朝鮮日報の韓国サッカー連載記事

以前に連載の第1回の翻訳記事があがっていたのですが、その後、全てではありませんが主要な記事が翻訳されています。

危機に陥るKリーグ、そして韓国サッカー

この連載記事の力点は、指導者の問題・組織の問題・環境の問題に置かれています。そうした点に韓国サッカーの弱点があるのは明らかなので、そこを見据えての改革が進めば、ブラジルでの敗退の経験も中長期的な立ち直りの機会となるかもしれません。

記事入力 : 2014/08/12 07:01
Kリーグ:結果重視が招く「注入式」「画一的」サッカー

サッカーの「知能」を高めよう
W杯、韓国は画一的なサッカーで大敗
相手にこちらのパターンを把握されるとお手上げ
注入式選手指導と結果ばかりを重視する学校でのサッカー指導が原因
やらせるばかりの受動的な練習、年齢に応じた練習もなし

 ドイツの優勝で幕を下ろした2014年サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会を通じ、韓国ではサッカー界の戦略・戦術のなさがあらためて浮き彫りになった。3位決定戦でブラジルを破ったオランダのルイス・ファン・ハール監督は、これまで弱小チームが守備を強化するため主に採用してきた3バックシステムで3位の好成績を収めた。アルジェリアは韓国とのグループステージ第2戦で、初戦のベルギー戦の先発メンバーから5人を入れ替える果敢な選手起用をしながらも、韓国に4−2で圧勝した。

 これに対して韓国サッカーのスタイルは画一的だった。相手に関係なく、韓国は常に4−2−3−1のフォーメーションで試合に臨み、このパターンが相手に把握された後も、選手たちはピッチで何ら対応ができなかった。2002年の韓日大会で韓国代表を率いたヒディンク監督は「サッカーには300通り以上の戦術がある。選手たちにはそれらを理解できる頭脳がなければならない」と語ったことがある。専門家は韓国選手について「ありとあらゆる状況に対応できるサッカーの知能指数、いわゆる『フットボール・クオティエント(FQ:Football Quotient)』が足りない」と指摘する。

■FQの高い孫興民、学校でサッカー部に所属せず

 今回のW杯に出場した韓国選手のうち、その創造性が最も目に付いたのは孫興民(ソン・フンミン、21)=レバークーゼン=だった。アルジェリア戦で孫興民は、周囲に相手DFが何人もいる中で味方からのパスを背中で受け、一度外にドリブルするようにフェイントし、一瞬で体の向きを変えて相手GKの股の間を抜くシュートを放った。これはサッカーの定石とはいえない動きだが、孫興民は創造性を存分に発揮して得点を決めたのだ。

 このようにFQの高いプレーができる孫興民は、小学校と中学校でサッカー部に所属していなかったことでも有名だ。孫興民は7歳のときから中学2年生までの7年間、韓国代表経験のある父のソン・ウンジョンさん(52)からパスやドリブルなど基本技の指導を受けていた。

 ソン・ウンジョンさんの指導哲学は「年齢ごとに習得すべき基本技は異なる」というものだ。ソン・ウンジョンさんは「小学校3−4年生の児童がシュートやロングキックばかり練習すると、筋肉への負担が大きい」と考えた。そのためパスのやり方やボールをキープして体の向きを変える動きなどを、この時期の孫興民に集中して教えた。また幼いときは試合の勝敗にはあまりこだわらず、基本的な技能を着実に習得させることに力を入れた。この結果、孫興民は自然とサッカー感覚を身に付けていった。

■「ユースサッカーで結果を重視するとFQを育成できない」

 世宗大学のイ・ヨンス教授(KBSサッカー解説員)は、小学校や中学校時代にサッカー部に所属するとFQが低くなる原因について「よく『注入式』などといわれる韓国教育の問題点がサッカーにもそのまま表れている」と指摘する。イ教授は「韓国の学校のサッカー部は、今も1人の監督が30−40人の選手を一方的に指導する形が主流だ」「選手たちはサッカーについて考える時間を持つことができず、言われるままの受動的な練習ばかりやっている」と指摘する。

