「イカ京」=「いかにも京大生(くれぐれも誉め言葉と思わないこと)」
紙面ではちょっと前に見かけましたが、ネット掲載が遅れるのはasahi.comでは標準仕様です。
つい知り合いを思い出してしまうこの写真。かつてならいざ知らず、さすがに今どきの京大生にはなかなかいないでしょう。
【イカ京】いかにも 今は いかに
2011年7月7日
ズボンに入れたチェックのシャツにリュックサック、黒縁めがね……京大生協の機関誌「らいふすてーじ」編集部の学生に「イカ京」のイメージを表現してもらった=京都市左京区、中里友紀撮影
絵・グレゴリ青山13年前に京大を卒業した記者は気になっていた。それは「イカ京」が絶滅の危機にあるとのうわさだ。万城目学(まきめ・まなぶ)さんの小説『鴨川ホルモー』にも登場する彼ら。〈ズボンの内側にしっかりしまいこまれたシャツ。ジーンズなのに、おっさんのような黒の革ベルト〉。そう、イカ京とは「いかにも京大生」の略なのだ。
学生時代、イカ京を見つけるのが得意な女友達がいた。「ジーンズが(色落ちした)ケミカルウオッシュ。ここは絶対外せない」。ただしこの言葉、むしろ他大学の人が使っていた。「昨日の合コンどうやった?」「あかん、みんなイカ京やった」という具合だ。
さて現役のイカ京はいずこに。改修しておしゃれになった時計台周辺で聞き込みだ。ピンク色のシャツが似合う経済学部の男子学生は「今はカッコイイやつ、多いですよ」。女子学生グループは「そんな典型的なファッションの人、見たことがありません」。出没率が高いと教えてもらった理学部や文学部付近も探したが、「あなた様はもしや……」と声をかけたい人に出会えなかった。
ただ収穫はあった。イカ京の象徴として複数の人がチェック柄のシャツを挙げた。京大生協で売られ、「京大シャツ」と呼ばれていたらしい。1983年から約6年、生協購買部で衣料品担当だった元職員によると、当時はワゴン置きしていたチェックのほか、ストライプや無地のシャツもよく売れた。男子学生はシャツのすそをジーンズやチノパンに入れ、ベルトをするのが定番だった。
「寝間着姿のような、電車に乗れなさそうな格好の学生も珍しくなかった」。85年入学で、京大生協北部購買部店長の松下貴彦さん(45)は振り返る。自身も立命館大の女子学生から「何でそんな格好してるの?」と言われ、「普段着なのに」と驚いたことがある。他人の視線に無頓着なつわものたちは、バブル期を境にスカート姿の女子学生が増えるに伴い、姿を消していったという。
一方、国際日本文化研究センター教授の井上章一さん(56)によると、イカ京という言葉を耳にするようになった80年代中ごろ、それは外見上のことではなく、「場の空気を乱し、浮き上がる京大生の振る舞いを指す言葉だった」というのだ。
そう、記者も思い出した。かつてわが文学部女子と理学部男子が合コンをした時のこと。隣の男子2人が話しかけてきた。「サイン……コサイン……」。それは数学の公式。戸惑う私に、笑顔の2人。彼らこそ真のイカ京だったのではないか。
イカ京は減った。だが一見ありふれたいでたちの「隠れイカ京」はまだいるはず。みなさん、彼らを優しく見守ってほしい。なぜならあの時のサインコサイン君、きっと周囲に流されずに己の道を突き進み、いまごろ数学史に残る大発見をしているだろうから。(十河朋子)
関連用語 イカ京と似た意味の言葉に、「ナル阪(はん)(なるほど阪大生)」がある。一方、イカ京に代わり、最近は「イケ京(いけてる京大生)」が勢力を増しつつある。
■推薦
京大そばの名物食堂「ハイライト」社長・辻井克美さん(62)
お行儀よい学生に20、30年前の京大生はよく食べました。大ライスの丼はいまより一回り大きくて2合弱あったけど、おかわりする人がごろごろいた。一方で4人掛けテーブルに3人が座っている所へ、何も言わず勝手に相席する。あまり周りを気にかけないというか、お構いなしという感じでした。いまはテーブル置きの漬物やソースの減りも遅いし、お行儀もよくなって、まあ一般の学生さんだなあと思いますね。
http://www.asahi.com/kansai/travel/kansaiisan/OSK201107070031.html
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