韓国の大学と留学生

まあ正直、あんまり笑ってられないことですけど。
ただ、英語の授業がいっぱいあって英語に堪能なスタッフを揃えればグローバルな大学になれるのか、と言えば、そう単純な話ではないのが悩ましいところ。
だって、それならわざわざ東アジアになんか留学しなくても、さっさと欧米の大学に行けばいいだけの話ですから*1
外国人学生へのサポートを手厚くしながら、なおかつ「韓国で学ぶことの意味」を提示しうる態勢を構築する、というのは、こうして書くほどには単純でも簡単でもないことだと思います。

記事入力 : 2009/09/25 16:58:35
「グローバル大学」とは程遠い韓国の大学(上)
ソウル大外国人学生会前会長のセリムさんが語る

 グローバル化が進む中、大学にも国際競争力が求められている現在、どの学校も国際的に通用する「輸出用人材」を確保するため、海外の優秀な教授や学生を招くことに躍起になっている。しかし、留学生が実際に体験した韓国の大学は「グローバル大学」とは程遠いものだった。

 今月初めまで、ソウル大外国人学生会の会長を務めたトルコ出身のカサル・ヤウズ・セリムさん(24)=経済学部3年=は、「大学が留学生を韓国嫌いにさせているようで残念」と話した。

 セリムさんは、高校卒業後に3年間働いて貯金し、2007年にソウル大経済学部に留学した。セリムさんは「これまで助けてくれた大学関係者も多かったが、大学の国際競争力のために、また今後の留学生のためにも話したい」と経験談を打ち明けた。

−最も辛かったことは?

 「ソウル大で最も競争力があるのは入学管理本部(笑)。英語、日本語、中国語が堪能な職員が親切に案内や手続きをしてくれたため、“真のグローバル大学”だと思った。問題は入学後だった。外国人のための相談センターもなかった。勇気を出して一般の相談窓口に行くと、学生課に行くようにと言われ、そこに行くと英語ができる人は一人もいなかった。大学に外国人を連れてくることが重要なのではなく、彼らをどれだけ満足させるかが重要なのに、そういったマインドがほとんど見られなかった」

http://www.chosunonline.com/news/20090925000055

記事入力 : 2009/09/25 16:58:40
「グローバル大学」とは程遠い韓国の大学(下)
ソウル大外国人学生会前会長のセリムさんが語る

−英語の授業が少なくて困ったというが。

 「外交官になりたくて外交学科に入ろうとしたが、驚いたことに(当時は)英語の授業が一つもなかった。それで英語の授業がある経済学を専攻した。グローバル大学を強調し、世界100大大学を叫んでいるにしては英語の授業が少なすぎる」

−なぜ寄宿舎で生活をしないのか(セリムさんは友人3人と月45万ウォン〈約3万4000円〉の部屋で自炊している)。

 「食事の問題があるからだ。ソウル大には約150人のイスラム系留学生がいるが、寄宿舎や構内の食堂には、ハラールイスラム教徒が口にしてもよい食べ物)がない。われわれはラーメンも食べられない。東京大にはハラール食堂がある。ソウル大での3年間、パン以外に食べるものがなかった。学校にイスラム式の祈とう室を設けてほしいと要請したこともあるが、国立大のため宗教施設は作れないと言われた。国立大の韓国科学技術院(KAIST)にはあるのに…」

−ほかの学生の不満は?

 「韓国政府と大企業が毎年数百人の留学生を招き、学費と生活費を支援している。帰国後に韓国をPRしてほしいということだろうが、数年ほど滞在した学生らが集まると、韓国批判が始まる。これが残念だ。教職員の中には、年上だからといってぞんざいな言葉を使い、大声を上げて激怒する人もいる。“学生は客で教職員はサービスを提供する側だ”、という意識が薄い。助けを求めていったのに、逆に腹を立てたという経験が何度もある」

李仁烈(イ・インヨル)記者

http://www.chosunonline.com/news/20090925000056

記事入力 : 2009/09/25 17:00:26
【社説】留学生を「韓国嫌い」にさせている大学

 数日前、ソウル大学の「外国人学生会」会長を務めたトルコ出身の留学生、カサル・ヤウズ・セリム(経済学科3年)さんが本紙のインタビューで、「大学が留学生を韓国嫌いにさせている」と話した。セリムさんは、留学生が英語で相談できる機関がないこと、英語が話せる職員がいないことを指摘した。相談するために教職員を訪ねても、ぞんざいな言葉を使ったり、イライラした態度をされたという。セリムさんは外交学科に進学したかったが、当時英語での授業が1科目もなかったため経済学科に入った。ソウル大にはイスラム系の留学生が150人ほどいるが、寄宿舎や学生食堂にハラールイスラム教徒が口にしてよい食べ物)料理がないため、やむを得ずアパート暮らしをしているという。

 セリムさんの声は、ソウル大に通う40カ国1500人の留学生の不満を代弁しているといえる。ソウル大初の外国人専任教授でコンピューター学科のロバート・イアン・マッケイ教授は本紙のインタビューで、「こんな調子なら、外国人教授はソウル大に来なくなるだろう」と話した。研究費の申請から論文の投稿に至るまで、すべての手続きが韓国語で行われているという。

 「韓国の大学はグローバル化が遅れている」という話をよく耳にする。海外への留学生は21万人に上る一方、韓国を訪れる留学生は7万人程度だ。研究実績面では先進国の大学と大差はないが、大学の国際的な評価が常に低いのは、外国人教授と外国人学生があまりにも少ないからだ。最も大切なのは意思の疎通だ。グローバル知識競争の時代には外国の学問や技術を受け入れ、わが国の知識と技術を世界に広め、影響力を強めていかなければならない。そのためには、外国人教授や留学生がコミュニケーションの面で不便を感じることなく、研究と勉強に没頭できる環境が必要だ。

 外国人留学生の相当数は、卒業後に自国のエリートとなる人材だ。彼らを韓国の未来の人的資産にするためには、留学生のための効率的な言語習得コースを設け、英語による講義を大幅に増やし、韓国人学生が留学生をサポートする「バディ制度」を充実させなければならない。また留学生専用の寄宿舎を設け、留学生の管理をサポートする行政システムが必要だ。ソウル大は昨年、国際交流における協力業務を専門的に担当する国際機関を設置するため教育科学技術部(教育部)に相談したところ、「ほかの大学からの要請が相次いだら困る」と言われ、結局中止となった。大学が世界的な競争力を持つためには、教育部の官僚の意識を変えさせるか、いっそのこと大学を教育部から独立させなければならない。

http://www.chosunonline.com/news/20090925000057

*1:そうしたことに伴う弊害は、例えば延世大学校国際大学―英語で全講義を行なうことで知られる―をめぐって、しばしば聞かれるところでもある。