 孫興民のケースから分かるように、サッカーは年齢に見合った指導が非常に重要だ。今大会「黄金世代」といわれる選手たちの活躍で好成績を収めたベルギーでは、2000年に自国で開催された欧州選手権(ユーロ2000、オランダと共催)でグループステージで敗退したことをきっかけに、長期的な視野でのユース指導に取り組んだ。その結果、今回のW杯ではベスト8進出という好成績を収めることができた。

 ベルギーでのユース指導の最も大きな変化は「7歳以下の子どもたちには2対2、9歳以下は5対5、11歳以下は8対8の試合しかやらせない」という新たな仕組みの導入だった。選手の一人一人がボールに触れる時間と回数を増やし、これによって選手の創造性を育てるとともに、試合の形式を年齢に合わせて変更することで体力を高め、戦術への理解力を高めようとしているのだ。

 韓国国内でも最近は基本技の指導を強調する若い指導者が増え始めている。しかし彼らは「現実」という高い壁にぶち当たっている。すぐに結果を出さなければコーチを続けることができない仕組みがそれだ。

 結果にこだわるユース世代のシステムでは、試合で勝ち続けなければコーチを務める学校の職員として居続けることができず、また保護者からも有能なコーチとして認められない。イ・ヨンス教授は「年齢ごとに取り組むべき練習は異なるはずだが、勝ち負けにこだわるコーチたちは目の前の大会で結果を出すために、幼い選手たちに持久力中心の練習ばかりやらせている。その結果、必要な時期に敏しょう性や柔軟性、スピードなどを育てることができなくなっている」「さらに致命的なことは、サッカーについて深く考える時期を逃してしまうことだ」と指摘する。

 大韓サッカー協会の役割も重要だ。世界のサッカーは急速に発展しているが、指導者たちがこれについていくのは簡単なことではない。指導者が選手たちの創造性を育て、戦術への理解を高めさせるには、サッカー協会の次元で海外の事例を分析し、これを現場のコーチに紹介するなど、指導のための情報や資料を常に提供し続けねばならない。

チャン・ミンソク記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/08/12/2014081200467.html

記事入力 : 2014/08/13 07:00
Kリーグ:「名選手が名監督になるとは限らない」

中学・高校で監督のキャリア積むべき
韓国では元スター選手ならプロ監督OK、キャリア短く戦術より勘頼り
成績悪ければ即「クビ」
サッカー先進国はユース・下部リーグでの実績を重視
名将モウリーニョ、プロ経験なし

 今回のサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会はスーパースターよりも組織力とチーム戦術に優れたスーパーチームの時代が到来したことをはっきりと示した。

 世界最高のサッカー選手リオネル・メッシ率いるアルゼンチンも、選手たちの体力・スピード・個人技をチーム戦術として最大限に生かしたドイツにトロフィーを譲らざるを得なかった。

 ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督は2年間の代表コーチ生活を経て2006年に代表監督に就任、8年間にわたり選手たちを指導してドイツ・サッカーの伝統的な長所である組織力と体力、そして相手に応じて柔軟な戦術を駆使できる能力を備えたチームに変ぼうさせた。

 一方の韓国といえば、単調な戦術しかなく1勝も挙げられなかった。KBS N解説者のハン・ジュンヒ氏は「今回のW杯で好成績を挙げたチームは、選手が有名で年俸の高いチームではなく、戦術の理解度や状況に対処できる能力に優れたチームだった。今後、こうした傾向は続くだろう」と語った。

■「兄貴タイプ」ばかりの韓国サッカー

 Kリーグ監督の指導力を説明するのに最近よく使われているのが「兄貴タイプのリーダーシップ」という言葉だ。親しみやすさをベースに好成績を出そうというもので、ユニークなチームカラーや絶妙な選手起用で話題になることは「まれ」だ。

