韓国芸能界の裏面―学業との天秤

朝鮮日報』の特集の中の一本。

これは、芸能界に限った話でもなく、程度の差はあれスポーツ界にもあるし、日本にもある話です。

ただ現時点で考えた場合、韓国の方が選択肢の選択のしかたが極端で徹底しているように感じます。実証的な裏付けがあるわけではありませんけど、学歴を追求する仕方も極端なら、一獲千金を夢見る見方も極端…。

いずれ揺り戻しは来るでしょうが、極端と極端の間に開いたクレバスに落ち込んてしまった人にも、軌道修正の機会があってしかるべきだと思います。

記事入力 : 2010/05/30 11:10:59
学業は歌手デビューへ障害!?(上) 【特集】アイドル夢見るレッスン生の実態
「勉強は成功の邪魔」「会社員よりスター」一攫千金を夢見て…
遅刻・早退・欠席が多く、学校では「お客さん」扱い
「卒業証書はもらったけど、勉強はしていない」

 「研修生としての生活を始めてから1年生まで通った高校を中退しました。芸能人として絶対成功したいので。マネージャーも『本当に頂点に立ちたかったら学校を辞めるのも一つの方法だ』と言いました。しかし、そうしているうちにプロダクションと上手くいかなくなり追い出され、別のプロダクションに研修生として入りましたが、今は所属がない状態で途方に暮れています。友達もいないし、芸能人になれるという保証もありません。だからといって学校に戻るにも遅すぎる気がします」。未だアイドル歌手になることを夢見る、カン君(19)は、このように話すと頭を抱えた。

 彼は「時間を見つけてはダンスと歌の練習をしながら、高卒検定考試(日本の高等学校卒業程度認定試験に相当)の準備をしている。しかし、20歳になってもプロダクションに入れなかったら、先に軍隊に行かなくてはならないだろう」と話した。

 彼の隣りにいた研修生のパク君(19)は、「それでも僕はなんとか高校の卒業証書をもらったけど、授業をまともに受けたことはほとんどない」と苦笑いした。「僕も勉強にあまり興味はなかったけど、プロダクション側は、僕が学業に目を向けることを極端に警戒していました。以前、中間試験の勉強をしなくてはならないので、練習時間に試験勉強を少しだけしたいと言ったら、2時間もの間、レッスン室で頭を床につける罰を受けたこともあります。勉強は少しもできませんでした」


ソウル・長旨洞の翰林芸能芸術高等学校で、学生たちがダンスのレッスンを受けている。ここでは、芸能人を目指す生徒たちも正規の授業に参加できるようカリキュラムが組まれている。/写真=李泰景(イ・テギョン)記者

■自ら背水の陣を敷く研修生たち

 歌手になって世の中の注目を浴びたいと日々レッスンに励んでいる研修生にとって、学校や勉強は面倒で意味のないものに思える。プロダクションがこの状況をさらにあおっている。問題は、彼らが社会の一構成員として当然受けるべき正規の教育課程を軽視する中で、誤った教養や社会性を身につける可能性が高いということだ。彼らのうち一部は、大衆に大きな影響力を持つ「大スター」になる可能性があるため、状況はさらに深刻だ。研修生のヒョン君(16)は、「学校で生徒会長をやってみたかったが、プロダクション側から学校生活に集中すると歌手になるのは難しい、と言われ諦めた。大学にも行きたいけど、プロダクションが反対するのではないかと心配だ」と話した。

http://www.chosunonline.com/news/20100530000018

記事入力 : 2010/05/30 11:11:03
学業は歌手デビューへ障害!?(中) 【特集】アイドル夢見るレッスン生の実態

 研修生自ら「人生において他の選択の余地を残さないため、学校生活を諦める方がいい」と判断する場合も多い。一種の「一攫千金主義」が蔓延しているといえる。ノ君(16)は、「他の友達のように学校に通って勉強を一生懸命やったとしても、平凡な会社員以外に何になれる? 歌手になれなければ、一家の家長として家族を養うのに精いっぱいで、自分の人生をまともに生きられない気がする」と話した。

