子どもの貧困・大人の貧困・社会の貧困

最初に目についたのは、この西日本新聞の記事です。「九州の貧困率が全国平均よりも高い」というのは、個人的には例えば以前に聞いた日産九州の話を思い出させるものでしたし、決して予想できない話ではありません。

島根どころか、九州も怪しい

九州の子ども 2割が「貧困」 約42万人、深刻さ浮き彫り 13‐14年度 本紙が試算
2015年11月04日00時04分 (更新 11月04日 00時31分)

 就学援助を受けるなど、経済的に貧困状態にあると推測される子ども(18歳未満)の数が、九州7県で約42万人に上ることが、2013〜14年度の統計データを基にした西日本新聞の試算で明らかになった。全体の19・4%で、ほぼ5人に1人となる。同じ手法で試算した全国平均は15・6%で、九州の深刻さが浮き彫りになった。県別の貧困率は福岡が23・0%と最も高く、鹿児島21・3%、長崎18・5%と続いた。

 子どもの貧困率については、厚生労働省経済協力開発機構OECD)の基準に基づき公表。平均的な可処分所得(いわゆる手取り年収)の半分(2012年、4人世帯で244万円)を下回る世帯を「相対的貧困層」とし、貧困層に含まれる子の割合が12年に16・3%と過去最悪を更新した。

 だが、厚労省の調査は全国から無作為抽出したデータを基にしており、都道府県別の算出はできない。このため、自県の子どもの貧困率を独自に調査した奈良県の手法を参考に、本紙が九州7県の貧困率を試算した。奈良県の手法は、実際に何らかの公的援助を受けている子どもの数から試算したのが特徴だ。

 小中学生については、自治体による就学援助(福岡市の場合は生活保護支給基準の1・25倍の年収以下程度の世帯が対象)を受給している子どもとし、九州7県で19万6352人(13年度)となった。

 高校生や高専生については、おおむね世帯年収250万円未満程度が対象となる低所得世帯向け奨学給付金の受給者を対象とした。高校の授業料無償化見直しの影響で、14年度の1年生(九州で計2万3830人)しか実数がないため、これを3倍して約7万人と試算した。

 未就学児童については、小中学生の就学援助受給率を当てはめ、貧困層を約15万人と試算。これらの合計が約42万人となり、九州7県の18歳未満の人口約216万人のうち、19・4%に当たった。

 ただ、就学援助や奨学給付金はあくまで申請した人が対象だ。奈良県こども家庭課は「援助を受けていないが貧困状態にある子どももおり、実際の貧困率は、もっと高い可能性がある」としている。

=2015/11/04付 西日本新聞朝刊=

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/205101

ただ、西日本新聞が試算したのは九州の7県。「これ、沖縄をここに入れたらもっと深刻な数字が出てくるんとちゃうの?」と思ってしまいます。

そこで出ていたのが、沖縄タイムスのこの記事。これもまた、案の定という数字です。

低所得・ひとり親・低進学率…子どもの貧困、沖縄の環境深刻
2015年11月4日 09:35


子どもの貧困に関する指標

 沖縄県は、有識者でつくる県子どもの貧困対策検討会による提言を2日に受け、子どもの貧困対策策定作業を本格化する。12月までに初の実態調査を実施し、県内の子どもの貧困率を算出する予定だ。国の子どもの貧困率は6人に1人に当たる16・3%。県の貧困率は国を上回ることが確実視され、これまで明らかになっているさまざまな指標から県内の深刻な実態が浮かび上がる。

 子どもの貧困の背景にあるのが親の貧困だ。県の最低賃金は全国最低額。非正規就業者率が全国1位で、仕事に就く世帯のうち年間所得200万円未満の割合は全国の3倍近い24・7%と、ワーキングプア(働く貧困)層が厚い。

 特に厳しいのがひとり親世帯。働き手が1人と2人では世帯収入が違う。特に女性は非正規雇用が多く、生活のため複数の仕事を掛け持ちする人も少なくない。

 ひとり親世帯の貧困率は54・6%(全国)と高い。県内は離婚率が全国一、母子世帯出現率は5・46%と全国の倍で、県全体の貧困率も高いと予測される。

 子どもに直接関係する指標では、進学率は高校、大学とも全国一低く、家庭の経済事情で諦める子も多いとみられる。中学・高校卒業後の進路未決定率もともに全国一、不良行為少年補導人数が全国一多い。

