鯖江にある「嶺北忠霊場」というのは、かつての陸軍墓地のことです。鯖江駅から少し離れた福井鉄道沿い、鯖江市役所や西山公園の北側にあります。
2013年8月22日
遺族ら2500人、戦没者を慰霊 福井・鯖江で追悼式【堀川敬部】県主催の第62回戦没者追悼式が21日、鯖江市水落町の嶺北忠霊場であり、嶺北11市町から遺族ら約2500人が参列した。2万5165人を慰霊し、平和への誓いを新たにした。
黙祷(もくとう)の後、西川一誠知事は「平和と繁栄は戦争で命を落とした方々の犠牲の上に築かれていることを忘れてはならない」と述べた。
遺族を代表し、大野市の阪井ふみ子さん(75)ら4人が花を捧げた。ふみ子さんの孫の美憂さん(14)は「中東では私と同じ年頃の子どもが銃を持って戦っている。早く平和な世界になってほしい」と話した。
29日に敦賀市民文化センターで嶺南地区の追悼式がある。
http://digital.asahi.com/area/fukui/articles/OSK201308210164.html
普通にアクセスするなら国道沿いに行くのが普通でしょうけど、西山公園から展望台を経由して、山道を上り下りしつつ行くことも可能です。お好きなルートでどうぞ。
pop trip Blog 2 - 陸軍墓地〜長泉寺山〜ロレックス(鯖江市)
普通に道路を通って行けば、こんな風に見えてきます。
門の外からも、松の向こう側に巨大な忠霊塔が目に留まります。
この陸軍墓地は、かつての陸軍歩兵第三十六連隊の駐屯地からするとその南端に位置するようで、ここから北に広がる福井鉄道神明駅の周辺、三六町あたりに展開していたとのことです。現在の自衛隊鯖江駐屯地は、そのさらに北にあります。
軍隊の町 神明 - 鯖江歴史街道(T_Shimada's HomePage)
大日本者神國也 - 歩兵第三十六聯隊(豐五六二九)/歩兵第百三十六聯隊(誉一一九三五、中部第六十四部隊)
さて、この鯖江の陸軍墓地、現在の嶺北忠霊場については、いつもの「kanレポート」をはじめ、参考になるサイトページがいくつもあります。事実関係としてこれらに私が付け加えるべきことは、特にありません。
ちなみに、上のリンク先でも説明があるように、忠霊場に併設されている「福井県平和祈念館」は、児童館と一体化した建物の中にあります。遺族会の管理のもとで普段は閉められているため、見学したければ管理者に連絡をする必要があります。私が訪れたときには児童館も閉館しており、雨風も強まっていたところだったので、祈念館見学については諦めることにしました。
私自身は山から下りて裏側から忠霊場に入ったのですが、正面から中に進むと、大きな階段を上った先にまず見えてくるのが、巨大な忠霊塔です。近寄ってみればすぐにわかりますが、これは「支那事変」、つまり1937年に始まった日中全面戦争期の戦没者のための納骨堂となっています。
その隣に並んでいるのが、「上海事件」の合葬墓、そして「満州事変」の合葬墓で、さらにその先には「明治三十七八年戦役」の階級別合葬墓です。このあたりの合葬墓の並びは、この地に駐屯した陸軍連隊の戦歴を正確に反映しているのみならず、合葬の形式という観点からは他の多くの陸軍墓地とも一致します。
それらの合葬墓のさらに右手には階級別に大きさや配置の異なる個人墓が見られます。そのほとんどが日露戦争(「明治三十七八年戦役」)のものであるのは、明治29(1896)年に設置された連隊の歴史からして当然のことです。軍人墓地で個人墓が盛んに作られたのはせいぜい日露戦争までで、以降はおおむね合葬墓スタイルとなりますから、大阪の真田山や滋賀の大津に比べて個人墓が少ないのは連隊設置年の差に他なりません。
いちばん手前にある将校のお墓の墓石や墓碑には、死後の昇進や贈位があったことをうかがわせる痕があります。
その他の個人墓については、劣化しているものも認められますが、全体としてはよく保たれているようです。
ただ、若干気になるのは、多くの墓石が下からオレンジ色に染まって見えることです。これがどういう現象なのか、私にはよくわかりません。
墓地全体を見ると、遺族会の努力もあって、非常によく維持されているようです。市を南北に貫く国道からも近く、北の旧軍都(神明地区)と南の旧城下町(鯖江地区)との間にあって西山公園にも隣接するその位置も、地域の慰霊追悼の中心となり、市民に親しまれるのに有利な条件です。
ただ、そうはいっても、遺族会も徐々に高齢化が進み、今のような形での維持が難しくなっていくことは当然予想されます。そこをどうしていくのか。現在と同様に維持していくべきなのかどうか、変化を受け入れるとしたら、どのような形が考えられるのか。
どこの旧軍墓地も同じ問題を抱えていると思いますけど、「非常にうまく維持管理されている」と思われるだけに、そうしたことがなおさら気にかかりました。