長野県のこの施設が話題となったのは、こちらがきっかけのようです。本を扱ったことのある人ならば、これが本にとってどんなにひどい環境か、すぐにわかるものでした。
数々の建築賞を受賞した複合文化施設内に作られたガラス張りの図書室。
— Ayako Kimishima (@kimi_aya_) 2021年2月7日
外光が差し込む明るい書棚には、紫外線により赤色が褪色し、青い表紙になった書籍が並ぶ。 pic.twitter.com/F7461Da3HP
その後、朝日新聞が取材に入り、この記事が出ました。現場を管理する当事者の苦悩はよくわかりました。
図書館の本が真っ青 開放的過ぎた?「本に申し訳ない」
依光隆明 2021年2月12日 10時30分
茅野市民館に並ぶ本。退色し、青っぽくなっている
図書館を外から見ると…。意識的にそうデザインされている=茅野市民館
全面ガラスの向こうに八ケ岳が見える。ロケーションと日当たりは最高なのだが=茅野市民館
両側が全面ガラスとなっている細長い空間に延びる茅野市民館図書室。真っすぐな通路の左側に書籍が並ぶ
両側全面ガラスの細長い空間に書棚が並んでいる=茅野市民館長野県のJR茅野駅に隣接する茅野市民館図書室が最近、ネットで熱い話題となっている。ずらりと並ぶ本の背表紙が退色してしまい、青っぽくなっているのだ。原因は紫外線とみられ、「本の悲鳴が聞こえる」「意匠重視の設計者の自己満足」などなど、ネット上では厳しい意見があふれるが……。市民館側には公共空間としての狙いと高所にあるがゆえの悩み、ジレンマがあった。
茅野市民館は2005年10月にオープンした。キーワードは「交流」で、外からも見えるし、内からも外が見える。そうすることで異分野の人々の出会いを意識した。
図書室は最も駅に近い空間に細長く作られている。長辺は両側とも高さ5メートルを超える全面ガラス。蔵書は約1万点で、片側の全面ガラスから茅野駅の列車やホームが見え、片側には八ケ岳の山々が映る。開放感とロケーション、日当たりは申し分ないのだが……。
ネットの指摘通り、図書室に並ぶ本の多くは背表紙が青く変色している。
「簡単に言うと色飛びです。日焼けで色が抜け落ちていく現象です」。話すのは茅野市民館ディレクターの辻野隆之さん(65)。辻野さんは国内外の芸術関係施設に関わってきた。
「美術館が日照を計算するのは当たり前ですが、書籍も同じ。意匠も含めてきちんとしているのが書籍の価値なので、書籍に申し訳ない。なんとかしなきゃいけないと思っています」
ジレンマという言葉を使いながら悩みを明かす。
「15年前、オープン型図書室という新しい考え方でスタートしました。だから外に向かって本を見せているのですが、そうすると直射日光の影響を受ける。標高が高いので紫外線が特に強いんです。自然の力に影響を受けています」
市民館の標高は約800メートルで、標高ゼロの平地よりも1割近く紫外線が強いといわれている。しかも全面ガラスは北東と南西を向いており、特に午後の日差しが強烈に差し込んでくる。対策としてガラスにはUVカットのものを使用、南西面にはロールスクリーンもつけたが、日差しの強さは予想以上だった。
施設のデザインと図書館機能が相反した象徴的な事例だけに、ネットの反響も大きくなっている。最初のツイートから3日で「いいね」は7万を超え、リツイート(転載)は2万5千に達した。
辻野さんは「自然の中にある開かれた空間というのが最大の特徴。設計思想をつぶすと持ち味もつぶすので、それは違う」と悩みを明かす。「なんとかしたいという思いは強いのですが……。答えが見つからないのが現状です」(依光隆明)
ただ、これを読んでもよくわからないのが、「設計者は何を考えて設計し、今これを見て何を考えているのか」です。そのデザインをもって数々の賞を取っているわけですし、当人に設計意図や現状に対する見解などを質しに、取材に行ってもおかしくないとは思うのですが…。
ja.wikipedia.org
www.tozai-as.or.jp
これを放置していたら、「こういうのを作って何とも思わない設計者である」と思われるような気もしますし、それって決して得策ではないと思うのですよ。