地方大学が躍進した2016年の大学野球選手権を見る目
中京学院大学が初出場初優勝し、決勝の相手が中央学院大学、ベスト4が奈良学園大学に上武大学という今回の結果は、実に私好みの結果でした。
準決勝に至る前にも、東都の亜細亜大を中京学院大が圧倒した試合、東京六大学の明治大を関西国際大が初戦敗退に追い込んだ試合など、見応えのある試合がありました。
こうした「下克上」があるのは、日本の学生野球の層の厚さを示すものですし、様々な環境がある中で、どこからでものし上がることができるという、野球のハングリースポーツとしての性質を見せつけるものでもあると思っています。
今の日本野球界でその象徴と言ってもいいのは、今はなき三重中京大「最後のエース」・則本昂大でしょうか。
そうした地方大学の野球事情を取り上げた記事を2本ばかり。日刊ゲンダイの記事だけだと「地方大への偏見が広まりかねないな」と思っていましたが、デイリースポーツの記事との併読でそのあり方の多様性が見えてくるのではないかと思います。
大学選手権4強独占 地方リーグ躍進に練習量とスカウト力
2016年6月11日
亜大を1点に抑えた中京学院大の柳川(C)日刊ゲンダイ東都リーグを制した優勝候補の亜大が9日、全日本大学野球選手権準々決勝で初出場の中京学院大(東海地区)に敗れ、4強を逃した。生田監督は「打撃も投手力も相手が数段上。力負けです」とうなだれた。8日には同じく優勝候補の明大が関西国際大(阪神)に延長十回タイブレークの末に敗退。東京六大学と東都大学の代表がともに4強入りを逃すのは異例である。
11日の準決勝に駒を進めたのは、中京学院大と奈良学園大(近畿学生)、中央学院大(千葉)、上武大(関甲新学生)の4校。3年前の大会は上武大が制し、12年の明治神宮大会は桐蔭横浜大(神奈川=関東5連盟)が優勝した。近年は「地方」が躍進している。視察したあるスカウトが言う。
「有望な高校生が東京六大学や東都の中央球界といわれる各大学にスポーツ推薦で入学するのは昔も今も変わらない。ただ、最近の六大学や東都は出席日数が足りなければ一般の学生同様に留年するケースが増えた。野球部の特別扱いがなくなってきたんです。授業の制約があって絶対的な練習量が減っているのは確かでしょう。そこへいくと、地方リーグの大学はまだまだ、野球で全国に名前を売らなければならない。学校が生き残るためにも、選手は中央球界の大学と比べて野球漬けの環境にできやすいのです」
環境に加え、選手の質にも変化が生じている。
「地方リーグのスカウト力はハンパじゃない。例えば上武大は谷口監督自ら全国を飛び回って高校生をスカウトしている。声をかけるのは中央球界より地方リーグの大学の方が早い。後に六大学や東都に選手を持っていかれることはあっても、以前と比べれば、素質ある選手を数多く入学させるようになりました」(高校野球関係者)
地方との格差はなくなりつつあるようだ。
中京学院大 驚がくチームマネジメント
2016年6月13日
大学日本一となり、マウンドに駆け寄る吉川(右から2人目)ら中京学院大ナイン=12日、神宮球場(撮影・出月俊成)大学選手権で史上7校目の初出場初優勝を成し遂げた中京学院大。ドラフト1位候補の吉川らを中心に、エース・柳川、捕手で主将の山崎らが繰り広げた快進撃は目を見張るものがあった。全国的には無名で、岐阜県中津川市の大学がなぜ頂点に立てたのか-。そこには現代の流れに沿ったチームマネジメントがあった。
「私は積極的にアルバイトをしなさいと言うんです」と明かしたのは近藤正監督(68)。部員のほとんどは現在、アルバイトで生活費と用具代を稼いでいる。エース・柳川は焼き肉店のホール店員とスーパーの総菜売り場で週5日、練習前後に働いている。選手権でMVPと首位打者の2冠を獲った主将・山崎は、時給980円の牛丼店で午後7時から深夜まで働く。
