死よりも先に無縁化が来る社会

今日はいつにも増してクリップだらけですが、こちらの記事も見逃せません。

記者自身も書いているように、誰もが例の「無縁社会」を連想せずにはいられないこの記事。

無縁社会

無縁社会

生者の生活の都市化・高層化が韓国の「葬墓文化」に激変を招いたように、この事態もまた、死者の領域にいずれ影響を及ぼすことは間違いないでしょう。「死んでからの無縁化を問題にしているようでは遅い」という時代が、もうすでにやって来ているのかも知れません。

天安市の共同墓地、無縁故のお墓が20%以上

記事入力 : 2011/02/04 10:59:12
忍び寄る「孤独死」、今では青壮年層も(上)

一人暮らしをする人が全体の24%
失業が貧困を生み、貧困は孤独を生む

 先月4日午後6時ごろ、京畿道水原市にある考試院(受験生向けの貸し部屋)で、住人のイさん(32)がベッドにうつ伏せになったまま死んでいるのを考試院の管理人が発見し、警察に通報した。警察の関係者は「すでに死体の硬直が進んでいたのを見ると、死後数日が経っていると思われる」と話した。死亡したイさんは江原道出身で、3年前からこの考試院で暮らしていた。

 家電メーカーに勤務していたイさんが暮らしていた約5平方メートルの小さな部屋には、シングルベッドとテレビだけが置かれ、シャワーとトイレは共同だった。この考試院は家賃が月20万ウォン(約1万4600円)で、全部で23世帯が暮らしている。イさんはほかの部屋の入居者と同じく、人々との交流はなかった。考試院の管理人のイさん(56)は「ここ3年間、家族にせよ友だちにせよ、イさんを訪ねてくる人を見たことがない。考試院で暮らす人々は台所を共同で利用しているが、一緒にご飯を作って食べるようなこともほとんどない」と語った。

 ソウル市内の新村駅近くにある考試院で一人暮らしをするチェさん(29)に会った。ソウル市内の大学に入学したのをきっかけに、故郷の全羅北道全州市を離れ、考試院での生活を始めた。大学卒業後に兵役を終え、その後4年間にわたって行政考試(日本の国家公務員第1種試験に相当)の勉強に励んでいたが、昨年あきらめてしまった。考試院での生活は今年で10年目だ。チェさんは中学生を教える家庭教師したり、夕方には飲み屋でアルバイトをしながら月に約100万ウォン(約7万3000円)を稼いでいる。部屋の大きさは5平方メートルほどで、トイレとシャワーはやはり共同だ。チェさんは「朝、隣の部屋のアラームの音で目覚める。隣の部屋でどんなテレビを見ているのかも分かる」としながらも、「隣の住人の名前や仕事も知らないし、あいさつしたこともない」と、寂しそうに語った。また「一人暮らしをする寂しさから、自殺を考えたこともある」と悲しい胸中を打ち明けた。

http://www.chosunonline.com/news/20110204000020

記事入力 : 2011/02/04 11:00:09
忍び寄る「孤独死」、今では青壮年層も(中)

■韓国も「孤独死」の時代に突入か

 日本では年間73万2000人が誰にも知られることなく死を迎えている。こうした死を「孤独死」と呼ぶが、主に高齢者がひっそり孤独死するケースが多い。韓国でも、高齢者が誰も知らない間に死亡していたというニュースをよく耳にする。そして最近では、青壮年層の失業や一人暮らしの急増で、韓国の青壮年層の孤独死が増えている。

 統計庁は昨年12月28日、「2010年人口住宅総調査」と題する調査結果を発表した。2000年の調査では222万4000世帯にすぎなかった一人暮らしの割合は、05年には317万1000世帯、10年には403万9000世帯にまで増えたことが分かった。全世帯のうち一人暮らしの占める割合は23.7%。4世帯に1世帯が一人暮らしをしている計算だ。09年末に統計庁は、2030年には一人暮らしをする割合が23.7%にまで上昇するとの見通しを示したが、政府の予想よりも20年早く一人暮らしをする世帯が増えたというわけだ。

