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近鉄東花園駅車掌飛び降り事件:一般論を語る前にすべきことがある。

1か月半ほど前に東大阪で起きたこの事件について、改めて産経新聞朝日新聞などが記事にしています。ただこれらの記事、今になって出てきたわりには、肝心のところに触れていなくて、隔靴掻痒の感があります。

飛び降りた車掌さんには気の毒な事態が起きていたのだろうと個人的には推察しているのですけど、「その時そこで何が起きていたのか」という肝心要なことが明らかになっていない以上、判断のしようがないというのが正直なところです。近鉄としては、「自分とこの社員」と「お客様」とのトラブルですから、明らかな刑事事件ものの事案でもない限りはお客を責めるようなことは言えない立場なのかもしれません。だったら、事の真相を明らかにするのは当事者の利害を離れた第三者の役目のはずで、警察が動くような案件でないならここはジャーナリズムの出番なのではないのでしょうかね。

「事件の真相」は何か。この件で読者が最も知りたいと思っているのはそこでしょう。また、こうした事件の再発防止のためにも、事実関係の確認は欠かせないはずです。ですが、残念ながら、その点についてはネット情報の域を一歩も出てませんよね。ということは、同じようなことが繰り返される可能性に対して、有効な対処策がその記事の中にあるとも思えません。

「真相不明」のまま、社会の一般論に落とし込んで他でも読めそうなどうでもいい内容を並べることよりも、まずは当事者や現場への取材を地道に試みることの方が、報道の価値を高めると思うのですよ。近鉄も、当事者への事情の聞き取りはしてるでしょうから、「今後の鉄道トラブル防止」という大局的な見地に立って、そうした取材には協力してほしいなあ。

飛び降りた車掌に同情論 モンスター生むクレーム社会
広島敦史、仲村和代2016年11月10日18時33分

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男性車掌が飛び降りた近鉄東花園駅の高架線路=大阪府東大阪市、古庄暢撮影

 人身事故でダイヤが乱れた近鉄奈良線の駅で、乗客に対応していた車掌が突然、高架線路から飛び降りるという異例の事態があった。ネットでは車掌を擁護する声が盛り上がった。なぜなのか。

 大阪府東大阪市東花園駅近鉄秘書広報部によると、車掌の男性(26)が飛び降りたのは9月21日午前11時すぎのことだ。30分前に別の駅で人身事故が起き、ホームは多くの客で混乱していた。

 車掌は客に対応していたが、制服の上着や帽子を脱ぎ捨てて高架線路の柵から7メートル下に飛び降り、腰と胸の骨が折れる重傷を負った。当時何があったのか、近鉄は「本人の心理的負担を考慮し、公表は差し控えたい」としている。

 だがツイッターでは目撃者の情報として、車掌が乗客に取り囲まれて強い口調で責められ、10分ほどしたころに叫んで飛び降りたという情報が拡散。行きすぎたクレームがあったのではないかという見立てが広がり、「お客様は神様だから、パワハラを我慢しなければならないの?」「クレーマーから社員を守るのも企業の責任」と同情の声が次々に書き込まれた。

 ネット上では、車掌への寛大な処遇と心のケアを求める嘆願書への署名活動が始められ、賛同者は5万7千人を超えた。署名を呼びかけた千葉県浦安市の電気技師の男性(40)は「状況ははっきりわからないが、職場放棄というより、限界に達した末の出来事ではないか。お客様第一主義が行きすぎ、クレーマーがモンスター化している状況への警鐘になると思う」と話した。

 鉄道係員への過剰なクレームは以前から問題になっていた。暴力行為も高止まり。日本民営鉄道協会によると、大手私鉄16社の鉄道係員への暴力行為は、2001年度は81件だったが、08年度以降は200件を超える状況が続く。15年度は225件だった。

 鉄道業界だけではない。学校現場では「モンスターペアレント」の存在が問題となり、医療現場でも、院内暴力が深刻化している。

 「カレー専門店なのに、味がちっとも専門的でない」「後から来た客に先に料理が運ばれた」。クレームの問題に詳しい池内裕美・関西大教授が消費者に調査したところ、こんな理由で店員に激しく苦情を言った経験を挙げる人がいた。池内教授によると、クレームを受けることが多い仕事を「感情労働」と呼ぶことがある。肉体労働、頭脳労働に次ぐ概念で、フライトアテンダントや飲食業、介護・福祉職などが代表的だ。感情を押し殺して対応し、ストレスをため込んでしまう。

 「揚げ足を取るようなクレームの問題がメディアでも取り上げられるようになり、誰もが思いあたる節がある。それが今回の擁護の声につながっているのでは」

 感情労働を支えるには、従業員同士で語り合うなど、横のつながりで助けあうことが有効だが、「それだけでは足りない」と池内教授。日本では客を最優先にすることを当たり前ととらえる風潮が強い上、最近はSNSであおられる傾向があり、「クレーム社会」ぶりが過熱していると池内教授はみる。「消費者も謝罪を受け入れる寛容さや、『自分だったら』と想像する力が必要。過剰なサービスを再考する時期に来ている」

