ソウル一極集中と大学生

これまでにも何度か書いてきた、韓国のソウル一極集中と地方大学の問題。

ソウル一極集中と地方大と経済界

ここまで極端になってきたのは、せいぜいここ20年ほどのことです。それ以前は、下の記事にもあるように、ソウルの有名私立大と地方の拠点国立大とは難易度にも大差はなく、優秀であっても家が裕福ではない学生は、経済的に負担の少ない地元国立大を選ぶことが珍しくはありませんでした。

個人的な印象ですが、一極集中でやっていくには、韓国は国として大きすぎるでしょう。そろそろ、明確な国家の政策的選択として、地方大学の振興(再興)に力を振り向けるべきではないかと思っています。

記事入力 : 2011/06/16 13:43:05
ソウルの大学生、27万人中14万人が地方出身

 大邱市で小さな食料品店を営むPさん(55)は、息子と娘を大学へ進学させるに当たって苦悩した。ソウルの名門私立大に行かせるべきか、あるいは学費が安い慶北大に行かせるべきか、子どもたちと討論までした。そして、家族が出した結論は、ソウルの私立大へ行かせるというものだった。現在、Pさんの息子はK大を3年で休学して兵役に就き、娘はH大の3年に在学している。

 Pさんは「慶北大は学費が安く、自宅からも近いため、生活費が掛からないという利点があるが、ソウルの大学に行った方が就職に有利だと判断した」と話した。

 かつて、ソウルの名門私立大と同じレベルとされていた地方の国立大の地位が次第に低下し、地方の優秀な学生たちがソウルに集まるようになった。現在、ソウルの大学に通う学生27万人のうち、約半数の14万人が地方出身だ。地方の学生たちがソウルの大学に通うためには、部屋代などを含め、多くの負担を強いられることになる。彼らが肌で感じる学費などの負担は想像を超えるほどだ。

 20−30年前、地方の優秀な学生たちは、釜山大・慶北大・全南大・全北大・忠南大といった地元の国立大に進学した。1970年代半ばに釜山大に入学したある企業経営者は「当時は、ソウル大に行けない人は、全南大や釜山大といった地元の国立大に進学したものだ。大企業に就職し、社会的に成功した同窓生たちも多い」と話した。

 本紙が大学受験情報会社「ETOOS青松教育評価研究所」に依頼し、70年代後半の大学合格者の予備試験(現在の大学修学能力試験=日本の大学入試センター試験に相当)の成績を分析した結果、地方の優秀な学生たちが地元の国立大に集まる傾向がはっきりしていたことが分かった。

 例えば、1977年度の入試では、釜山大商学部の合格者の予備試験の平均点は258.5点で、高麗政経学部(253.3点)や延世大英語英文学科(252.9点)とほぼ同じレベルだった。また、忠南大社会科学系列の同年度の予備試験の平均点(233.9点)は、梨花女子大文学部(233.7点)と同レベルで、延世大中国語中国文学科(227.3点)をやや上回った。79年度の慶北大語学・文学系列と全南大商学部・法学部、慶煕大人文科学系列も同じレベルだった。

 ところが、80年代以降、地方の国立大が首都圏の大学に押されるようになった。ETOOS青松教育評価研究所のオ・ジョンウン評価担当役員は「首都圏と地方の経済的な格差が広がったことで、地方の学生たちがソウルに流入する傾向が強まり、2000年代以降にはさらにその流れが加速した」との見方を示した。

 経済や雇用をめぐって首都圏一極集中が進んだことで、地方の優秀な学生たちが地方の大学を避けるようになり、その結果として地方の大学の地位が低下し、地方の学生たちがソウルに集まる傾向がさらに強まるという状況が展開されているというわけだ。日本の場合、京都大や大阪大といった地方の国立大が難関校として君臨しているが、韓国の状況はそれとは対照的だ。

卓相勲(タク・サンフン)記者
カム・ヘリム記者

http://www.chosunonline.com/news/20110616000053

もし、受験生だったその昔、「東京の私立大学に進む」という選択肢しか世の中にないとしたら、私には大学進学ということ自体が難しかったでしょう。地元大という選択を捨てて、無理に無理を重ねてソウルの大学に進むというこの有り様は、気持ちはわからないではないにしても、悲喜劇であるように思われてなりません。