 一人暮らしをする人が増えている状況は、韓国に限ったことではない。米国や欧州では、1990年代にすでに一人暮らしをする人の割合が全体の20%を超えた。しかし、これらの国では、成人すると共に親から独立する風潮がある。こうした先進国の状況とは異なり、韓国では仕方なく一人暮らしをする人が増えている、というのが問題なのだ。一人暮らしの構造的特徴について研究した現代経済研究院のチョ・ホジョン研究員は「一人暮らしについては肯定的な側面もあるが、社会の変化が著しい韓国社会では、むしろ否定的な側面の方が大きい」とした上で、「一人暮らしの場合、日雇いや単純労働の占める割合が高く、韓国全体の平均と比べると所得が極端に低い傾向にある。その格差は拡大しており、貧困化が進んでいる」と指摘した。

 自営業(八百屋)を営んでいたチャンさん(46)は、3年前からソウル市鍾路区敦義洞にチョッパン(狭くて古いワンルーム)を借りて暮らしている。チョンさんは、生活保護として毎月42万ウォン(約3万円)を受け取っている以外に、これといった収入がない。肝硬変と糖尿病を患い仕事ができなくなってからは、一日中テレビを見ながら毎日を過ごしている。チョンさんは「家族とはしばらく連絡を取っておらず、周囲には付き合いをする友人もいない。知っている人は誰もいない」と、寂しげに語った。

 一人暮らしをする人が増えている中で、さらに深刻なのは、一人暮らしをする年齢層が60代以上の高齢者だけではなく、20−50代の青壮年層にまで拡大しているということだ。現代経済研究院の調査によると、一人暮らしをする人の割合は40−50代が29.9%、20−30代が23%を占める。チョ・ホジョン研究員は「就職できなければ友人との縁も薄くなり、結婚もますます遠のいてしまう。こうなると、すべてのことが面倒臭くなって一人で暮らす方がましだと考えるようになり、個人主義がさらに深まっていく」と説明した。

http://www.chosunonline.com/news/20110204000021

記事入力 : 2011/02/04 11:00:47
忍び寄る「孤独死」、今では青壮年層も(下)

■寂しさを感じるも交友関係は持たず

 ソウル市竜山区東子洞にある考試院で暮らすソさん(49)は、20年間働いてきた靴工場が中国に移転することになり、失業者となった。考試院で一人暮らしを始めて8年が過ぎたソさんは、生活保護として毎月42万ウォンを受け取り、このうち18万ウォン(約1万3000円)を考試院の家賃に当てている。3階建ての3階にあるソさんの部屋(約5平方メートル)には窓がなく、便器だけが設置されたトイレを10世帯が共同で使用する。ソさんは「両親は亡くなり、弟が二人いるが、正月やお盆に連絡を取る程度」と話した。ソさんが暮らす考試院の3階には10世帯が住んでいるが、ソさんは「隣に住んでいる人がどんな人かも分からない。隣で人が死んでも一切分からない」と語った。

 一人暮らしをする人々は、貧しさに加え、寂しさと孤独感を味わっている。一人暮らしの代表的な住居形態である考試院とチョッパンは、小さな部屋が隣り合わせでいくつも並んでいる。人口密度は非常に高いものの、隣の住人とあいさつをしたり、個人的な会話を交わすことはめったにない。日本のNHKは昨年、「血縁や地縁などの伝統的な関係が絶たれた日本は、個人がこれ以上、他人と縁を結ばないという無縁社会へと変化しつつある」といった内容の番組を放送した。

 15年にわたって東子洞で考試院を経営しているファンさん(80)は「昔は主にお年寄りたちがチョッパンや考試院で暮らしていたが、最近では30−40代の若者の利用者が増えた」と話す。また「昨年の夏、部屋から異臭がしたためドアをこじ開けて中に入ってみると、死体が腐っていた。独身生活をする人が多いこの町では、死後しばらく経ってから発見されるケースが少なくない」と話した。

 こうした現代社会の傾向について、専門家たちは、一人暮らしの急増を現実問題として受け止め、しっかりとした対策を立てていくべきだ、と指摘する。西江大学社会学部の田尚鎮(チョン・サンジン)教授は「一人暮らしの急増に伴う自殺や犯罪などの副作用を、共同体の規範を正すことで乗り越えようとするのは、理想主義的なアプローチにすぎない」とし、「現代社会における一人暮らしは、今では一つの生活方式であると共にトレンドともいえる。こうした点を見据え、しっかりと考えていくべきだ」と指摘した。なお、韓国にはいまだ「孤独死」に対する統計は存在しない。

ソク・ナムジュン記者
ノ・ジノ記者(インターン、釜山大学新聞放送学科4年)

http://www.chosunonline.com/news/20110204000022