【仁川の風景】仁川家族公園の公園化は止まらない・その12:樹木葬林の沈滞

続きです。

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ここまでに見てきた幽宅の丘の合同墳墓や日本人墓域から、斜面に残る土葬墓を見ながらさらに先に歩みを進めると、その道は樹木葬林へと続いています。




ここは、仁川家族公園の樹木葬林の裏口というか通用口に当たるところで、いちばん奥まったところにあるF区域に通じています。樹木葬に用いられている樹木には「区域名‐通し番号」を記した札がかかっていますから、いま自分がどこにいるのかはすぐにわかるようになっています。




樹木葬林に正面から入るには、いったん昇華院まで戻って、「樹木葬林(思索の森)」と案内されている方に向かいます。こちらには、休憩用の広場や合同献花台などもあります。




こちらから樹木葬林に入ると、B区域・A区域から見ることになります。





さて、そもそもこの樹木葬林、いつオープンしたかと言えば、2008年8月。京畿道楊平郡楊東面に国内初の国立樹木葬林として設置された「空の森追慕院」(2009年開院)よりも早いんです。これは、保健福祉家族部が推進した自然葬モデル事業として、他に先駆けて進められたものでした。

산림청 - 하늘숲추모원 시설안내

부평 가족공원 수목장 조성 마쳐
최재용 기자 입력 : 2008.06.18 22:16

공원 형태로… 곧 이용할 수 있을 듯

부평 인천가족공원 안에 자연장 시범사업으로 지난 3월부터 추진돼온 수목장 조성사업이 완료됐다고 인천시가 18일 밝혔다.

주민 친화적인 장사시설인 이 수목장은 2만6031㎡(7874평) 넓이로, 상수리나무, 신갈나무 등 수형과 생육 상태가 양호한 수목 475주를 추모목으로 선정했으며, 합동제례단, 휴게공간, 잔디원 등을 설치하고 계류 시설 등 주변을 정비해 공원형태로 조성하였다. 8억원의 사업비가 들었다. 인천시는 곧 운영 방식을 정해 시민들이 이용할 수 있게 할 계획이다. 웰 다잉(well-dying)에 대한 관심이 높아 앞으로 시민들이 많이 이용하게 될 것으로 보인다.

수목장은 묘지로 인한 국토 잠식을 최소화하고, 봉안당의 대형화, 위생관리문제, 봉안시설의 지나친 상업적 운영에 따른 경제적인 문제 등을 줄이기 위해 보건복지가족부에서 추진중인 자연장 시범사업이다. 여기에 인천시가 선정돼 인천가족공원 내 산림지역을 친환경적인 수목장으로 조성하게 됐다.

http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2008/06/18/2008061801613.html

したがって、ここは韓国において本来意図された「樹木葬」の形が見られると言っていいでしょう。つまり、可能な限り自然な形の山林を残して、埋葬者の個人記録は入口の石碑(「樹木葬林追慕者名単」)に記すにとどめることで、「森林破壊を最小化し、既存の樹木を活用する環境に優しい葬法」の樹立が、そこでは目指されていたわけです。このような樹木葬の形は、本来の意味での「自然葬」であるといってもよいでしょう。

ただ、結論から言えば、この墓域は、仁川家族公園の中で最も古い自然葬地であるにもかかわらず、最も顧みられることのない自然葬地でもあります。同じ時期に増設が続いた納骨堂と比べれば、利用者の少なさは明らかでしたし、同じ形態の樹木葬林を公園内にさらに開設するという様子も(少なくとも現時点では)見られません。従来の山林の様子を維持し、現地に個人の墓碑などを設けることを認めないといった「自然環境保持」のための方針が、利用者にとっては不満の種だったと言われています。

なお、A区域が2010年3月に満場になったという下の看板を見たのは、2011年末のことです。その後、2012年6月に満場を迎えたとのことですが、「常緑芝自然葬」が2012年7月にオープンして2015年2月には早くも満場を迎えたのに比べれば、満場までにかかった期間にはかなり違いがあるように見えます*1。また、納骨堂に比べれば、自然葬地の受け入れ人数は1ケタ下です*2

수목장림(2012. 6. 29일)과 늘푸른 잔디장(2015. 2. 1일)은 만장 되었으며, 하늘정원 잔디장과, 솔향기 정원식수목장을 2015. 2. 2일부터 운영 중에 있습니다.

http://www.insiseol.or.kr/institution_guidance/memory_park/natural_burials.asp

これを読めば、自然葬地の供給順序が一目瞭然ですね。

ともあれ、樹木葬林のそのような状況を受けて、人気が低迷した「自然葬」のテコ入れ策・利用促進策として、芝生葬地や新しい形態の樹木葬地が考案されるに至ったという事情は、以前にも書き留めたことがあります。ごくごく小さなものですが、新しい自然葬地では個人の墓石を認められるようになったのも、こうした背景があってのことです。

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ただその結果、韓国の「自然葬」は、本来的な意味での「自然」の姿からはむしろ遠く離れ、遺族の希望に沿う形での「快適な空間」化を追求するに至っています。自生する山林を生かすのではなく、人工的な造成地の上に、人間様の都合で芝生を植え、植林して作り上げられる、徹底して人工的な自然葬地。それが、韓国の葬墓文化が到達した「自然葬」の現地点だということになるのでしょう。

仁川家族公園の場合、旧来の巨大な「共同墓地」から新しい「墓地公園」へと生まれ変わろうとしてるわけですが、そこでいう「公園」は、「自然環境保護」よりは「都市型の快適な空間の創出」を志向するものになるはずです。

そんなわけで、仁川家族公園は今後、自然葬地を拡大していくことになるでしょう。他方で、この最初の自然葬地=樹木葬林は、他に比べてより「自然な」山林の姿を保っている分、細々と少しずつ埋葬者を受け入れながら*3、周囲に比べればゆっくりゆっくりと推移していくことになるような気がします。もしかしたら、いずれその価値が見直されることも、あるかもしれませんが。

このシリーズ、次でようやく最終回です。

*1:実際の受け入れ基数を見れば、樹木葬林が約2,800基、「常緑芝自然葬」が約1,700基といいますから、満場までのペースの差は見た目ほどではないようです。

*2:「追慕の家」が約19,000基、「錦馬塚」が約16,000基、「満月堂」が約30,000基、「平穏堂」が約36,000基とされています。

*3:一定の期限が来れば、満場した自然葬地も再び埋葬者を受け入れることができます。