一連の人種差別騒動

…に私が見たのは、「日本以上に政治的であると同時に、倫理的である」という韓国社会の変わらぬ姿です。

こういう露骨な外国人嫌悪は世界の至るところに見出せるわけですが、それに対するこうした正論を大上段からぶてる人は、日本では相対的に少ない(少なくなっている)ような気がします。どちらかと言えば、もてはやされるのは、露悪的とも言えるようなむき出しの本音…。

記事入力 : 2012/04/17 10:57
韓国人の二面性

韓国系米国人には拍手、韓国に帰化した移住者には嫌悪感


▲世界銀行の次期総裁に指名されたジム・ヨン・キム氏

 米国のオバマ大統領は先月23日、韓国系のジム・ヨン・キム(韓国名キム・ ヨン)米ダートマス大学長を世界銀行の次期総裁に指名した。

 オバマ大統領によるキム学長指名は、米国はもちろん、韓国でも高い評価を受けた。キム氏は5歳のとき米国に渡り、米国市民権を保有する韓国系米国人だが、私たちは韓国国民が指名されたかのように喜び、祝いの言葉を送った。米国社会も「移民1.5世代」のキム氏がアジア系で初めてアイビーリーグ(米東部の名門私立8大学)大学の学長に就任したのに続き、世界銀行トップに指名されたことを祝った。医師のキム氏が世界銀行の開発業務をきちんと遂行できるのかという指摘が一部であったものの、オバマ大統領がアジア系を推薦したことについては、全く論争が起きなかった。

 今、韓国ではこれと正反対のことが起こっている。結婚で韓国に移住し、今月11日の国会議員総選挙で与党セヌリ党比例代表で当選したイ・ジャスミン氏は選挙後、インターネット上で非難にさらされている。ツイッター(簡易投稿サイト)などでは、ユーザーたちが今月初めに起きた中国朝鮮族による20代女性殺害事件を取り上げながら、イ氏を指し「韓国のものを巻き上げる多文化の実体が明らかになった」「これから売買婚が増えるだろう」といったツイートを掲載し続けている。イ氏は総選挙で公約を全く掲げていなかったが、ネット上では同氏が移住者に大きな恩恵を約束したとのデマが広がっている。

 イ氏は韓国人男性と結婚し、1998年に合法的に住民登録証を取得した。夫が2010年に死亡した後も、移住女性のための団体で事務総長を務め、ソウル市の公務員としても働いた。映画『ワンドゥギ』にも出演し、移住女性への関心を訴えた。こうした経歴のイ氏が国会議員になる資格を持っているのかと問うことは、検証の過程ではあり得るかもしれない。だが、最近ネット上で噴出している同氏への非難は、韓国国籍を取得した移住者に対する嫌悪感の表れにほかならない。

 イ氏はれっきとした韓国の国民で、結婚により移り住んだ約20万人の移住者を代表して国会で活動する人だ。米国に移住した韓国系の活躍には拍手を送る一方で、韓国国籍を取得した移住者に対しては「外国人嫌悪」に近い偏見を露骨に示すというのは、世界トップ10に入る貿易大国としてあるまじき恥ずべきことだ。だが今、そんなことがこの国で起こっている。

李河遠(イ・ハウォン)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/17/2012041701000.html

記事入力 : 2012/04/17 10:58
比出身の当選国会議員にネット攻撃

移住女性に怒りと不安

 今月11日に行われた韓国の国会議員総選挙で与党セヌリ党から比例区で当選を果たしたフィリピン出身の移住女性、イ・ジャスミン氏(35・ソウル市職員)に対し、インターネット上で「不法滞在がはびこり、花嫁売買が増える」といった攻撃が相次ぎ、韓国に結婚のため移住した女性たちが怒りと不安を覚えている。

 移住女性たちは、イ氏の当選をきっかけとして、韓国社会で外国人に対する嫌悪感が高まれば、自分たちが攻撃の対象になりかねないと恐れている。本紙の取材に対し、移住女性の大半は実名を公表することをためらった。イ氏がネット上で攻撃されたように、自分たちも攻撃の対象になるのではないかと不安を募らせている。今回の「イ・ジャスミン事件」は、20万人に達する結婚移住女性を追い詰める社会問題へと発展した。



