映画「Fukushima 50」と「新聞記者」とは何が違うのか。

前者の作品はまだ観ていないのですが、こちらの文章を読んで思ったことを備忘としてここにメモ。

gendai.ismedia.jp

後者の作品は観ています。また日本アカデミー賞の報道があったことも知っています。

日本アカデミー賞 「新聞記者」が3部門
2020.3.7 00:11

 第43回日本アカデミー賞の授賞式が6日、東京都内で行われ、「新聞記者」が最優秀作品賞を受賞した。「新聞記者」は、松坂桃李さん、シム・ウンギョンさんが、それぞれ最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞も受賞した。

 「新聞記者」の藤井道人監督は「本当に、本当にうれしいしか言えないです」と喜びを語った。

 最優秀監督賞は「翔んで埼玉」の武内英樹監督。最優秀助演男優賞と最優秀助演女優賞は「キングダム」の吉沢亮さんと長澤まさみさんに決まった。

 最優秀アニメ作品賞は「天気の子」、最優秀外国作品賞は「ジョーカー」がそれぞれ受賞した。

 授賞式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため観客を会場に入れずに行われた。

https://www.sankei.com/entertainments/news/200307/ent2003070002-n1.html

www.hankyung.com

私は「新聞記者」についてわりと高い評価を与えている立場なのですが、そのポイントはどこにあるかというと、次の3点です。

1.シムウンギョンの起用とその演技(才能ある女優さんの熱演)
2.本田翼の起用(役にはまってひたすら可愛い)
3.松坂桃李の役回り

全体に関わって特に大事だったのは、3だと思います。「外務省から内閣情報調査室に出向し、与えられた任務に苦悩する若手官僚」という役を、作品全体を通じて演じ切ってきた松坂桃李が、この作品の真の主人公であった。そして、彼を通じて焦点が当てられるのは、政治的に決定された方針に基づいて目的合理的に振舞うことを要求される中で葛藤し、苦悩する組織人の姿。

作中にちょいちょい挟まれる原作著者や元文部科学省事務次官の対話の音声、そして問題となる事件の設定など、時の政権批判を意図していると取れる描写はそこここにあるのですが、ではそれがメインテーマかというと、そういう作りにはなっていない。というのも、この作品は政治権力(の側に属する人々)を直接描出する場面がほとんどありません。おそらくこれは、その存在を十分に意識したうえで意識的に選択されたと思われます。

「これを観て、その延長線上でいろいろ考える人はいるだろう(てか、そこはいろいろ考えられるようにしている)。しかし、この作品の中で〈それ〉はメインのテーマではない。」

…というのが私の解釈です。ホントはどうなのかは知りません。


とか考えたうえでですね、それと「Fukushima 50」とが違うとしたらどこか、というのをさらに考えてみると、たぶんここだと思うんですよ。

どの段階で誰が、「総理大臣を悪役にする」と決めたのかは知らないが、出発点がそこにあるので、演技も演出も、「総理」登場シーンだけは、事実とはかけはなれてしまっている。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70707?page=5

一言で言えば、「総理大臣が登場する」ということ。

「未見である以上、作品の出来や内容については評価しない」というのを前提にしたうえで、現場の奮闘を描きつつ、時の政権について具体的な描写を行なっている(おそらくそれ「も」作品が描きたいテーマに含まれる)、という点は、「新聞記者」との違いと言えるでしょう。これは優劣や良しあしというよりも、ストーリーの描き方の選択、焦点の当て方の問題です。

ま、要はそれだけのことと言えばそれだけのことです*1。内容的な出来映えを含む比較については(もしやるなら)観てからということで、とりあえずこの件はここまで。

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www.youtube.com

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www.youtube.com

*1:逆に言うと、それ以外の点で被る部分はかなりあるように思います。