記事入力 : 2011/06/16 13:42:04
地方出身の大学生、年間支出はソウルの学生の2倍(上)

「ソウルの大学に行けば就職もうまくいく」と学費負担

 全羅南道順天市の高校を卒業し、昨年ソウルの私立S大学に入学したKさん(21)は、希望していたソウルの大学を、1学期通っただけで休学した。授業料(1学期当たり400万ウォン=約29万5000円)だけでなく、部屋代や食費、生活費など、月に80万ウォン(約5万9000円)もかかる経費の負担に耐えられなかったためだ。学生寮への入寮を希望したものの、抽選に漏れた。現在は家賃を抑えるため、保証金(敷金に相当)500万ウォン(約37万円)、家賃50万ウォン(約3万7000円)の狭いワンルームマンションに住んでいる。

 Kさんの父親は公務員。2人の姉を大学に通わせるため、すでに約1億ウォン(約738万円)もの借金を抱えている。400万ウォンの月給は、年老いた両親の扶養、借金の利子の支払い、保険料などに使い果たし、生活費はカードローンに頼っている状況だ。母親は「娘は自宅近くにある大学の看護学科に進学し、地元で就職してもらえばと思ったこともあるが、ソウルの大学へ行ってこそ夢をかなえることができると思うと、止めようがない」と話した。

 KさんがS大学に入学してから、これまでに使った金は、年間2036万ウォン(約150万円)に上る。

 Kさんと同じ大学に通うソウル出身のLさん(26)が1カ月間に使う金は、昼食代10万ウォン(約7400円)、携帯電話代5万ウォン(約3700円)、交通費7万ウォン(約5200円)など計25万ウォン(約1万8500円)だ。両親と一緒に暮らしているため部屋代は必要なく、食費の負担も少ない。1年間の授業料800万ウォン(約59万円)と生活費を合わせれば、1年間の支出は約1200万ウォン(約89万円)程度だ。地方出身のKさんの支出は、Lさんの約2倍に達する。

 大学の授業料が1000万ウォン(約74万円)に達する中、地方出身の学生やその親たちの負担は大きくなる一方だ。

http://www.chosunonline.com/news/20110616000051

記事入力 : 2011/06/16 13:42:20
地方出身の大学生、年間支出はソウルの学生の2倍(下)

「ソウルの大学に行けば就職もうまくいく」と学費負担

 ソウル市によると、市内51大学(専門大学〈短大に相当〉を含む)の学生27万人のうち、半分以上に当たる14万人が地方出身だという。だが、ソウル市内の大学の学生寮の定員は1万7500人(地方出身の学生の12.5%)にすぎない。残る12万2500人(87.5%)のうちの多くは、毎月40万ウォン(約3万円)−50万ウォンの家賃を払って勉学を続けている。

 一方、地方に住む親たちの所得はソウルよりはるかに低い。統計庁の調査(2009年)によると、1人当たりの個人所得は、ソウル市の1579万ウォン(約117万円)に対し、全羅南道は1110万ウォン(約82万円)でソウル市の70%、慶尚北道は1179万ウォン(約87万円)で同じく74%だ。このように所得の格差が大きい状況で、地方の親たちは子どもをソウルの大学に進学させるために、ソウル市民の倍もの費用をつぎ込んでいる。ソウルと地方における所得や資産の二極化現象が、子どもたちの大学進学によってさらに激化しているというわけだ。

 2人の子どもをソウルの大学に通わせている大邱市のIさんの場合、年収4500万−5000万ウォン(約330万−370万円)のうち2000万ウォン(約150万円)を学費に費やしている。子どもたちのために、5000万ウォンの伝貰(チョンセ=高額の保証金を預ければ、その運用益で家賃負担が不要となる韓国独特の賃貸制度)により、集合住宅を確保した。ソウルにいる2人の子どもたちのために教育費を使う一方、自分の家を買うことはできず、20坪(約66平方メートル)台のマンションを伝貰で借りて生活している。