 ソウルの結婚移民女性センターで相談員を務めるベトナム出身の女性Aさんは「セヌリ党もイ氏が移住女性を代表して活動してくれると信じ、比例区に出馬させたはずだが、(韓国の一部ネットユーザーは)なぜ議員活動を始める前から悪口を言うのか」と嘆いた。そして、Aさんは「韓国人も米国で重要なポストを担い、米国ではその人物の能力が認められていることを知っている。それなのに、なぜ韓国人は(イ氏に)ただ反対するばかりなのか。こんな記事が出れば、私も攻撃されそうだ」と続けた。

 韓国に移住して今年で9年目を迎えるモンゴル出身のBさん(35)は「イ氏に対する中傷的なコメントを読んで、心が痛んだ。韓国人はいけない。(イ氏のことを)よく知らないのになぜ暴言を吐くのか」と話した上で「なぜイ氏が国会議員に出馬したのか」「イ氏がどれだけ苦労しているか」にまず関心を向けるべきだと主張した。

 国際結婚家庭の交流団体「アルムダウ」で会長を務める台湾出身のファン・ウィスンさん(36)は「イ氏がどれだけ悲しんでいるかは、移住女性の皆が感じているはずだ」と残念がった。2002年に韓国人男性と結婚し、3人の子どもを持つファンさんは、アルムダウの会長として活発に活動し、テレビにもしばしば出演するようになった。すると、ファンさんに対して「旦那は弁護士らしい」「体を売りに来た」「血税を食う国際結婚家庭」といった攻撃が相次いだ。ファンさんは「韓国社会が多文化社会に向かうことに反対するサイトにそのような書き込みがあった。このところ『多文化』という言葉はよく使われるが、文化は成熟していないようだ」と話した。

 慶尚南道のある中小都市に住むベトナム出身のCさんは「イ氏が移住女性を代表する国会議員となり、とてもうれしかったが、韓国人の反応にとても驚き、戸惑った。最近はどこへ行っても『多文化』という言葉を耳にするが、移民女性が国会議員になったことをそんなにも嫌い、中傷するとは思わなかった」と話した。

 結婚12年目のモンゴル出身の女性、Jさんは「イ氏に対する攻撃が強まっているが、同じ移民女性であるわれわれが守ってあげられる方法もなく、残念だ。今回の事態を見て、われわれは社会的にもっと熱心に活動し、多くのポストを担うべきだと感じた」と語った。

キム・ヨンジュ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/17/2012041701002.html

記事入力 : 2012/04/17 11:02
「残酷な人種差別攻撃は世界の恥」

「多文化人材は韓国の重要な人的資源」
多文化家族支援センター長、オ・ユンジャ慶煕大学教授


オ・ユンジャ教授

 「国会議員当選者のイ・ジャスミン氏に対する人種差別攻撃は非道な行為。国際的にも恥だ」

 2006年からソウル市東大門区の多文化家族(国際結婚家族)支援センター長を務めている慶煕大学オ・ユンジャ児童家族学科教授(写真)は、韓国に移住した外国出身者で初の国会議員当選者となったイ・ジャスミン氏に対する「ゼノフォビア(Xenophobia=外国人嫌悪症)」が警戒すべきレベルを超えていると警鐘を鳴らした。「東南アジア諸国出身というだけで同氏を排斥し、人身攻撃的な非難を浴びせるのは、グローバル化時代に逆行するもので恥ずべき為だ」と指摘している。

 オ・ユンジャ教授は「フィリピン出身で、既に韓国籍を取得しているイ・ジャスミン氏が比例代表に選出されたのは、多文化というバックグラウンドを持つ人物も韓国の人的資源構成において重要な軸だという象徴的な意味合いが大きい」と述べた上で「イ・ジャスミン氏が議員として活動する前から一方的に非難され、萎縮しているのは非常に懸念すべきこと」と指摘した。さらに「イ・ジャスミン氏が11日の国会議員総選挙で比例代表により当選し、国会に進出することについては、今後同氏の議員活動を見守り、客観性・公正性を持って評価すればいいことで、議員として活動する前に同氏が偏狭な政党政治の犠牲になるとしたら、それは韓国の国際的なイメージにも悪影響を与える」とオ教授は述べた。

 また「外国出身者という特殊性と、韓国国民の1人であるという普遍性を受け入れられない社会は、真の先進文化国にはなれない。少数でも多数でも、その社会の構成員の多様なニーズを反映し、彼らの権利を認めてこそ正当な民主社会であり、それが国際社会の基本倫理」とも主張した。