 検討会委員で沖縄子ども貧困解消ネットワーク共同代表の山内優子さんは「親が不在がちだと子どもは生活リズムが崩れて不登校になったり、寂しさから非行に走ったりする。親の支援が重要だ」と指摘する。

 一方、県の生活保護率は2・5%で全国5位、学用品代や給食費を補助する就学援助率は19・26%で全国10位で、必要な家庭や子どもに支援が十分行き渡っていない可能性もある。山内さんは「子どもの貧困は沖縄社会の問題。県が主導し県民運動として取り組む必要がある」と訴える。

https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=140026

そもそも、この記事にもあるように、「子どもの貧困」は「親の貧困」を背景にしているわけですけど、「親の貧困」の背景には「大人の貧困」があります。これを逆からたどれば、「大人の貧困」を「子どもの貧困」に繋げないためには、「親にならない」つまり「子どもを作らない」というのが最も確実な対策となるわけです。

つまり、子どもの貧困が「この程度で済んでいる」のは、「昨今のこの低出生率のおかげだ」ということです。

ましてや子育ては20年前後はかかる長期の営み、その間をどうにか「やっていける」見通しも立たない中で、「子どもの貧困」をこれ以上拡散させないようにするためには、積極的に「子どもを作らない」ことを呼び掛け、出生率を押し下げることが求められます。子どもさえいなければ、子どもの貧困も親の貧困もあり得ませんから*1

非正規社員が初の4割 高齢者再雇用、パート増加
2015年11月5日 朝刊

 厚生労働省が四日に発表した就業形態の多様化に関する調査によると、派遣など正社員以外の労働者の割合は、昨年十月一日時点で40・0%で、前回二〇一〇年調査の38・7%から上昇した。高齢者の再雇用やパート労働者が増えたことが要因で、一九八七年の調査開始以来、初めて四割に達した。

 調査の対象は、従業員五人以上の民間企業のほか、今回から公立の学校や病院なども加わった。約一万一千事業所と、そこで働く約三万四千人から有効回答を得た。この調査では出向社員を「正社員以外」に位置付けているため、毎月実施されている総務省労働力調査非正規雇用の分類とはやや異なる。

 パートは全体の23・2%で契約社員は3・5%、定年後の再雇用2・7%、派遣2・6%などだった。

 一一年時点と比べた正社員数は、27・2%の事業所が減少し、増加の20・6%を上回った。正社員以外が占める割合は14・1%が増加、14・2%が減少でほぼ同じだった。

 正社員以外を雇用する理由(複数回答)は、「賃金の節約」(38・6%)が最も多く、「仕事の繁閑に対応」、「即戦力、能力のある人材を確保」が続いた。

 パートや派遣などで働く理由(複数回答)は「自分の都合のよい時間に働ける」(37・9%)が最多だった。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015110502000154.html

というわけで、積極的に消費を冷え込ませると同時に出生率を下げる努力を、これだけの企業が重ねているわけです。実に涙ぐましい企業努力と言う他ありません。

非正規、8割の企業が採用=最多理由は「賃金節約」−厚労省調査

 厚生労働省は4日、就業形態の多様化に関する調査結果を公表した。それによると、2014年10月1日時点で非正規社員を雇用する民間事業所の割合は79.6%となり、10年の前回調査に比べ1.9ポイント上昇した。非正規の雇用理由を複数回答で聞いたところ「賃金の節約」が38.8%で最多となったが、前回調査よりは5.0ポイント低下した。

 同省は「雇用情勢の改善で人材確保が難しくなり、コスト削減のための非正規社員の雇用が減った」(雇用・賃金福祉統計課)とみている。

 非正規の雇用理由で2番目に多かったのは、「仕事の繁閑への対応」で33.4%(前回33.9%)。「即戦力・能力ある人材の確保」が31.1%(同24.4%)と続いた。

 また従業員全体に占める非正規社員の割合は40.5%と、前回調査より1.8ポイント上昇。内訳はパートタイム労働者が23.9%、契約社員が3.3%、派遣労働者と嘱託社員が各2.7%などとなった。

 調査は、5人以上を雇用する民間と公営の約1万7000事業所を対象に実施。回答率は64.4%だった。(2015/11/04-18:58)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015110400846

*1:ま、大人の貧困は残りますけどね。それをどうする気なのかは、上記の記事からは見て取れません。