 パク君(18)は、「研修生の中で勉強して大学に行こうと思っている人を見たことがない」と言う。大学に在学中の研修生キムさん(23)は、「私は芸能界で成功できなくても、大学を卒業すればどこにでも就職できると考えている。そのせいか、他の研修生たちよりも追い込まれていない気がする」と話した。研修生のうち大部分は、デビューを前後して学校を中退する。2NE1のコン・ミンジ、BIGBANGのスンリ、ワンダーガールズのソヒなど、人気アイドルグループのメンバーらが代表的な例だ。

■学校もプロダクションも研修生たちの勉強には無関心

 プロダクションの研修生のうち、大部分は学期が始まると午前中だけ学校に行き、4時間程度授業を受ける。その後、お昼頃にはレッスン室に直行し、真夜中を過ぎるころまでダンスや歌の練習、各種トレーニングに励むという生活を繰り返す。プロダクションが協力を要請する文書を学校側に送ると、学校側は「公欠」「現地学習」などとして、研修生の欠席や早退を容認する。つまり学校では彼らは「お客さん」のような待遇で、一種の「いじめ」に近い扱いだ。

 パク君(19)は「髪の毛が長いという理由で、先生に『この際もう学校に来るな』と言われ頬を殴られたこともある。共通の話題がないため、学校には友達もいない」と話した。高校時代、同じクラスにプロダクションの研修生がいたというペさん(20)は、「研修生の子たちが学校に来ると、まるでいないかのように無視した。先生たちが、学校に出てこない研修生の子たちに目をつぶって特別扱いしているような雰囲気も嫌だった」と話した。

 しかし、成人してから振り返ると、寂しく幕を閉じた学生時代を後悔する研修生も多い。ハンさん(25)は「プロダクションがやれということ以外は、3年間何もしなかった。徹底して言われるがままに生きてきた」とため息をついた。チョンさん(22)は、「高校時代に楽しむべき全てのことを諦めて歌手になる夢だけを追いかけてきたが、今残っているのはプロダクションからの違約金の督促状だけ。修学旅行に行った思い出も、模擬試験を受けたこともない、みじめな高校時代だった」と話した。

http://www.chosunonline.com/news/20100530000019

記事入力 : 2010/05/30 11:11:07
学業は歌手デビューへ障害!?(下) 【特集】アイドル夢見るレッスン生の実態
■ようやく代案を模索し始めた業界

 このような状況の中、正規の高校課程に芸能人を養成する訓練コースを取り入れた学校が登場し、代案としての可能性を評価されている。ソウル・長旨洞の翰林芸能芸術高等学校は、生徒たちに人文系高等学校と同じ正規の授業を行い、その合間に実技を教えている。この学校のキム・ジヨン戦略企画室長は、「若いうちから学校を離れて研修生として生活を始め、デビューを果たす芸能人の場合、組織や社会に対する考え方がきちんと形成されていない場合がある。芸能人を健全な社会人として育てるためには、学生時代に正規の授業を消化させる義務がある」と話す。

 専門家らは「正常な成長過程を経験できなかった芸能研修生が、将来どんな不安や苦痛を味わうのか心配だ」と話す。延世大学心理学科のファン・サンミン教授は、「同じ年ごろの集団と離れた状態で正規の教育をまともに受けられない場合、大人になってから自分のアイデンティティについて常に悩み、心理的な不安感も高くなる傾向がある。常にスターとしてもてはやされるのならともかく、人気が低迷した場合、極端な挫折感を味わい予期しない行動に走る可能性もある」と話す。

 建国大学教育工学科のオ・ソンサム教授は「人はどんな立場にあろうと、社会の中で自分の役割を果たすために学んでおくべきことがあるのに、芸能研修生はそれらを全て投げ捨てているようだ。このように技能だけを身につける方法では、仮に芸能界で成功したとしても、その寿命は長くないだろう」と話している。


チェ・スンヒョン記者

http://www.chosunonline.com/news/20100530000020


追記:なお、原文記事(3回シリーズ)はこちら。

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