 その上で「イ・ジャスミン氏に対する非難は、一部にある外国人嫌悪の極端な例だが、その一方で多文化家庭や国際結婚に対し韓国社会が持つ偏見がそのまま反映されたものだ」とし「認識の転換が急務」と指摘した。すでに結婚により韓国に移住した外国出身者が20万人を超え、その子どもたちが15万人に達する中で、多文化は選択肢ではなく必須だというわけだ。

 オ教授は最後に「少子・高齢化時代、韓国社会の産業人材や結婚難を外国人の受け入れなしに解決できるだろうか。貿易国である韓国で起きているこうした実態を、国際社会がどのように見るのかも、冷静に考えて受け止めなければならない」と語った。

李智恵(イ・ジヘ)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/17/2012041701007.html

記事入力 : 2012/04/18 12:32
【社説】進歩政党はイ・ジャスミン氏への中傷を傍観するのか

 11日の国会議員総選挙で与党セヌリ党比例代表で当選したイ・ジャスミン氏に対する誹謗(ひぼう)中傷が、インターネット上で続いている。イ氏はフィリピン出身で、韓国人男性と結婚して韓国国籍を取得したが、ツイッター(簡易投稿サイト)などでは「不法滞在者が幅を利かせている」「売買婚家庭のために私たちの血税が食いつぶされる」といった低質な悪口に加え、「イ氏が移住者に大きな恩恵を約束した」とのデマまでもが飛び交っている。ネットユーザーたちが匿名の陰に隠れて吐き出す汚い言葉が、韓国社会の空気をよどませている。

 イ・ジャスミン氏は14年前、結婚と同時に韓国に移住し、2人の子どもを産んだ。夫と死別した後も、移住女性のための団体で事務総長を務めるなど、たくましく生きてきた模範的な市民だ。韓国では、イ氏のような結婚による移住者が20万人を超える。移住者の家庭で生まれた子どもも15万人に達する。そのうち数千人が、今この瞬間も軍に服務して休戦ライン(軍事境界線)を守っているのだ。こうした立派な市民たちの背後から呪いのナイフを突き立てる卑劣なネットユーザーのうち、兵役の義務を果たした人はどれだけいるだろうか。

 韓国人は、米国に移住したジェイ・キム(韓国名キム・チャンジュン)氏が米下院議員になり、ジム・ヨン・キム(韓国名キム・ヨン)氏が世界銀行総裁に選ばれたことに胸を張る。だが、そんな韓国人の中でも愚かな人は、韓国での成功を夢見てこの国に渡り、韓国の国民になった移住者たちを非難する。

 世界のどの国でも、進歩を掲げる人々は移住者の権利保護の先頭に立つ。それが進歩の倫理だからだ。だが、韓国政界の進歩系政治家は、そんな世界標準とは懸け離れている。イ・ジャスミン氏が汚い言葉でののしられているにもかかわらず、進歩系の政治家が体を張って守る姿はほとんど見えない。進歩系の民主統合党民主党)と統合進歩党の一部政治家が、ツイッターにイ氏への非難を控えるよう求めるツイートを投稿しただけで、党としてはいまだに論評さえ出していない。一部の野党支持者たちが愚かな人々の愚かな振る舞いに加勢しているような状況に、野党寄りの評論家の陳重権(チン・ジュングォン)氏は「イ・ジャスミン氏を悪く言う愚かな人たちをやめさせなければ、大統領選挙も希望を持てない」と懸念を示している。

 民主党の綱領には「移住女性など少数者に対する支援を拡大する」とあり、統合進歩党の綱領は「移住・多文化社会に向けた転換と国籍及び文化に対する選択権を尊重し、全ての移住者の権利を保障する」と定めている。両党は、イ氏がセヌリ党所属のため例外だと感じているのだろうか。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/18/2012041801316.html

記事入力 : 2012/04/18 12:34
人種差別攻撃受けたイ・ジャスミン氏がコメント

「傷ついたが韓国の包容力に希望も得た」


イ・ジャスミン氏「それでも明るく…」。与党セヌリ党比例代表で当選したイ・ジャスミン氏は17日午後、国会で開かれたセヌリ党「百パーセント国民幸福実践本部」第1回会議に出席し、ほかの当選議員らと談笑した。/写真=オ・ジョンチャン記者

 11日の国会議員総選挙で比例代表により当選した与党セヌリ党のイ・ジャスミン氏(35)は17日、自身に向けられたインターネット上の人種差別的攻撃や非難について「一部にはそういうことを言う人もいるだろうが、韓国全体がそう考えているとは思わない」と述べた。

