文脈は違っていますが、ともに子どもの進路問題とお金に絡んだネタを、並べてみます。
東大合格に100万円 あの高校はどうなった? (更新 2015/6/15 07:00)
「東大など難関大に合格したら100万円、その他国公立大などは30万円」
昨年11月、こんな奨励金による受験生支援策を発表した鹿児島県伊佐市の県立大口高校。少子化による志願者減に悩む自治体の苦肉の策は、思わぬ波紋を生んだ。
「お金で合格をつるのか」
「世紀の愚策」激しい批判の声も上がった。論争には“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏も参戦。2〜3月に「Yahoo!ニュース」が実施した、是非を問う投票には10万票が集まった。
今年の入試も終わり、制度の恩恵を受けた生徒はいたのだろうか。
「100万円がもらえる九州大を2人受験しましたが、残念ながら不合格。しかし、最終的には、鹿児島大など30万円の国公立大に計18人が合格しました」
と、同校の玉利博文教頭は話す。
「昨年の国公立大合格者は4人でしたから、確実に進学実績増につながったと思います」
「母からは『助かる〜』って感謝されました!」弾んだ声でこう話すのは、下関市立大経済学部に合格、30万円を手にした久木留雅人さんだ
「奨励金は学費に充てます」とにっこり。
推薦入試で鹿児島大医学部保健学科に入学した間宮希さんは、
「幸運なことでした」
と喜ぶ。12月上旬に合格が決まったときは、推薦合格が対象になるかわからなかったからだ。その後もらった30万円は前期授業料に。
「直前に支援策が決まった私たちより、後輩たちには入試まで時間があります。奨励金をモチベーションに頑張ってほしいです」
支援策は、減り続ける同校の志願者数の歯止めにと期待された。結果はどうか。
「市外からも成績優秀な生徒が志望変更して入学しました」(玉利教頭)
県教委の調査によると、昨年6月時点で同校への進学希望者は56人だったが、今春の入学者は66人。目標とした3クラスを編成できる81人には届かなかったが、支援策が奏功したとみられている。
伊佐市の隈元新市長も、
「(支援策が浸透する)2〜3年後には東大合格も期待できます」
と胸を張る。
全国的な侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を巻き起こした奨励金支援策。論争をよそに、志願者増に向けて地元はさらなるPR活動に力を入れるのだった。
※週刊朝日 2015年6月19日号
入学金を“ドタキャン”する親も…底辺校教員が語る「子どもの貧困事情」
2015.06.13 ニュース貧困家庭のなかで育った子どもたちをめぐる、経済問題にとどまらない福祉や健康面を含む問題群の総称として定着した「子どもの貧困」問題。
阿部彩氏の著書『子どもの貧困II』(岩波書店)によると、事態は年々深刻化する一方だという。象徴的なのは以下の記述。
〈国や自治体からの経済支援(就学援助)を受けて学校に通う児童・生徒の割合は、年々増加傾向を辿る一方。2011年には、およそ6人に1人が就学援助をうけて学校に通っているのだ〉
こうした状況を改善すべく、2013年に成立した「子どもの貧困対策法」は、国がこの問題にようやく本腰を入れ始めたひとつの契機と言える。
◆底辺校教員が語る貧困家庭の現状
だが、政府の動きは現場サイドではいまだに実感できていないという声も多い。
関東圏にある、偏差値30代のいわゆる「底辺公立高校」に勤務する土田哲哉氏(仮名・25歳)。
高校3年生の担任を務める彼は、貧困家庭で育つ生徒たちを見ていて、その深刻さを痛感する毎日だという。
◆高校指定外のシャツを着ても黙認せざるを得ない
「うちの生徒には貧困家庭の子供が多いです。学校指定のシャツを買う余裕がなくて、指定外の安いシャツを着てくる子がいます。本来、指導しなければいけないのですが、家庭事情を考慮すると、黙認せざるを得ないんです」(土田氏)
制服のシャツすら満足に揃えることができない生徒たち。深刻な経済状況は、彼らの進路にも影響を及ぼす。
◆大学に受かっても入学金が払えず進学断念
「子どもの貧困を再生産させる原因と感じるのが、三者面談のときにわかる親たちの金銭感覚です」(同氏)
貧困状態にある家庭の場合、子どもの進学費用を想像できないケースも少なくないという。驚くのは、それを「ドタキャン」でしてしまうこと。
「大学や専門学校など、生徒の進路が決まっても『うちはそんなに払えない』と、学費を払わない親がいるんです。もちろん、面談では事前に学費について説明しているのにですよ」(同氏)
また、貧困家庭の親が持つ経済感覚は、こんなところにも現れる。
「三者面談のときに、こんな親御さんがいました。『正社員になって手取りで月12万円をもらうより、アルバイトで月20万円稼いだ方がよいから、娘には夜の仕事をさせる』と。単純に正規雇用がよいというわけではありませんが、額面だけで子どもの仕事を決めさせるのも問題ありです」(同氏)
阿部氏の著書にもあるように、子どもの貧困をめぐって将来的に懸念されるのは、やはり「貧困の再生産」だ。貧困家庭で育った子どもが、親となって再び貧困家庭をつくる。この負のスパイラルは、子どもたちに困難な就労環境をもたらすだけでなく、医療費を中心とした国の財政を圧迫することにもつながる。
これを防ぐ方法として、同氏は政府の手厚い対策を継続することに加え、生徒たちに金融リテラシー教育をすすめるべきだと説く。
「底辺校の生徒たちにこそ、お金の教育をしなければなりません。自己責任論はいけませんが、子どもたちの周囲が『自己責任』として彼らを突き放さたときに、自分で動き出す力を持っているかが大切です。私ができることから生徒たちには教えていきたいですね」(同氏) <取材・文/日刊SPA!編集部>
正直なところ、金も出さずに口だけ出す人たちに対しては、「知らんのやったら、せめて黙っとけ」と言いたくなることが多いです。