 最近の韓国サッカーが世界のサッカーの流れに逆行している最大の原因は、Kリーグの採用システムにある。各チームのコーチングスタッフはほとんどが指導者歴の短い元スター選手ばかりだ。指導者資格はコーチになってから合間を見て取る。こうしたシステム自体が監督・コーチの勉強時間や研究時間を少なくし、選手時代の「勘」や「感覚」を頼りにせざるを得なくなっている。

 こうしたことに加え、チーム側の成績に対する焦りが指導者のキャリアをすぐに断たせてしまう状況をあおっている。チームをまとめ、率いることができるようになる時間を十分に与えず、一度失敗して辞めた指導者には二度とチャンスを与えないと言っていい。

 2012年末には、Kリーグ16チームの監督のうち10人が辞めるという大量解雇が発生した。韓国代表チームも同様だった。1990年以降、韓国代表監督の平均在任期間は約1年にすぎない。最も長くチームを率いたのは在任2年6カ月の許丁茂ホ・ジョンム)氏=07年12月−10年7月=だ。同じく1990年以降で見ると、ドイツ代表監督の平均在任期間は4.16年だ。

■「中高のチームで指導を」

 堅い守備態勢「カテナチオ」でサッカー戦術史に新たなページを書き加えたイタリアでは、指導者もユースや下部リーグのチームで多くの経験を積む。こうした経験があってこそ、プロサッカーのセリエA(1部リーグ)の監督に名乗りを上げることができるのだ。ゾーン・プレスを編み出したといわれるアリゴ・サッキ氏(68)がその代表だ。故郷のアマチュアチームで監督を初めて経験したサッキ氏だが、最初のチームではベテラン選手との確執から1年で辞任した。その後、昼夜勉強・研究に励み、フィオレンティーナのユースチーム、当時3部リーグにいたパルマなどを経て名門ACミランの監督に就任、そしてついにイタリア代表監督にまでなった。

 監督になるのに選手時代の名声はそれほど役に立たない。プロ選手としての経験が100試合もないアーセナルアーセン・ベンゲル監督(65)は、広いサッカー知識と優れた洞察力で「教授(The professor)」と呼ばれ、欧州サッカー界で最高の名将になった。

 チェルシージョゼ・モウリーニョ監督は一度もプロ選手としてプレーしたことがない。かつて体育教諭だった同監督はプロのチームで監督の通訳を務めるかたわら指導者としての勉強をした。

 世宗大学のイ・ヨンス教授は「韓国の指導者たちもいきなりKリーグ・クラシック(1部リーグ)のチームを引き受けるのではなく、中学や高校のチームでキャリアをスタートさせる必要がある。そうした経験を積まなければ、選手の才能を発見する目や、状況に合わせて戦術を駆使する能力が身につかない」と話している。

スポーツ部=孫章薫(ソン・ジャンフン)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/08/13/2014081300448.html

これに関連して、連載記事ではありませんが、ワールドカップ競技場の現況について書かれた記事も朝鮮日報日本語版は訳しています。

記事入力 : 2014/08/13 10:10
韓国のW杯スタジアム、10カ所中5カ所が赤字

事後活用案なく建設急いだツケ
大邱は累積赤字397億ウォン

 2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)韓日共催大会のために新築された大邱スタジアムは今、大邱市民から「カネを食うカバ(カネ食い虫)」と呼ばれている。

 完成1年目の2002年から昨年まで、年平均で33億ウォン(3億3000万円)、合計397億ウォン(約39億円)の赤字を市民の血税で穴埋めしているからだ。同スタジアムを本拠地とするKリーグ大邱FCの入場料・貸与料収入など昨年の総収入は4億ウォン(約4000万円)に過ぎなかった。その一方でスタジアムの改修・補修費や人件費といった支出は40億ウォン(約4億円)かかった。

 大幅な赤字になっているのは、大邱スタジアム大邱市の規模や財政に比べ過度に大きく作られているためだ。同スタジアムは韓日共催W杯が開催された20スタジアム中、客席数(最大6万6422人収容)が3番目に多い。だが、同スタジアムを本拠地としている大邱FCは、昨年2部リーグのKリーグ・チャレンジに降格しており、今年の平均観客数は1085人(10試合)にとどまっている。

