毎日新聞のこの記事。こうして数字を見せられると、なるほどと得心させられます。身も蓋もないと言えばその通りですが、為替レートの変動の影響*1が決定的だとすれば、この件についての安倍さんの影響力は政治外交よりもアベノミクスにある、ということになりますね。
政治や外交面での日韓対立や「嫌韓」「反日」と言われる事々の影響力の射程は果たしてどれほどのものなのか。オヤジ層に食い込んでオヤジメディアでも取り上げられることもあるKARAや少女時代の背後に伏流する(オッサンには見えない)潮流の分厚さに、私はもう少し想像力を働かすべきなのかもしれません。
ふしぎソウル(4):日本人の韓国旅行は減っているのか
2014年01月19日
ソウルの繁華街・明洞で日本人観光客に周辺の観光情報を日本語で案内する、ソウル市観光協会の朴敏珍(パク・ミンジン)さん(右)。朴さんは観光協会が09年から始めた「動く観光案内所」担当職員として、明洞の街頭に出て日本語や中国語で観光案内をしている=明洞で1月12日、澤田克己撮影韓国を訪れる日本人の数が、李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)による島根県・竹島(韓国名・独島)への上陸(2012年8月)以降、急減しています。昨年も減少傾向に歯止めがかからず、韓国観光公社の発表によると、昨年は前年比22.6%減の約275万人。一方で中国人は、同52.5%増の433万人に達して日中が逆転し、初めて中国が1位となりました。新聞記事では普通、円安の影響と合わせて、日韓関係が悪化していることが響いている可能性があるという解説がされてきました。
ただ、韓国の観光客誘致政策について特集記事を書くため、韓国観光公社から提供を受けた統計資料を見ていた私は、面白いことに気付きました。昨年の日本人旅行客数は、前年と比べると大幅減ですが、2008年以前と比べたら数十万人単位で多いのです。要するに、2008年秋のリーマン・ショックで超円高が始まってからの数年間、韓国を訪れる日本人旅行客が飛び抜けて多かっただけ、とも言えそうなのです。李前大統領の竹島上陸はちょうど、円高局面が終わりかけている頃のことでした。
韓国観光公社の統計によると、訪韓した日本人の数は、1985年に約64万人だったのが、ソウル五輪の開かれた88年に100万人を突破して約112万人になり、99年に初めて200万人を超えました。その後は、220万〜240万人程度だったのですが、超円高になったら急に300万人を突破。秋以降に減速したものの2012年には過去最高の約352万人に達したのです。
実際、業界関係者に聞いてみると、日本人客急減の主たる理由は円安だろうという人も多いようです。
済州道観光協会の関係者は、次のように説明してくれました。
「円安に対応するためには、宿泊や食事など(韓国通貨の)ウォン建ての費用を安くするしかない。でも、減っているのは日本人客だけで、中国人客はものすごい勢いで増えている。東南アジア諸国からの観光客も2ケタ増が続いている。需要はすごい勢いで増えてるんだから、価格を引き下げる理由なんかない。結局、円建ての価格を上げることになってしまうので、デフレの日本からの客は減るしかない」
そう言われると身もふたもないような気がしますが、納得できる説明でした。
韓国に来る日本人観光客は、7割がリピーターだと言われます。日本政府観光局ソウル事務所の関係者も「韓国へ来る旅行者は為替レートを見ている。もう少し円高になるまで待とうという人も多いようだ」と言います。
「急減した」と言われる昨年の訪韓日本人数が、リーマン・ショック前よりずっと多かったというのは、ちょっとした驚きでした。1年前だけを見ると「急減した」としか見えない数字ですが、もう少し長いトレンドで見ると違ったものが見えてくるようです。
http://mainichi.jp/feature/news/20140119mog00m070001000c.html
そう言えば、直接は関連しませんが、同じ記者さんのこちらの言葉も、興味深かったですね。
*1:リピーターであれば、空港や銀行で円をウォンに替えたときの封筒の厚みや重さから、この変化は容易に実感できます。