国立大授業料、2031年93万円に 「致死量ギリギリ」

…それはまあ、空目でしたけど、そんなに外れてもいませんね。

先日この話題を記事にしたのは「赤旗」でした(こちら参照)。今度は一般紙にも出るようになりましたか。

国立大授業料、54万円が93万円に 2031年度試算
高浜行人 2015年12月2日09時08分


大学授業料の推移

 文部科学省は1日、年間約54万円の国立大学授業料について、2031年度には93万円程度に上がるという試算を示した。大学の収入の核となる国の運営費交付金が大幅に減らされる可能性があり、大学が減らなければ、授業料で減収分を賄う必要性があるという。

 財務省は、全86国立大学の収入の3〜4割を占める運営費交付金約1兆1千億円を31年度までに約9800億円にする方針だ。この日の衆議院文部科学委員会の閉会中審査で、畑野君枝委員(共産)が、減収となった際の対応を尋ねた。

 文科省の常盤豊・高等教育局長は「授業料で賄うとして試算すると(31年度には)約93万円。年間2万5千円の値上げが必要」と答えた。馳浩文科相は「学生になるべく教育費負担をかけないようにする必要がある」として、来年度予算で交付金の額を充実する考えを示した。

 財務省は10月、「財政制度等審議会」(財務相の諮問機関)に、31年度まで交付金を毎年1%ずつ削減することを提案。減収分の確保策として、大学の自己収入約7370億円(13年度)を年1・6%ずつ増やすために授業料引き上げを例示した。少子化で国立大の志願者が減っており、倍率は04年度の4・7倍から今年度は4・0倍に下がった。今後、質の低下が心配されるため、交付金を絞って国立大はどのくらいが適正規模なのか、再考につなげたい考えだ。

 反発する文科省は、11月に公表した資料で交付金が過去12年間で12%減らされたことを強調。すでに教員の年俸制導入などの改革を進めていることや若手教員の常勤雇用が減っている現状を訴えた。

 法科大学院を除く国立大の授業料(標準額)は、省令で年53万5800円と定められている。大学は1・2倍の約64万円を上限に自由に設定できるが、ほとんどが標準額と同額だ。

 文科省によると、国立大の授業料は、40年前は3万6千円。1984年度に25万円を超えた後は、ほぼ2年おきに値上げ。03年度に約52万円となり、05年度から現在の標準額になった。私立大の平均は13年度で約86万円。(高浜行人)

http://digital.asahi.com/articles/ASHD15H4PHD1UTIL03D.html

山形大:授業料増か教員減に 交付金削減案で試算 /山形
毎日新聞 2015年12月02日 地方版

 財務省の諮問機関、財政制度等審議会が先月24日にまとめた2016年度予算編成に向けた建議(意見書)で、国立大学法人への運営費交付金の削減を求めたことを受け、山形大は1日、影響額の独自試算を公表した。2031年までに年間の授業料を約30万円増の約80万円に引き上げるか、教員を約27%減らす必要があるとした。

 同大によると、建議では減額する数値に触れなかったが、10月26日開催の分科会の資料には31年までに運営費交付金と自己収入の割合を同水準にすべきだとの考えが示されたという。13年の国立大学法人収入(付属病院収入は除く)の割合は、運営費交付金51・9%、自己収入32・5%だが、31年にともに42%台にすべきだとしていた。

 これを受け、同大が試算した結果、収入増で補填(ほてん)する場合は、年53万5800円の授業料を17年から毎年平均2・7%増の引き上げが必要とした。人件費削減で賄う場合は、現在803人の教員を224人減らす必要があるとした。

 記者会見した小山清人学長は「教育の機会均等を使命とする国立大学として是認できるものではない」と非難した。さらに、「人口減少が進む中、生産性の高い人材の育成は、特に地方大学において重要だ」と述べ、国に見直しを求める考えを示した。【山中宏之】

http://mainichi.jp/edu/news/20151202ddlk06100244000c.html

国が決めるのは国立大学の授業料ですけど、上の記事のグラフを見てもわかるように、その決定は私立大学の学費にも連動してきます。これは、一般的な消費者物価指数などとは明らかに異なる動きです。

過去60年余にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる(2015年)(最新) - ガベージニュース


結果として起きているのは、高等教育を受けるにあたっての自己負担額がどんどん重くなっていて、個人はおろか、家庭を単位としても支えきれないところまで来ているという現実です。

私の時代でも、私自身、「上京・一人暮らし・私立大学」という選択肢は家庭の事情的に許されませんでした。当時以上に家計の苦しい家庭が増えている中で、地方大学を含めた学費は上がり続け、奨学金は有利子で貸し付ける学生相手の「貧困ビジネス」と化し…というのが、そこにある現実です。

これでも奨学金は自己責任なのか? サラ金より過酷な取り立て、巨額延滞料、それでも借りるしかない現実!|LITERA/リテラ

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学費のためにソープで働く慶大生、売り専に走る男子学生も…カラダを売るしかない「貧困大学生」が急増中|LITERA/リテラ

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「これでいいんだ」とはとても思えませんし、事態はもっと悪くなる方向へ進んでいるようにしか見えません。

教育への公的支出、日本また最下位 12年OECD調査
2015/11/24 20:00

 経済協力開発機構OECD)は24日、2012年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合を公表した。日本は3.5%で比較可能な32カ国中、スロバキアと並び最下位だった。OECD平均は4.7%。

 OECDによると前年までは幼稚園など就学前教育への支出を含めた統計で、日本は5年連続で最下位だった。今回から就学前教育を除き、小学校から大学までの支出で統計を取ったため、単純比較はできないが、日本の公的支出が依然低い実態が浮き彫りとなった。

 1位はノルウェーの6.5%。ベルギーアイスランドの5.9%、フィンランドの5.7%と続いた。

 日本の国公立小の1学級当たり児童数は27人(OECD平均21人)で加盟国中3番目に多く、国公立中の1学級当たり生徒数は32人(同24人)で2番目に多かった。

 また、物価の上昇率を勘案した国公立小中学校の勤続15年の教員給与は、OECD平均が増加傾向なのに、日本は05年から13年の間に6%減ったと指摘した。

 アンドレアス・シュライヒャーOECD教育・スキル局長は「給与、勤務条件を見ると、日本の場合は悪化しており、問題があるように思われる。優秀な人材を教職に引き付けることが重要だ」と述べた。〔共同〕

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H8G_U5A121C1000000/

改めて考えてみれば、教育への支出を削減するためには、教育を受ける者の数を削減すればよいわけで、そのためには高等教育機関の定員を絞り、予算を削減して、統廃合も進めればよい。そこからあぶれた若者の就職先を用意することも難しいとすれば、進学者を減らすと同時に就職者も減らす一手が必要で、それはズバリ、「少子化」ということになるでしょう。

子どもが少なくなればなるほど、教育への支出は減るわけですし、財務省が望んでいることは究極的にはそれだ、ということです。最近の世間の雰囲気を見ていると、社会的にも実は、そっちの方へ行くことが望まれているのではないですか?

ま、その後には、労働人口=納税者の減少というのが必然的に待っているのですけどね。それがにっちもさっちもいかなくなる前に逃げ切る算段を立てているのか、あるいはそんな将来のことよりも目先の教育支出削減のほうが優先されているのか、はたまた支えきれない高齢者人口の「削減」という政策がその先に控えているのか、そのへんは私にはわかりません。