ソウル一極集中と地方大と経済界

ソウルへの極端な一極集中を問題視し、それを政治的に解決しようとした政治家としては、盧武鉉の名前がまず挙がるだろう。現在の「世宗市問題」は、盧武鉉が情熱を傾けた首都機能移転計画の「なれの果て」とも言える。

大学もまた、そうした風潮の例外ではない。地方大はソウルにキャンパスを持てば人気が上がり、首都圏の大学が地方にキャンパスを移転させても、学生は何故かソウル市内に住み、そこから京畿道や忠清道江原道のキャンパスへ通ったりする。

一方で、ソウル一極集中は、経済界でも深刻な問題となっている。水原や平沢程度の「地方」にも行きたがらない人間ばかりでは、そらー企業もやってられないわけで。


で、そんなこんなで、こんなことになってくるわけですね。POSCOと浦項工科大学校三星グループと成均館大学校の関係は有名ですが、地方国立大学*1を巻き込んで、事態はさらに進んでいるようです。

記事入力 : 2010/07/23 14:00:59
韓国の大企業、地方大で人材を続々育成(上)

 サムスン電子は15日、慶北大学にモバイル工学科を設立することで同大と合意した。スマートフォンなど携帯電話分野を専攻する人材確保のため、30人を定員とする学科を新設し、来年度からの入学生たちを対象に、4年間授業料を免除する奨学金インターンの機会提供、サムスン電子への就職といった優遇措置を与える。

 サムスン電子やLG電子サムスン電気など大手企業が、地方の人材を確保するために力を入れている。これらの企業は、慶北大や釜山大、全南大など各地を代表する大学に専攻課程を別途で設置し、企業の即戦力となる人材を育成する一方、授業料の全額免除や奨学金支援、就職保障といった破格の条件を与えている。

■首都圏出身者の地方勤務敬遠が一因

 大企業が地方大学との協力関係を拡大するのは、優秀な理工系人材を確保するためだ。しかしこれには、新世代の若者が地方勤務を嫌うという事情がある。サムスン電子やLG電子など大企業の工場はほとんどが水原や亀尾、平沢、昌原など地方に位置しているが、首都圏出身の新世代たちは現場勤務を嫌うのはもちろん、ソウルを離れ地方で勤務することを極端に敬遠する。サムスン電子が水原工場を「デジタルシティー」に、液晶ディスプレー(LCD事業部のある湯井工場を「ディスプレーシティー」と改名し、まるで公園のように整備したのも、こうした事情があるからだ。

http://www.chosunonline.com/news/20100723000050

記事入力 : 2010/07/23 14:01:36
韓国の大企業、地方大で人材を続々育成(下)

 そこで大企業は、主要な作業場周辺にある有名大学を中心に人材確保に取り組んでいる。例えばサムスン電子は、携帯電話を生産する亀尾工場近くの慶北大にモバイル学科を設置し、釜山に工場があるサムスン電気は釜山大に関連学科を設置するといった具合だ。LG電子も昌原工場から程近い釜山大にさまざまな支援を行っているほか、総合部品企業のLGイノテックも、光州工場から近い全南大に「LGイノテック専攻トラック」という過程を設置した大企業のある人事担当役員は、「ソウルの有名大学を卒業して、地方勤務を命じられた場合、1年以内に会社を辞めるケースが多い。だが、該当地域出身者の平均勤続年数は10−12年と、地方勤務に対する満足度が高い」と説明した。

■大学と企業が共に満足

 大企業は、地方大学との協力関係を構築し、奨学金支給や就職保障などの支援を行う。サムスン電気も今年2学期から、釜山大大学院の修士課程に「次世代電子基板回路学科」を新設し、入学生全員に学費や補助金を支給するほか、サムスン電気への入社を保障する。LGイノテックも2004年からこれまで、全南大の「LGイノテック専攻トラック」を卒業した55人を採用し、光州工場と安山素材部品研究所などに配置した。

 LGイノテックの関係者は、「産学協力に対する内部評価が好評なため、全南大の課程を2014年まで延長し、大田の韓国科学技術院(KAIST)にも協力課程を新たに設置した」と話した。

 産学課程を経た新入社員に対する評価が高いのは、実務中心教育のおかげだ。大邱にある永進専門大学の電子情報通信系列(学部)の場合、ハイニックス班の学生らは1学期の間、利川のハイニックス半導体の生産ラインに勤務し、現場での実務に携わる。また理論教育も、教授がハイニックス半導体の工場に直接出向き講義を行うという授業形態を取っている。

趙亨来(チョ・ヒョンレ)記者
チャン・ウジョン朝鮮経済i記者

http://www.chosunonline.com/news/20100723000051

経済界は経済界の思惑があってのことですが、政治がなかなか成果を見せられない分野で、一歩先を行っているとは言えそうです。

*1:下記の記事に出てくる慶北大・釜山大・全南大は、各地方の拠点となる国立大学です。