 イ・ジャスミン氏は同日、国会で行われたセヌリ党会議に出席した後、記者らの前で「こうしたこと(ネットでのバッシング)で傷つきもしたが、韓国に包容力がどれだけあるかを証明できる機会になった」と語った。

 そして「非常に良くない話がたくさん飛び交ったが、私の周りには励まし、拍手し、頑張れと言ってくださる方がとても大勢いたので希望は捨てない」と話した。

 フィリピンの出身で韓国人男性と結婚、1998年に韓国籍を取得し韓国人として約15年韓国に住んでいるイ・ジャスミン氏は、ソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)や左派系のネット掲示板などで「学歴を詐称し、この国に売買婚で売られてきたヤツが、何を分かったような顔をして政治家になるのか」「不法滞在者が大手を振って歩くようになった」「韓国の骨の髄までしゃぶろうという多文化(国際結婚などで増えた在韓外国人社会・文化)の実体が明らかになった」などの人身攻撃的な中傷に苦しめられた。

 だが、同氏は「韓国で暮らしていて『愛』をたくさんいただいたので、こうしたことが起きてとても残念に思う。傷つくようなことをかなり言われたが、私はともかく、ほかの多文化家庭の人々の方が傷つくのではないかと心配になった」と語った。

 イ・ジャスミン氏は前日までメディアのインタビューを断り、外出を控えていた。同氏の側近イ・ミンジョン氏は「ひどく傷ついて話ができる状況ではない」と話した。しかし、公の場に姿を見せたこの日、イ・ジャスミン氏は韓国を恨んではいなかった。そして「人は皆それぞれ自分の意見を持っているから、無理に自分の見解を示すよりも、今後(議員)活動をすることで、自分が言えることを言っていく」と述べた。それでも、息子(16)と娘(13)には「できれば(ネットや新聞の関連記事を)読まないでと言った」と語った。

 イ・ジャスミン氏は同日の会議で「(多文化家庭の)象徴として(国会に)入ったが、象徴だけで終わらないよう、多文化家庭だけでなく社会的弱者や疎外されている人々のために働きたい。最後まで約束が守れるよう、ご声援をお願いします」とあいさつした。同氏は「差別のない多文化社会」に関するセヌリ党の総選挙公約を第19代国会で責任を持って実行する「公約を守る会」に所属している。

金時現(キム・シヒョン)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/18/2012041801318.html

記事入力 : 2012/04/19 11:19
多文化を見詰める韓国人の二つの顔

 フィリピン出身で1998年に韓国国籍を取得し、4月11日の総選挙では与党セヌリ党から比例代表で当選したイ・ジャスミン議員(35)に対する人種差別的な非難が問題となる中、韓国国民はさまざまな人種や宗教、文化が共存することを受け入れる傾向が外国に比べ低いが、外国人に対するネガティブな認識も逆に低いことが分かった。

 女性家族部(省に相当)が昨年12月から1カ月間にわたり、全国2500人を対象に「多文化受容性調査」を行い、またユーロ・バロメーター(EB)や欧州社会調査(ESS)などの国際指標と比較したところ、韓国国民が異文化との共存に賛成する割合は36.3%で、これは欧州18カ国の平均(73.8%)を大きく下回っていることが分かった。

 しかし「異なる人種と文化を持つ人間を受け入れるには限界がある」と回答した割合は39.4%で、これは欧州の平均68.9%を下回っていた。また「外国人労働者が仕事を奪っている」という認識は30.2%で、これも欧州平均(59.4%)のほぼ半分にとどまった。さらに「外国人労働者が増えれば犯罪の発生率が高まる(35.5%)」「国が抱える財政負担が重くなる(38.3%)」との回答も、欧州諸国に比べて低かった。つまり、韓国国民は外国人に対して非常に開かれた姿勢を持っていることが分かる。全北大学社会学部の薛東勲(ソル・ドンフン)教授は韓国国民のこのような二面性について「長い時間をかけて異なった文化を受け入れてきた欧州に比べ、韓国の国民は自分たちと異なる文化に接し始めてまだ時間が短いため、表面的かつ肯定的に理解する傾向がある。最近は凶悪犯罪など、多文化に対し暗い側面ばかりが注目を集めがちだが、これらが社会全般で外国人への嫌悪につながらないよう注意する必要がある」と述べた。

パク・チンヨン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/19/2012041901155.html