とりあえずNHKの記事が目に留まったのですが、関連する記事も併せて備忘のために。
無縁仏も無縁遺骨も、昔からあった現象ではありますけど、それが量的に増え、その傾向は今後さらに進むとなれば、どこかできちんと対策を考えておく必要があります。例え身内でなくとも、働きかける先が身近に存在していることが前提となっている感もある「終活」とか「エンディングノート」とかが想定しているよりももっと先、行政から働きかけてすくい上げなければどうしようもないところに、事態は進みつつあります。
死後引き取り手のない無縁遺骨が急増
9月19日 17時56分1人で暮らす高齢者が増える中、亡くなった後に引き取り手がなく自治体が代わりに遺骨を引き取った件数が、首都圏の政令指定都市では、昨年度(平成28年度)合わせて1900件に上り、10年前の2倍近くに増えていることがわかりました。専門家はさらに単身の高齢者が増加するため、生前に対策を進める必要があると指摘しています。
1人で暮らす65歳以上の高齢者は、おととしの国勢調査で592万人と、10年前と比べて1.5倍に増加し、高齢者の6人に1人に上っています。こうした高齢者が亡くなり、引き受ける親族がいない場合、自治体が代わりに火葬などを行うことが法律で定められています。
NHKが首都圏の5つの政令指定都市を調べたところ、昨年度、自治体が引き取った遺骨は合わせておよそ1900件に上り、年間の引き取り件数は10年前の2倍近くに増えていることがわかりました。
昨年度の引き取り件数は、横浜市は1123件で10年前の1.7倍に、川崎市は318件で1.8倍に、千葉市は213件で2.5倍に、それぞれ増加したということです。これによって現在の遺骨の保管件数は、横浜市が4938件、川崎市が1748件、さいたま市が1505件などとなっているということです。自治体が負担する火葬費用も増え、千葉市では昨年度は少なくとも650万円余りに上り、10年前の1.6倍になっています。
京都女子大学の槇村久子客員研究員は「核家族化や未婚や離婚によって、身内がいない人が増えたことが背景にあり、亡くなった後の手続きを生前に決める仕組み作りを自治体を中心に急ぐ必要がある」と指摘しています。
千葉市の取り組み
千葉市では1人暮らしの高齢者から孤独死に対する不安の声が多く寄せられるようになり、対策を進めています。市が仲介役となって、頼る親族がいない市民に葬儀業者を紹介し、生前に葬儀や埋葬の方法を決めることで引き取り手のない遺骨を減らそうとしています。千葉市地域包括ケア推進課の富田薫課長は「すべて行政で担うことはできないので地域ぐるみで市民を支えていく体制を作っていきたい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170919/k10011148021000.html
雨の中、宇部市内2カ所の無縁塔清掃
山口県宇部市の宇部徳風会(中村暢宏代表世話人)は16日、小羽山公園墓地と源山墓地で無縁塔の清掃活動を行った。雨が降るあいにくの天気となったが、会員と市職員の30人が、身寄りのない人たちが眠る塔をきれいにした。
いずれの無縁塔も、市民の協力を得て同会が建立。毎年1 回、ボランティアで清掃している。市生活衛生課によると、小羽山は1390柱、源山には1500柱の遺骨が納められてい る。小羽山では午前9時前から作業。参加者たちは、かっぱを着て、水を流しながらたわしや棒ずりで墓をこすり、汚れを落としたほか、墓の間のごみを取り除いた。終了後は花も供えた。
カテゴリー:地域 2017年9月16日
増え続ける無縁遺骨 生前相談、空き家予防にも
2017/8/15
無縁遺骨が保管されている横須賀市の無縁納骨堂(神奈川県横須賀市)都市部で引き取り手のいない「無縁遺骨」が増え続けています。一人暮らしの高齢者の増加や家族のつながりが薄くなったことが背景にあります。血縁に頼らない弔いのあり方を模索する自治体やNPO法人も出てきました。
法律では火葬や埋葬をする人のいない死者は自治体による代行を義務づけています。全国の政令指定都市と東京23区が2015年度に引き受けた無縁遺骨は6721柱と11年度比で25%増えました。
大阪市は15年度に全国最多の2039柱の遺骨を埋葬しました。市の年間死亡数の約7%に達し、8割以上は生活保護の受給者でした。市がそうした受給者の葬儀にあてる費用は年9億円になります。無縁遺骨を埋葬する場所が足りなくなったため、共同墓の拡張に追われています。
埋葬する共同墓がない自治体もあります。富山県高岡市のNPO法人「道しるべの会」には首都圏の自治体から年10~15柱の無縁遺骨が宅配便で送られてきます。有償で提携する寺での納骨と供養を引き受けてくれるからです。
無縁遺骨になるのは経済的な事情ばかりとは限りません。神奈川県横須賀市は2年前から、一人暮らしの市民から死後に関する相談を受けつけています。預金など資産があっても無縁遺骨になる人がいたため、生前に自分の意思を伝えられるようにしたのです。希望者は葬儀社と有償の生前契約を結び、死後に遺骨の供養をしてくれる寺を選ぶことができます。
家や土地の処分を気にかける相談者が多いため、弁護士による無料相談も始めました。一人暮らしの家が相続されないと、空き家が増えることになります。市福祉部の北見万幸次長は「葬儀についての生前相談を呼び水に、空き家も予防したい」と話しています。
