがあった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014062602000159.html
この状況を改善する手は一つではありえないのですが、とりあえず「何が国民性じゃボケ!」とは言いたいです。
日本の先生、世界一多忙なのに指導には胸張れない
高浜行人、芳垣文子、岡田昇 2014年6月26日05時40分
経済協力開発機構(OECD)は25日、中学校教員の勤務環境などの国際調査結果を発表した。日本の教員は指導への自信が参加国・地域の中で最も低く、勤務時間は最も長かった。理解が遅い子に合わせた指導をする割合やICT(情報通信技術)を利用する割合は低い。多忙な中、指導に集中できずにいる教員のすがたが浮かび上がる。
校長「仕事に満足」最低
2013年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)で、主に先進国の34カ国・地域が参加。08年に続き2回目で、初参加の日本では、全国から抽出した国公私立中学校192校の教員3484人と校長から回答を得た。
学級運営や教科指導などについて、指導がどの程度できているか、自信の度合いを4択で尋ねた。「非常に良くできている」「かなりできている」の割合の合計を比べると、12項目すべてで参加国・地域中、最低だった。「勉強にあまり関心を示さない生徒に動機付けする」では21・9%で、平均の70・0%の3分の1以下。「生徒の批判的思考を促す」は15・6%(平均80・3%)、「生徒に自信を持たせる」も17・6%(同85・8%)だった。
残る選択肢のうち「ある程度できている」を選ぶケースが多かった。
教室での指導をどれくらいやっているかも4択で聞いた。「課題や学級活動にICTを用いる」に「しばしば」「ほとんどいつも」やっていると答えた割合は計9・9%(同37・5%)、「全生徒が理解するまで類似問題を練習」も計31・9%(同67・3%)でともに最低だった。
一方、1週間の勤務時間は53・9時間(平均38・3時間)で最長。内訳をみると、部活などの課外指導が7・7時間(同2・1時間)、一般事務が5・5時間(同2・9時間)と飛び抜けて長かった。授業は17・7時間で平均(19・3時間)を下回った。
研修の必要性についても14項目を4択で質問。「高い」と答えた割合が参加国・地域で最高だったのは「担当教科の知識」(51・0%)、「個に応じた学習」(40・2%)など6項目に上った。だが過去1年以内に研修を受けた割合は83・2%で平均の88・4%を下回った。受けられない理由は「仕事のスケジュールと合わない」が最多(86・4%)だった。
文部科学省の担当者は「控えめな国民性もあるが、多忙で授業準備に時間が取れていないという意識や研修に出られないことが(自信の低さに)影響しているかもしれない」と指摘し、事務職員らの配置を進めることなどを対策にあげた。
■朝練、授業、生徒会・提出物点検…学校に15時間半
千葉県郊外のニュータウン。空気に冷たさが残る午前6時40分、女性教諭(40)の運転する車が勤務先の公立中に着いた。
私立高に勤めた後、公立中教員になって7年目。教科は国語、2年生の担任を持ち、男子ソフトテニス部の顧問だ。7時20分からの朝練に備え、ほぼ毎朝、この時間に出勤する。約30人の部員に目を配っていると、腹痛で練習を休む生徒の保護者から携帯に電話がかかってきた。
8時15分に担任のクラスで朝の会。体調が悪く教室に入るのをためらっていた女子生徒が、廊下にうずくまった。肩をポンポンとたたきながら声をかけ、保健室に連れていった。
1、2時間目は授業。定期テストの答案を返して平均点や課題を説く。休み時間も採点について尋ねてくる生徒とやりとりが続く。
授業がない3、4時間目、職員室で提出物の点検に取りかかった。毎日提出させる生活ノートや家庭学習帳、定期テスト期間中の学習計画表。いずれもクラスの約30人分ある。生活ノートには赤ペンで必ず一言コメントを書き込む。合間には保健室をのぞいて女子生徒に声をかける。
給食の時間。「たくさん残ってるよ」と声をかけながら鍋を持って生徒の机を回り、ニョッキのトマト煮のお代わりをよそう。やっといすに座ると、給食終了時刻まで7〜8分。揚げパンとおかずをかき込んだ。
5、6時間目の授業後、この日は生徒会の委員会活動があった。教諭は生活委員会の担当。服装やあいさつなどの課題や反省点を出し合う話し合いに時折、アドバイスする。終わると部活のためテニスコートへ。最終下校時刻の午後6時15分まで練習を見守った。
職員室に戻って間もない午後7時近く。長期欠席で日中は来られない受け持ちの女子生徒が、母親に付き添われて登校してきた。他の生徒が帰った後、登校できる日は来る。教室でテストを返したりしながら30分ほど過ごした。
午後9時を回った職員室。提出物の点検はまだ終わらない。23人の教員中7人が残っている。「帰りたいけど、終わらない」とつぶやく別の女性教員、「おれ仕事が立て込んで学校に泊まったことありますよ」と話す男性教員。教諭は買い置きのチョコクッキーを取り出して他の教員にも配ると、自分も二つ口にした。「早く帰ってくださいよ」と言いながら教頭が引き揚げたのはこのあとだ。
結局この日教諭が学校を後にしたのは午後10時を過ぎていた。
土日は部活の大会や練習があり、6月に学校に出なかったのは上旬の日曜1回だけという。定期テスト前後は問題作りや採点で夜9時、10時までかかり、日曜もつぶれる。
長時間にわたる勤務は、「教員の数が増えないことには解決しないのではないか」と言う。教材研究の時間などがもう少しあればとも思うが、今の学校は風通しがよく、働きやすい。「自分の指導でどれだけ学ぶ力が引き出せているか自信はないが、生徒の役に立つ指導は心がけているつもりです」。淡々と語った。
■「世間の厳しい目が影響」識者指摘
世界一多忙だが、自分の指導に胸を張れず、評価が低いと感じている日本の教員。その背景について、25日に東京都内で会見したOECDのアンドレア・シュライヒャー教育局長は「教員に対する社会的な要求の高さ」を挙げた。
「教職は社会的に高く評価されていると思う」と答えた割合で、日本は参加国平均(30・9%)を下回る28・1%だった。
シュライヒャー局長は、OECDが2012年に行った国際的な学力調査「PISA」の成績が良い国ではこの割合も高いという相関関係があるのに、日本には当てはまらなかった、と指摘。その上で「有能な教員を給与やキャリアで優遇することが、社会的地位や魅力を高めることにつながる」と提案した。
陣内(じんのうち)靖彦・東京学芸大名誉教授(教育社会学)は「謙虚で控えめな国民性が影響している」としつつ、「教員に対する世間の目が厳しくなり、教員は自信をなくし、社会的な役割が見えなくなっているのではないか」とみる。
多忙さの原因になっていたのは、授業準備など子どもの指導に関わるものよりも、部活や事務作業だった。陣内名誉教授は「特に中学校教員の場合、高校受験が控えており、個人的な要求に応えなくてはという思いが強くなる。生徒に集中できるように分業体制を整えるなど、教員の負担軽減を図るべきだ」と指摘した。(高浜行人、芳垣文子、岡田昇)
*1:必要なのは、下の朝日の記事に見えるような「一部の優遇」ではなく「全体の底上げ」だと考えています。