 全羅北道益山市の高校を卒業し、ソウルの私立K大学に進学したAさん(23)も「金が掛かるソウルでの暮らしはとても大変だ」と話した。自営業の両親が月50万ウォンの生活費を仕送りしているが、部屋代(月40万ウォン)を払えば、ほとんど残らない状況だ。平日は大学の学生食堂で働き、週末は家庭教師などのアルバイトをしているが、それでもギリギリの生活を強いられている。これまでに4学期分の学資金の融資を受け、約1400万ウォン(約104万円)の借金を抱えている。Aさんは「それでも両親は、ソウルの大学に行けば就職がうまくいく、と言って、ソウルの大学に通わせてくれている。しかし、就職がうまくいかず、借金だけ残ることになったらどうしよう、という不安感にさいなまれている」と話した。


アン・ソクペ記者
キム・ヨンジュ記者

http://www.chosunonline.com/news/20110616000052

ついでにこの記事、「地方出身者がこんなに多いのに、各大学の寄宿舎整備は追いついてない(だから大学のインフラ整備はなっとらん)」という趣旨だと思うのですが、そこに出ているだけの規模の学生寮を備えている大学って、日本ではほとんどないと思うのですが。筑波大学くらいですかね?

記事入力 : 2011/06/16 13:44:37
韓国の私立大、寄宿舎は狭き門

入寮できるのは全学生数の10%以下、地方出身学生の5人に1人
一部大学では高額の寄宿舎費が学生を圧迫

 地方出身でソウルの大学に通う学生にとって、学校の寄宿舎に入れるのは「幸運」なことだ。住居費支出を大幅に減らせるからだ。

 だが、ソウルにある大学の寄宿舎施設には余裕がなく、地方出身の学生のうち寄宿舎で生活しているのは5人に1人の割合にとどまっている。

 本紙が13日、大学情報公示システム「大学アルリミ」を通じ、ソウル市内の私立大キャンパス36カ所の寄宿舎について調べた結果、全学生数に対する寄宿舎の定員(昨年基準)は平均9.65%に過ぎなかった。これは、ソウルを除く全国の国公立大キャンパス40カ所の平均20.5%はもちろん、私立大キャンパス139カ所の平均19%にも及ばない水準だ。

 ソウルにある大学の地方出身学生の割合は52%程度だが、このうち約2割しか寄宿舎に入居できないわけだ。

 国公立大の状況もほとんど同じだ。産業大や教育大を含むソウル市内の国公立大5校でも、全学生数に対する寄宿舎定員の割合は平均13%にすぎない。

 ソウル市内の私立大のうち、寄宿舎の定員の割合が0%のキャンパスも4カ所あった。同徳女子大と西京大には寄宿舎そのものがなく、祥明大の寄宿舎はソウルではなく天安キャンパスにある。

 寄宿舎のある大学キャンパスのうち、学生数に対する寄宿舎定員の割合が高いのは、カトリック大第3キャンパス(124.5%)、総神大(63.6%)、長老会神学大(40.7%)、三育大(25.5%)、監理教神学大(21.1%)など、主に宗教系の大学だった。建国大(20.3%)や成均館大(20.2%)も比較的高い数字を示した。

 一方、世宗大(1.5%)、光云大(1.8%)、京畿大第2キャンパス(2.0%)、漢城大(同)、誠信女子大(2.3%)、東国大(3.7%)、中央大(4.5%)、弘益大(5.0%)の8キャンパスは、寄宿舎の定員の割合が全学生数の5%以下だった。

 一部の大学では寄宿舎費が高額で、学生は大きな不満を抱えている。ソウル市内にある私立大の3年生で忠清北道出身のキムさん(20)は「民間が運営する寄宿舎のため、2人部屋で1カ月50万ウォン(約3万7000円)と大学周辺のワンルームより高いため、1学期だけで寄宿舎を退寮した」と話した。

カム・ヘリム記者

http://www.chosunonline.com/news/20110616000054