 飛び降りた車掌は退院し、通院治療中。寛大な処分を求める声が多く届いた近鉄は、「鉄道従事者は可能な限り安全優先に努めるのが義務で、制服を脱ぎ捨て線路に直行する行為は許されない。ただ、寄せられた声も考慮し、当時の状況などを聞いた上で、精神的なケアも含めて今後の対応を検討する」としている。(広島敦史、仲村和代)

http://digital.asahi.com/articles/ASJC97RMPJC9UTIL04R.html

2016.11.2 10:00
【衝撃事件の核心】何が追い詰めたのか? 職務放棄して高架から飛び降りた近鉄車掌、寛大処分求める署名運動も…

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車掌が飛び降りた高架。手前にある金属製門扉の内側に落下した=大阪府東大阪市

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車掌が飛び降りた高架。高さは手前のマンションの3階部分に相当する=大阪府東大阪市

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騒動が起こった近鉄東花園駅

 大阪府東大阪市近鉄奈良線東花園駅で9月、列車の遅延について乗客に対応中だったとされる男性車掌(26)が制服と制帽を脱ぎ捨て、高架駅のホームから線路に下りて移動した後、約7.5メートルの地面に飛び降りる騒動が起きた。車掌は多数の乗客に詰め寄られて激高したとの情報がある一方で、乗客から暴行を受けたとの情報もある。ネット上では車掌への寛大な処分を求める署名活動が展開されるなど騒動は広がっているが、真相は不明のままだ。

人身事故の影響で乗客に状況説明中に…

 騒動が起きたのは、9月21日午前11時ごろのことだった。

 東花園駅のホーム上で乗客への状況説明に当たっていたとされる車掌が突然、帽子と制服を脱いで線路上に投げ捨てた。その後、車掌自らも線路上に下りて走り出し、高架にぶら下がるような状態に。そして、約7.5メートル下の道路に落下した。府警や近鉄によると、車掌は胸や腰の骨などを折る重傷を負った。

 実は、この騒動が起きる約30分前に伏線があった。

 東花園駅から4駅離れた河内小阪駅東大阪市)で、線路内に立ち入った女性が神戸三宮駅行きの快速急行にはねられて死亡する人身事故が起きていた。この事故の影響で、大阪難波東花園駅間が一時列車の運行を見合わせた。

 車掌が乗務していた大阪難波駅行きの普通列車は、東花園駅で運行をとりやめることになり、車掌は同駅で乗客に降車を促し、乗客らに状況説明に当たっていたという。

 事故直後、近鉄は「お客さま対応中の車掌が、鉄道事業者として不適切な行為を引き起こしたことを大変遺憾に思う。お客さまにご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表した。

飛び交う“目撃情報”も詳細不明

 いったい、なぜ車掌は職務放棄したのか-。

 ネット上では、目撃者のものとみられる当時の状況を伝えるさまざまな情報が飛び交っている。

 「車掌が複数の乗客に囲まれ、罵声を浴びせられていた」「車掌が客に蹴られた」「線路に飛び降りる前、“もうこんな仕事やってられるか”と車掌が叫んだ」「高架につかまりながら、車掌は“もう嫌だ”と叫んでいた」……。

 当初、近鉄は「入院中の車掌とは話ができる状態ではなく、詳細はわからない」としていた。その後、けがから回復した車掌に対する調査は行ったとみられるが、その後は情報を出しておらず、詳しい状況などはわかっていない。

 その一方で、ネット上では、「乗客側の行き過ぎたクレームが原因ではないか」「近鉄は従業員をもっと大切にすべき」などと車掌に同情の声が挙がった。車掌に対して寛大な処分を近鉄に要望する署名活動が行われ、9月末には5万人を超える賛同者が集まり、約2万人分が近鉄に提出された。

駅員と乗客のトラブルは後絶たず…

 しかし、駅員と乗客のトラブルは後を絶たない。

 近鉄によると、平成23年から5年間で駅員が乗客から暴行を受けたケースは36件も発生している。日本鉄道協会の調べでも、平成27年度に大手私鉄やJR各社など33の鉄道会社で、駅や車内で乗務員や駅員らが被害に遭った暴力行為は792件にも上っている。

 大阪市内を中心に乗務する鉄道会社の20代の女性車掌は「暴力を受けた経験はないが、約1時間にわたってクレームを言い続けた乗客がいた」と打ち明ける。また、クレーム対応している乗客から「お前が男やったら顔面殴ってんぞ」と暴言を吐かれたこともあったという。

 近鉄では、こうした乗客とのトラブルに巻き込まれた場合、複数人で対応したり、身の危険を感じたときには大声で助けを求めたりするなどの指導をしている。鉄道各社もトラブルに巻き込まれた際の対処法についてのマニュアルなどが定められているが、実効性に乏しいのが現実だ。

 消費者のクレーム行動に詳しい関西大社会学部の池内裕美教授は「人を相手にする仕事は、明らかに不条理な苦情でも自分の気持ちを押し殺さなくてはならない。精神的苦痛も甚大なものになる」と指摘する。

 そのうえで、車掌の行動について「自身の耐性の限界を超えてしまった可能性がある。駅員の象徴でもある制服を脱ぎ捨てることで、当時の状況から解放されたかったのではないか」と分析している。

http://www.sankei.com/west/news/161102/wst1611020006-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/161102/wst1611020006-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/161102/wst1611020006-n3.html