日本のお墓の無縁化の現場
副題と結論については「そういう問題か?」とツッコみたくなりますが、それを差し引いても、普段あまり気にされていないところに焦点を当てた、いい記事だと思います。韓国の事情についても少しだけ言及がありますね。
消える墓 ― 6年に1度は「墓参り=墓確認」に行っておいたほうがいい
2014.05.07
関連キーワード:墓, 墓石, 鷲尾香一ある日、数年ぶりに墓参りに行ったら、「墓がなくなっていた」そんなことが起こる可能性があることをご存じだろうか。
これは1999年5月に政府が、「墓地、埋葬等に関する法律」の施行規則を改正したためである。
この改正は、寺や自治体などが、縁者がいないと「見られる」墓(無縁墳墓)を選定した後、その墓を対象に官報公告を出す。官報公告での猶予期間は1年。それでも、墓の縁者が名乗り出ない場合、最終的に縁者なしと公式に認定され、その後寺や自治体は、墓を撤去し、この場所を別用途に使うことができるようになった。
「無縁墳墓」の候補となった“墓の継承者探し”が、普段、我々が目にすることのない「官報」への公告であることから、おそらく多くは墓の縁者の気が付かないうちに「無縁墳墓」となってしまう可能性がある。ただし、民法上の問題があるため、実際に墓を撤去するまで、5年間はそのままの状態が維持する必要がある。従って、官報に公告がされて1年、民法をクリアするために5年、計6年の期間が墓の撤去には必要になる。
何故、こんなことが可能になったのか。それは少子高齢化に関係している。
日本の墓地は、民法第897条が前提としているように、家族=子孫によって承継されることを前提としている。しかし、少子化やそれに伴う家族構造および意識の変化で、墓地を子孫が継ぐことが困難となり、「無縁墳墓」の増加し、現在深刻な社会問題となっている。
特に大都市圏の大学を出て、その土地の企業に就職した地方出身者は、地元にある「墓」との縁は薄くなる。また出身地以外で結婚し、家庭を持った者たちならば、さらに田舎に帰る機会は減るだろう。まだそれでも、両親が健在している間は、帰省する機会もあるだろうが、もし亡くなったとすれば、出身地といえども戻る機会はほとんどなくなる。もちろん、墓参りに行く機会もなくなり、やがては墓参りの意識すら薄れてくる。
このようにして「無縁墳墓」が増加している。また、地方出身者が移住した先で、さらにお墓を立てるというような行動が続けば、墓地がどんどん必要になるが、継ぎ手のいない「無縁墳墓」になってしまった場所は、利用されないまま放置されることになる。
このような背景があるため、政府は「墓地、埋葬等に関する法律」の施行規則を改正したのだ。
こうした少子高齢化による墓への影響が起きているのは、日本だけではない。隣国・韓国では、埋葬は“土葬”で行われていたが、国民の高齢化が深刻化し、死亡者数が増加の一途を辿ったことで、政府は土葬から“火葬”で埋葬するよう法改正を行った。
土葬は火葬に比べ、墓地の面積が大きく必要だ。さらに死亡者が増加し、墓地需要が急速に拡大したため、『墓地にする場所』が足りないという状況が発生。墓地による土地利用増加を防ぐため、数多く埋葬できる方法へ変更する必要性に迫られた。これには、韓国の国土が狭いということが影響した部分もあるようだ。
日本では、今のところ知らないうちに“墓がなくなった”という例は出ていないようだ。しかし、今後は少子高齢化が一層深刻化し、無縁墳墓が増加することになる。やがて、“墓参りに行ったら墓がなかった”という実例が出てくる可能性は大きい。それを回避するためにも、最低6年に1度は、墓参りに行くことをお勧めする。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
お墓参りをされている方はよくご存じのことでしょうが、墓地に行けばこんな感じの立札や掲示はしばしば目にします。
例えば多磨霊園。
この時に立ち寄った鹿児島市の永吉墓地だと、こんなのを見かけました。
まあ、いくら普段はにゃんこが墓守をしてくれているとはいえ、このご時世、こうした掲示が出されるまで(そしてそれにも気づかないほど)放置しておいては、無縁墳墓として整理されてしまっても文句は言えませんね。