授業もあるため、日々の練習は2~3時間。「練習後に働くのは本当に苦しいです…」と優勝会見で苦笑いを浮かべながら語った山崎。ただチームは条件をつけており、深夜勤務があるコンビニなどは禁止。そして必ず“賄い付き”の店を選ぶよう推奨している。
「体作りをする上で賄い付きは非常にありがたいですね。どうしてもコンビニの深夜勤務しかない場合は、授業には出なさいと。そして練習は出なくても出席扱いにしてあげる。眠いのに練習してもうまくはならない」と近藤監督。ただ世間一般的に強豪大学の野球部はアルバイトが禁止されている。その中で積極的に推奨するのはなぜか?それは90年代のバブル崩壊後から増えた一般家計の苦しさに起因する。
例えば私立大学で野球をやろうと思えば、30万程度の入学金、年間100万を超す授業料に加え、寮費、部費、遠征費、用具代とかなりの費用がかさむ。特待生となれば話は別だが、金銭的な部分で大学では野球を続けられないと判断する選手は多い。
「野球が好きな子には、何とか大学で野球を続けさせてあげたい」。岐阜中京時代に春夏5度、甲子園へ導いた近藤監督はそう語った。各高校へスカウトに出向く際も「4番やエースで無くても結構です。野球が好きで、大学で4年間、チャレンジしたいと思っている選手を優先的にください」とお願いする。
「最近は母子家庭の子も増えてきました。これも時代なんでしょうね」と近藤監督。少しでも仕送りをする親を楽にさせ、野球を続けさせるためにアルバイトを推奨する。金銭的な理由で生徒の未来、情熱にフタをするわけにはいかなかった。
さらに「野球が好きで入って、野球が好きなまま卒業してほしい」と練習では押しつけ的な指導はしない。少しでも上手くなるために選手同士が意見を言い、教え合う光景が中京学院大のグラウンドにはある。そんな純粋な思いが、神宮に入って爆発した。
ナインが「1回勝てればいいと思っていた」と口をそろえる中で見せた快進撃。「山崎なんかはね、野球が楽しくてしょうがないって言うんですよ。ずっとプレーしたいって」と大会中、指揮官が明かしたように、全国の大舞台は苦労を重ねた選手たちにスポットライトを当てた。
並み居る強豪を次々と撃破して成し遂げた史上7校目の初出場初優勝。「やればできるんだ」-。選手たちはそう言って喜びあった。若さと情熱を最大限に引き出したチームマネジメント。中京学院大が描いた軌跡は、あきらめないことの大切さ。そしてスポーツの世界に、不可能の文字はないことを教えてくれた。(デイリースポーツ・重松健三)
追記:ところで、デイリースポーツのこの記事。吉川選手の練習姿をおさえているのはいいとして、「勝利の女神」となった稲村亜美も取材しておさえとかんとあかんかったんとちゃうのん?
中京学院大・吉川“神スイング”でVだ
2016年6月11日
バッティング練習を行う中京学院大・吉川全日本大学野球選手権で4強入りした中京学院大は休養日となった10日、神宮室内で練習を行った。ドラフト1位候補の吉川尚輝内野手(4年・中京)は軽めの調整で汗を流し、たまたま撮影で来ていたタレント・稲村亜美と遭遇。今大会・429と好成績を残す自身も、“神スイング”で優勝&個人タイトルを目指す。
練習終盤、室内が大きく沸いた。目の前にテレビで見ていたタレントが現れ、たまたまチームに稲村の先輩がいたことから、輪になって談笑する場面も。「めっちゃかわいかったです」と笑った吉川らナインにとって、貴重な“息抜き”になった様子だ。
「チームの勝利が第一優先で、自分も結果を出して行ければ」と語った吉川。奈良学園大との準決勝へ「自分が引っ張りたい」と決意を込めた。
twitter.com大学野球は中京学院大学が優勝🌟
— 稲村亜美 (@Inamuraami) 2016年6月12日
実はこの前神宮で撮影してる時に同じ少年野球チームだった地元の先輩が中京学院大学の部員で練習をしていて話しかけてくれてお話したばっかりなんです😳!
おめでとうございます🎉🎉🎉