「世帯」の実態の変化に政策的に対応する、ということ。
これ、少子化・高齢化という人口分布の移動にともなって生じている変化で、ある程度の年月をかけて着実に進行することですし、論理的にも予測可能だったことだと思うんですよ。読んでて意外だと思うところ、ほとんどありませんし。
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なのに、この事態に対応する(そこでは試行錯誤の結果としての失敗も成功もあるでしょう)以前の問題として、現実の変化への「対応をためらっているうちに」、変化に対応できないまま、実態と乖離して意味のない統計や政策を続ける、ってのは…。これ見る限り、「総務省=政府無能」という結論にしかならないんではないですか?
社会保障を見直す前に、そこから見直さんとあきませんやん。
「単身・無職」世帯が最多、しぼむ4人家族 政策前提崩れる
2018/9/23 15:29 日本経済新聞 電子版日本の「世帯」の姿が大きく変化している。夫婦と子ども2人の家族構成は今や少数派で、もっとも多いのは単身世帯だ。さらに仕事の状況も合わせて分析すると、直近では「単身で無職」の世帯が2017年に最多になったとの調査もある。いまだ4人家族を基準にしている統計や政策は、実態との乖離(かいり)が否めない。(中村結)
家計の状況を映し出す統計としては、およそ70年間続いている総務省の「家計調査」がある。調査は9000世帯を「標本」として集計する。
継続的な変化をみる統計として利用されているが、調査対象は実態と食い違っている。標本は夫婦と子ども2人の「標準世帯」を含む2人以上世帯が9割以上を占めており、単身は約750件で8%のみだ。
一方、国勢調査をみると15年時点で最も多いのは1840万世帯の単身世帯で、全体の35%を占める。少子化で1人で生活する大学生などの数は減っている。晩婚化が進んで生涯独身の人も増加し、さらに高齢者の一人暮らしが増えているのが大きな要因だ。
総務省も標本のズレは認識しているものの、調査の継続性や協力者の確保を考えると変更はしづらい。だが対応をためらっているうちに、単身世帯は中身もどんどん変わっていく。詳細を把握する姿勢は欠かせない。
大和総研の是枝俊悟研究員は、世帯と仕事との関係を時系列で分析した。世帯を人数だけでなく、働いている人がいるかどうかによって分類した。すると17年は「単身・無職」が最多になっているという結果が出た。30年前には全体の7%にすぎなかったが、17年には17%まで上昇した。5世帯のうち1世帯は「働いていない人の一人暮らし」になったという。
家計調査では圧倒的に少数派の単身世帯が実際の社会では大きな比重を占めているなら、調査の精度に疑問符がつく。
例えば、4~6月の家計調査で単身世帯をみると、働く女性の消費支出は月平均18万2千円(35~59歳)。一方、総務省が単身者に絞って始めたモニター調査では35~39歳が16万円、55~59歳で15万3千円だ。実態は家計調査より節約傾向が強い可能性がある。
家計調査は国内総生産(GDP)や景気動向指数などに幅広く使われる。実態との乖離が大きいと、統計を利用する人たちが消費動向を見誤ってしまう恐れが出てくる。政策立案や企業のマーケティング活動にも影響が出かねない。
世帯の標準を巡るギャップで、さらに深刻な影響が懸念されるのは高齢者の社会保障だ。
厚生労働省の年金の財政検証では、働く夫と専業主婦の世帯をモデルにして年金給付水準が試算される。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「単身で収入が少ない高齢者の問題が見過ごされがちだ」と指摘する。
単身は夫婦の世帯より年金の受取額が少ないことが多い。1人だと住居費などの負担も相対的に大きい。「必要な費用は単純にモデル世帯の半分で考えればいいわけではない」(星野氏)
65歳以上の単身世帯では、若いころの就業期間が短いといった理由から無年金になっている人も男性で1割前後、女性で5%程度いる。みずほ情報総研の藤森克彦氏は「単身・無職を少数派と考えず、家族依存型の社会保障を見直さないといけない」と話す。
35カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)によると、日本の単身世帯比率はOECDで10位。欧州連合(EU)の平均(30%)を上回り、25~30年には北欧やドイツと並ぶ見通しだ。日本社会で進む「単身化」の実態に即した統計を整え、有効な手を打てるか。課題先進国の対応力が問われる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35637780R20C18A9SHA000/