 ロケーションを見ても大邱市郊外にあり、アクセスが悪い。最寄りの地下鉄駅「大公園駅」は約1.7キロメートル離れており、降りてから20分以上歩くか、または3路線しかないバスに乗って行かなければならない。2011年に民間資本を誘致してスタジアムの隣に建てられた複合文化ショッピング施設「大邱スタジアムモール」はスタジアムを活性化させるものと期待されたが、今年7月現在で全171店舗のうち70店舗分の分譲スペースが売れ残っており、売れ残り率は40.9%に達する。

 ほかのW杯スタジアムも状況は大差ない。韓国は韓日共催W杯を前に総事業費1兆8490億ウォン(約1840億円)をかけて全国10都市にサッカー・スタジアムを建設した。このうち半数の5カ所が赤字(2012年現在)を出している。仁川文鶴スタジアムは昨年まで290億ウォン(約29億円)近い累積赤字を記録、済州W杯スタジアムも最近3年間で赤字が23億ウォン(約2億3000万円)に達する。文化体育観光部(省に相当)の資料によれば、建設費・減価償却費まで考慮に入れると黒字を出しているのは現在、ソウルW杯スタジアムだけだ。

 ソウルW杯スタジアムはソウル市とソウル施設管理公団がW杯前から綿密な事後活用方案を立ててきた。同スタジアムのスタンド下のスペースは収益施設として運営できるよう設計され、事後活用案により競争力のある賃貸業を選定した。W杯終了後は選定された業種を中心に商業施設などが入り、12年間にわたり黒字(02−13年・年平均92億ウォン=約9億2000万円)を出している。

オ・ユギョ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/08/13/2014081301080.html

大邱はまあ、韓国内では最悪の事例なのですが、地下鉄駅から1.7キロということであれば、立地そのものはそう極端に悪いわけではないんですよね*1

ただ、ここを本拠とするのはもともと市民球団である大邱FC。スター選手を輩出してきたわけでもなく、Kリーグの中下位が定位置だったチームをそのままテコ入れせずにいれば、いくら韓国第3の大都市であっても、6万人以上という巨大スタジアムは明らかに過大です。実際問題、2部制への移行にともなってKリーグチャレンジに降格してしまった大邱FCは、そこでも現在のところ10チーム中6位、トップリーグを経験している4チーム(大田・江原・光州・大邱)の中では最下位です。

대구, 전국체전 그리고 시민구단의 입장 - 미디어스

世界陸上みたいなイベントがそうそうあるわけでもありませんしねえ。

ソウルは別格として、ワールドカップ競技場を抱えていない浦項や城南・慶南・全南・尚州を除いた地方都市は、ソウルに比べればイベントも少ないでしょうし、どこも厳しいでしょうね*2


まあ、それにつけても、ジニちゃんはやっぱり美人なわけで。

루이까또즈 공식 블로그 LOUISien - [기상캐스터」진정한 방송인을 꿈꾸는 그녀 ‘이진희’를 만나다





*1:大公園駅からシャトルバスくらい出せばいいのに…。

*2:ただし、ワールドカップ競技場のすべてを知っているわけではありませんが、例えば済州なんかはスタジアムの規模はほどほどに抑えつつ、西帰浦市の郊外でありながらもメイン道路に面してバスターミナルやE-Martに隣接していて、スタジアム内のテナントもそこそこ入っていたように思います。済州ユナイテッドKリーグクラシックで上位に食い込むチームになっていますし、(赤字は赤字でしょうが)地元としてそこまでひどいことになっているとは思いません。仁川ユナイテッドは文鶴競技場とは別にサッカー専用競技場を本拠地にしましたし、水原はやはり人気チームの水原三星を抱えていることが大きい。他方、下手をすれば大邱以上に厳しいと思われる光州の運営収支が異常にいいのが目立ちます。そんなに黒字の出せる環境だったとは思えないのですが…。