好きなものを好きと言って何が悪い?

政治や政治学に何か期待するとしたら、この問いを問いから反語に換えることです。

いや、そんな主導的なことは期待できませんね。「せめて邪魔にならんようにしてろ」ってくらいがせいぜいですか。

 「愛」とは崇高で甘美な観念だが、それが政治の世界に持ち込まれると、死臭の漂うものに転化してしまう。政治とは、常に強制力を伴うものであり、強制された合意が合意でないように、強制された愛も愛ではない。ナショナリストは愛と政治を結合させることで、当人が望もうが、望むまいが、愛も政治も裏切ってしまうことを知るべきである。「愛国心はならず者の最後の逃げ場」という言葉があるが、愛国心が悪いのではない。ならず者が愛国心を悪用するのである。彼らは憎しみを愛という美名で包み隠し、生を空約束して死を要求する。

http://fs1.law.keio.ac.jp/~hagiwara/lawsemi11.html

北原さんが書いてはいますけど、こちらは単なるフェミニズムの範疇を超えたところに触れた文章だと思います。

北原みのり 愛と平和の東方神起
(更新 2015/6/25 11:30)

 作家の北原みのり氏は、東方神起のコンサートに出かけたという。

*  *  *

 先日、バンコクで行われた東方神起のコンサートに行った。1万人以上の観客には中国、韓国、シンガポールや日本からのファンも少なくなかったが、8割以上は若いタイ人女性だ。驚いたのは、彼女たちの多くが、東方神起と共に韓国語で歌を歌っていたこと。

 改めてK−POPの力を思う。日韓関係の難しさが大きく取り上げられているけれど、こんな風に女たちが国境を超えて韓国語の歌でつながって、好きな男を前にくらくらしている現実を目の当たりにすると、別世界を生きているような錯覚をする。ここは平和。絶対に失いたくない、平和。

 いま、日本の東方神起ファンは、恐らく、世界に類を見ない「混乱」の中にいるようにみえる。

 例えば、「東方神起はJ−POPなのだから、J−POPとして応援しましょう!」と敢えて言いたがる人が少なくない。東方神起は日本では日本語で歌い、日本語で話してくれる。だから彼らは韓流ではなく倭流なの、という言い分だ。そんなファンの中には、東方神起への熱い想いを語ると同時に、韓国社会や文化への嫌悪や侮蔑を平気で口にしてしまう人もいる。

 また、東方神起のファンであることを絶対に他言しないファンも、増えている。ライブ会場に行くと、こんな会話が、あちこちから聞こえてくるのが当たり前になってきた。「会社に何て言った?」「親戚に死んでもらって」というのは普通で、「EXILEのライブに行ってることにしてる」などと目くらまし的に日本のスターを利用する人もいる始末。夫にすら内緒でコンサートに通う妻も珍しくない。

 それもこれも韓流が好きだと言うと、面倒くさいことになるからだ。「今の政治状況をどう思うの?」と夫に嫌みを言われたり「韓国アイドル好きだなんて、終わってる」と同僚にバカにされたりと、韓流が好きと言って良いことなどない、というのが、ここ数年で韓流女たちにたたき込まれた現実だ。

 遠くにいるスターを好きでいるために、近くの男たちの顔色をうかがう私たち。「韓国人が好きなわけじゃないんです! っていうか、彼らは韓国の歌手じゃないし!」と意味不明な方向でアピールしたり、または日本人アイドルのファンだと嘘をついたりと……。たかがアイドルのファンでいるために、こんな大変な思いをするなんて、どうかしてるでしょ。

 コンサート会場からバンコク市内まではタクシーで移動した。運転手は60代の女性で、東方神起の写真を見せると「かっこいいね」となかば呆れながら笑ってくれた。40年間銀行で働き、今は90代の父親と二人暮らしだという。働き続けた人生だ。彼女が20代だった時代、誰がこの国で、アジアの女たちが集まり韓国語の歌をのびやかに歌う日が来ることを想像しただろう?

 世界は思いがけない方向に、自由に変化し、留まることなく動いていく。キムチより辛いグリーンカレーを食べながら、この平和を手放したくないと思う。

週刊朝日 2015年7月3日号

http://dot.asahi.com/wa/2015062400096.html

まあでもですね。北原さんは男性K-Popしか興味がなさげですからご存知ないかもしれませんけど、試しにちらっとでいいですから、KARASIAを一度観てみてほしいものです。バンコクなんかに行かなくても、この日本で、日本語の歌と韓国語の歌とを区別なく、老若男女が共にしていますから。


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ま、そういうことです。では、千里セルシーに行ってくるとします。


反日」という言葉では見えないものがある

実際に今、「日本ブーム」は起きているのだろうか。新潟県立大学大学院の国際地域学研究科教授で、『韓国化する日本、日本化する韓国』(講談社)を上梓した浅羽祐樹さんは、「今に始まった話でなく、ここ10年くらい常に日本のコンテンツはブームになっています」と話す。

ベストセラー20位のうち5冊ほどは必ず日本の書籍がランクイン、ビールもラーメンも日常生活の中に浸透しているという。ビジネス書も、日本でベストセラーになったものはすぐに翻訳出版されるそうだ。

ブームを支えているのは「それはそれ、これはこれ」という是々非々の精神だ。「確かに韓国政府はそうした峻別ができていない時もありますが、国民レベルでは違います」とし、「ある国家間に政治的な対立があるということと、両国民がお互いの国のコンテンツを受け入れることは、何の矛盾もなく両立し得ます」と分析した。是々非々の精神は貿易に強く依存する韓国経済の現状を反映したもので、世界市場や第3者の動きを意識するため、自然そうした態度が養われるのだという。

そして、「『反日』という言葉で何もかもを一緒くたにしてしまいがちな日本人と違い、韓国人はずっと冷静に見ています」と指摘した。

こうしたコンテンツの人気にからめ、浅羽さんは、日本と韓国は協力しあえるはずだとも話す。「少子高齢化など両国に共通する問題は多いです。足りないところを貶しあうよりは、お互い協力して問題解決の道を探った方が良い」としている。

http://www.j-cast.com/2015/06/26238834.html?p=2