学校現場で新任教諭の早期退職が増えている件

個々に抱えている事情は違うとしても、自ら選択して志望し、それなりに難関である正規採用の関門を突破して就いた教員の職を1年以内に離れてしまう、というのは尋常なことではありません。

個人の資質として職場になじめなかったケースというのもなくはないでしょうが、それは今も昔もあることです。目に見える形でまとまった数が全国的に出ていて、しかも増えているというのは、個人の問題ではなく、学校の環境に問題がある可能性が高いのではないでしょうか。
(ま、これまで散々言われてきていることではありますが。)

とすれば、そうした新任教諭が置かれている職場環境は今、どのようなものなのか。支援という対処に着手する前に(あるいはそのために)、現場の実態把握がまず必要でしょう。特に福岡県・市の数はちょっと多すぎで、気がかりです。

心病むケースも…新任教諭の退職相次ぐ 1年内に全国で431人
2020/1/8 6:00 (2020/1/8 11:14 更新)
西日本新聞 一面 金沢 皓介

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新任教諭の依願退職者数

 新任の学校教諭が1年もたたずに依願退職するケースが増えている。文部科学省の調査によると、全国で2018年度に採用された公立小中高校、特別支援学校の教諭のうち431人が1年以内に依願退職。前年度比73人増となり、1999年度以降で最多だった。理由は自己都合が299人で最も多く、病気を理由とした111人のうち104人が精神疾患を挙げた。教育現場の長時間労働が指摘される中、新任教諭の負担感は強いとみられ、識者は支援の必要性を訴えている。

 教諭は教育公務員特例法に基づき、採用後1年間の“試用期間”を経て正式採用となる。

 調査によると、全国の依願退職者の増加は3年連続。九州7県と3政令市では計70人が依願退職した。福岡県が依願退職者が最も多く31人、福岡市21人と続いた。全採用者数に占める割合は0~3%台で、最多は福岡市の3・27%だった。

 同市では、15年度はゼロだった依願退職者が16年度2人、17年度13人と増加傾向にある。18年度21人のうち、精神疾患を理由にしたのは6人だった。

 働き方改革が叫ばれる一方、ベテラン教諭の大量退職が進み、若手教諭の仕事量が増えているとの見方は根強い。市教育委員会は「近年は採用者も多く、退職理由もさまざまで一概に比較はできないが、新任教諭に対する支援の必要性は認識している」と説明。19年度から市教委の職員が各学校を回り、若手教員に悩み事などを打ち明けてもらう座談会の場を設けているという。

 共栄大の和井田節子教授(学校臨床心理学)は「新任の先生は仮採用のような立場を気にして、悩んでいることやうまくいっていないことを周囲に言いづらい。そのためにサポートが遅れて精神疾患となるケースも多い。学校の日常業務の中で若い先生の悩みに身近な教員が寄り添えるような工夫が求められる」と話している。 (金沢皓介)

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/573988/

上記記事にも少しだけ出ていますが、何よりもまず、新任教員の話を聞いて回らないと。
(いえ、もう既にいろいろな話が聞かれ、取り組みも行われているのはわかっているんですけど、上の議論は現場の声に立脚したものにせんとあかんと思うのです。)

教員研修「1対1」で成果 働き方改革、授業にも工夫 福岡の小学校
2019/12/29 6:00
西日本新聞 一面 郷 達也

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メンタリング相手の浅香教諭(右)の授業を、メモや写真を撮って見守る因教諭(左)。授業後、2人で反省会をして改善点や課題を出し合った=福岡県久山町

 教員の多忙や長時間労働が全国的に問題となる中、福岡県久山町立久原小が「働き方改革」の抜本策として、週1回の全職員対象の校内一斉研修をやめ、「メンタリング」と呼ばれる1対1の対話研修を導入して業務改善につなげている。教員個人の時間を確保し、効率的な教科研究ができる人材育成手法で、実践校は九州では数少ない。受け身になりがちな一斉研修に比べ、教員が主体的に取り組むため指導力向上の効果もあるという。同小は1月24日、研究報告会を開いて成果を発表する。

 経済協力開発機構OECD)の2018年調査によると、日本の教員の1週間労働時間は小学校が54・4時間、中学校が56時間で世界最長。20年度には新学習指導要領の完全実施により「外国語活動」などが増え、現場のさらなる疲弊が懸念されている。

 こうした事態も踏まえ、久原小は18年度から毎週火曜の放課後、全職員が90分間拘束される校内研修をやめた。学期末の1週間は午後授業をカットし学級事務の時間に充てている。「個人の時間を少しでも確保するためには、全職員で使っていた時間を削るしかない。働き方のユニバーサルデザイン化」と、重松宏明校長は狙いを語る。

 久原小でのメンタリングは、メンティ(授業をする人)がメンター(指導者)を指名。一斉研修のように国語や算数など学校側が決めた科目ではなく、メンティが学びたい科目や指導法を設定し、授業などを見てもらう。メンターからの助言や日常の対話を通じて、課題の改善、悩みの解消などにつなげる仕組みだ。

 メンティとなった浅香圭佑教諭(26)は「子どもを引きつける技や授業のヤマ場の作り方など克服したい点をピンポイントで学べる。無駄な時間が減り、自ら学ぶ時間が増えた」と効果を実感。メンターを担当した因美紀教諭(44)も「若手もベテランも忙殺され、余裕がない。メンタリングは2人だけで時間調整が容易な上、じっくり対話してよりよい授業法を発見できる」と語る。

 メンタリングは横浜市が先進的に取り組んでいるが、広がりは少ない。働き方の現状を改善しながら教育の質も担保する-。学校現場が抱える悩みに一石を投じられるか、注目が集まる。 (郷達也)

■教員同士磨き合える

 福岡教育大教職大学院の森保之教授(学校経営学)の話 メンター側も指導する中であらゆる視点を持つことができ、磨き合いがうまれる。児童の学びと同様に、教員も依存型研修ではなく自立型のメンタリング研修で資質や力量を高められる。新しい働き方として学校現場に広がっていくのではないか。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/572273/