「日韓対立構図」の外からどう見えているか。

日韓の枠内にいながら「その外からの視線」をリアルに想像するのは、想像する以上に難しい作業です。

そうした点からしてこれは、現地取材に基づく実感を伝えるいい記事だと思います。後学のためにもクリップしておきましょう。

サラダボウル:少女像への国際的視線=堀山明子
毎日新聞 2013年08月05日 13時30分

 米カリフォルニア州グレンデール市に旧日本軍従軍慰安婦を象徴する少女像が設置される前夜の7月29日、除幕式のため訪米した元慰安婦、金福童(キムボクドン)さん(87)がユダヤ系博物館で証言するというので聞きに行った。隣接するロサンゼルス市内にある第二次大戦中のユダヤ人虐殺を記録するホロコースト博物館で行われた。

 日本の戦争責任を問う元慰安婦の集会はソウルで何度も取材したが、米国では初めて。「事実を家族に打ち明けた?」「慰安婦と名乗り出た理由は」。質疑応答で司会者が、戦後の生活環境や社会に適応していく経過について細かく質問していたのが印象的だった。ホロコースト生存者や子孫の社会復帰に力を入れるユダヤ系らしい観点だと思った。

 「人ごとと思えなかったわ」。集会後にエレベーターで一緒になった中年女性が興奮した表情で話しかけてきた。「私、南米コロンビア系なの。少女の誘拐や売春の強要は、今もしょっちゅう起きている」。国際犯罪組織による人身売買事件と重ね合わせ、被害者救済のために何ができるか、考えさせられたという。

 本番の除幕式ではアルメニア系のシナニャン市議が、約100年前にオスマン帝国アルメニア系住民約150万人が虐殺されたとされる事件に触れながら、慰安婦への連帯感を力説した。「私の先祖は虐殺の被害者。トルコから何の謝罪もなく、今も傷が癒えていない」

 碑が設置されたグレンデール市は人口約20万人のうち3割がアルメニア系。虐殺事件の戦後処理を促す下院決議を07年に可決させたアルメニア系のアダム・シェリフ連邦下院議員の選挙区でもある。日韓摩擦が飛び火した現場は、全米でも有数の人権問題に敏感な都市なのだ。

 7月の公聴会で反対意見を述べた日本人は「人権問題はどの国にもある」と主張。「米軍周辺にも売春宿はあった」と逆襲する人もいた。

 米国は軍隊内の性暴力撲滅運動の真っ最中。「日本だけが悪い」とはだれも言っていない。むしろユダヤ系、アルメニア系、性暴力に悩む女性が時空や経緯を超え、それぞれ身近な事件と絡め、元慰安婦の痛みに共鳴しているというのが今の構図だ。被害者の傷と向き合う普遍的な言葉でなければ、米社会では届かないだろう。(ロサンゼルス支局)

http://mainichi.jp/opinion/news/20130805k0000e070160000c.html