教職員へのハラスメント

以前、教育実習でのハラスメントというのを取り上げたことがありますが、教育現場でのハラスメントということで同根の問題だと思います。組織内での防止体制や相談窓口の整備とともに、外部の窓口へのアクセスを確保しておく必要性を感じます。

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教職員へのハラスメント、相談しづらく被害深刻に
関西 2020年12月29日 5:00

学校現場で管理職から教職員へのハラスメント行為が後を絶たない。6月にはパワハラ防止法などが施行され、全ての事業主にパワハラやセクハラなどの対策が義務付けられた。学校も対象だ。ただ、教職員が安心して被害を訴えられる中立的な相談体制は整っておらず、被害が深刻になりかねない。

校長本人が加害者

5月、滋賀県草津市の公立小学校の元校長が逮捕された。在任中の部下の女性教師への強制わいせつの疑いだった。市の教育委員会では学校でハラスメント行為があった場合、校内の相談員か、校長に情報を集約して報告させる制度を運用してきた。そのため、特に校長が加害者の場合、被害者が安心して申し出る体制は不十分だった。

校長は不起訴となったものの、市は外部の有識者らからなる「ハラスメントゼロ推進会議」を発足。被害者が希望すれば聴取には弁護士が同席するなど対応を見直す。会議メンバーで市民団体「くさつパールプロジェクト」の内田雪絵事務局長は「被害の認定にはハラスメントの見識がある外部の専門家も加わるべき」と話す。

休職者は過去最多、相談件数も1年前の10倍以上に

文部科学省の調査では6月時点で全ての都道府県と政令指定都市の教委でパワハラとセクハラの防止指針が策定されている。それでも被害はやまない。

東京都教職員組合の相談窓口にはこの1年で、追い詰められた教職員からの電話が急増している。「昨年までは1カ月に3、4件だったのが、1日2、3件は相談が来るようになった」(都教組)

多いのが管理職からの行きすぎた指導。別室で「教師失格だ」と長時間にわたって叱責された、「今すぐ辞めろ」と言われたなど、上下関係に基づく威圧的な言動だ。

東京都の公立中学の30代の男性教師は3年間、副校長からパワハラを受けた。「学校に迷惑」と言われたり、生徒たちの前で怒鳴られたりした。見かねたスクールカウンセラーが教委に報告したこともあったが、改善されず、適応障害を発症し3カ月休職した。「信頼している大人がパワハラを受けるのは、生徒たちにも悪影響を及ぼす」。両者が異動するまで被害は続いたという。

文科省の調査によると、精神疾患で休職する公立学校の教職員は2019年度に5478人と過去最多だった。20年前の2.8倍だ。今年は新型コロナウイルス感染症による休校期間もあり、授業時間を確保するため教職員の負担は一層重くなっている。「心を病んで病休を申し出ても認められないとの悩みが最近、増えている」(都教組)

三者に訴えられない

民間企業の従業員と違って、公立学校の教職員を含む地方公務員は都道府県の労働局にパワハラなどを訴えることができない。さらに学校は「市役所などより、規模が小さいので被害を相談できる相手が限られ、報告が校長に集約される体制になりがち」(労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員)だ。

全日本教職員組合が19年に20~30代の教員に実施したアンケート調査では約32%が「パワハラを受けたことがある」と回答した。教委にハラスメント問題に対応する窓口はあるものの、利用したとの回答は約2%にとどまった。

数年前まで都内の公立中学の教師だった30代の女性は上司の校長からパワハラに遭った時、誰にも話せず退職した。「教委は校長経験者が中心で、上司の知り合いがいる可能性がある。きちんと対応してもらえるか分からなかった」と振り返る。

学校の問題に詳しい明治大学の諸富祥彦教授は「学校との利害関係のない第三者機関が対応することが必要」と指摘する。

生徒間のいじめなどに法律的な見地から助言するスクールロイヤーの活用も有効だ。「学校に改善を提言できる権限を持たせ、物申せるようにしておく」と解決策を挙げる。

なり手不足が教育の質低下を招く

教員の志望者は減少傾向にある。19年度の教員試験の競争率は小学校で2.8倍と過去最低で、中学、高校とも前年より下がった。人材の確保は死活問題だ。せっかく育った教職員がハラスメントで離職する事態を防がなければ、日本の教育の質が低下しかねない。

(関優子)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE0863H0Y0A201C2000000

これ、まず考えられるのは、記事もある通り教職員組合なんですけどねえ。非正規教員や先に見た実習生、また生徒が関わる場合もあります。組合に任せとけばいい、というものではなく、できるだけ多方面からの「網」をかけておく必要があると思われます。

www.tokyouso.jp

ハラスメントで退職検討 若手教員10%超、全教調査
社会・くらし 2020年9月5日 11:30

20~30代の若手教職員の10%超が、パワーハラスメントセクシュアルハラスメントの被害を理由に退職を考えていたことが、全日本教職員組合(全教)によるアンケートで判明した。

全教は「経験の浅い若手は被害に遭っても職場で『おかしい』と声を上げられず、孤立している実態が明らかになった」と分析している。

調査は2019年8~12月、全教の地方組織がある地域で、小中高や特別支援学校の教職員を対象に実施した。19年から過去3年間に被害を受けた経験を尋ね、811人から回答があった。

その結果、パワハラやセクハラなどで退職を検討した人は99人で、全体の12.2%だった。

別の質問で種類別の被害経験を尋ねると、パワハラ被害が最も多く253人で、全体の31.1%に上った。具体的には、管理職や先輩教職員による一方的な意見の押しつけや、過剰な叱責を挙げた人が多かった。

被害を受けた253人の性別を見ると、男性の26.8%に対し女性は35.5%で、標的になりやすい傾向がうかがえた。残りは無回答だった。

セクハラ被害の経験は66人で全体の8.1%。性的関係を迫られた例があったほか、自由記述で「『おまえはゲイだろ』と言われた」とする声も寄せられた。

妊娠や出産を巡って不当な異動の勧告を受けるなど、マタニティーハラスメント(マタハラ)被害についても、18人が訴えた。

〔共同〕

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63492610V00C20A9CE0000