国の研究機関は65歳以上の単身世帯比率が35年に約38%まで高まると推計しています。少子高齢化がすすむ台湾では、市民の寄付により、身寄りのない人の合同葬儀をする取り組みが始まりました。第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は「日本も家族や子孫に頼らない弔いのあり方を社会で考えるときだ」と話しています。
■横須賀市福祉部の北見万幸次長「市民を無縁にしたくない」
一人で最期を迎える人が増える時代に行政は何ができるか。頼れる身寄りがいない市民から葬儀や納骨への意思を聞き取る事業を始めた神奈川県横須賀市の北見万幸・福祉部次長に聞いた。
横須賀市福祉部の北見万幸次長――どうして事業を始めようと考えたのですか。
「人口40万人の横須賀市は高齢化率が30%と高く、一人暮らしの高齢者が1万人を超えた。『無縁遺骨』の数も2003年度に16柱だったのが14年度には60柱まで増えた。無縁遺骨となる人の多くは住民登録をしているし、葬儀のために預金を残している場合もある。ただ頼りにできる身寄りがいないだけだ。誰かが生前の意思を聞いておき、その情報を伝達できれば、本人が希望する最期を迎えられると考えた」
――事業はどのようなものでしょうか。
「相談に訪れた市民に葬儀社についての情報を提供し、希望する人には葬儀や納骨に関する生前契約を結んでもらう。行政が介入する必要はないと思うかもしれないが、現実には一人暮らしの人が亡くなった場合には、生前契約を結んでいたとしても葬儀社に連絡する人がいない。それゆえ死亡についての情報が確実に入る市役所が、契約の履行を見届けることにした。登録者は延命治療の希望を問う『リビングウィル』も記入できるようにしている」
――15年7月から事業を始め、どのような変化が起こりましたか。
「14年度に60柱だった無縁遺骨の数は16年度に34柱まで減った。これは事業による影響だけでなく、職員が亡くなった人の縁者をたどり、遺骨の引き取りについて交渉を重ねた結果でもある。無縁遺骨といっても、本当は無縁なのではなく、遺骨の引き取り手、つまり頼れる身寄りがいないということだ。市民を一人も無縁にしたくない」
――今後の課題や展望はどんなところにありますか。
「相談は年100件以上あるが、実際の登録者は16年度までに14人にとどまっている。市民への周知をもっと進めるのが課題だ」
「相談に訪れる人は葬儀だけでなく、住んでいる家や土地の相続についての希望を持っている場合もある。こうした人を対象に、弁護士による無料相談会も始めた。葬儀についての相談を呼び水に家屋の相続についての意思もかなえてあげられれば、行政にとっては空き家の発生を予防することもできる」
(高橋元気)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19822060Z00C17A8EAC000?channel=DF010320171966
無縁仏 政令市、10年で倍増 貧困拡大背景
毎日新聞 2017年7月16日 07時15分(最終更新 7月16日 07時15分)
無縁仏をまつる無縁堂=大阪市阿倍野区で2010年6月19日、幾島健太郎撮影全国の政令市で2015年度に亡くなった人の約30人に1人が、引き取り手のない無縁仏として自治体に税金で弔われていたことが、毎日新聞の調査で分かった。全政令市で計約7400柱に上り、10年でほぼ倍増。大阪市では9人に1人が無縁だった。死者の引き取りを拒む家族の増加や葬儀費を工面できない貧困層の拡大が背景にあり、都市部で高齢者の無縁化が進む実態が浮き彫りになった。
大阪市は9人に1人
死者に身寄りがなかったり、家族や親族が引き取りを拒んだりした場合、死亡地の自治体が火葬・埋葬すると法律で決められている。実際には生活保護費で賄われるケースが多い。
調査は今年6月、政令市を対象に実施。06~15年度に税金で火葬後、保管・埋葬した遺骨数を尋ねた。この結果、政令市の計20自治体は15年度に計7363柱を受け入れた。厚生労働省の人口動態統計によると、政令市の15年中の死者数は計24万4656人。統計は年間集計だが、33人に1人が無縁だったことになる。4047柱だった06年度から1.8倍になった。
最多は大阪市の2999柱。横浜市979柱(死者31人に1人)、名古屋市607柱(35人同)と続いた。千葉と川崎でも約35人に1人、札幌と福岡、北九州では約60人に1人が無縁仏だった。
政令市を除いた31の県庁所在市と東京都の23区についても調査したが、記録が完全でない自治体が半数近くあった。31市は15年度に少なくとも計836柱を受け入れた。死者総数は計10万8048人(15年)で、129人に1人の割合。23区は計823柱で、記録が残る千代田区(23柱)は、17人に1人が無縁だった。
無縁の遺骨は公営の納骨堂などで一定期間保管され、期限が過ぎれば合葬墓に合祀(ごうし)される。だが、遺骨は増え続けており、大阪、札幌の両市は合葬墓の収容量を増やした。
国立社会保障・人口問題研究所によると、昨年の死者は約130万人で、団塊の世代が75歳以上になる2025年には約152万人に達すると推計され、「多死社会」に突入する。少子高齢化の影響もあり、今後も無縁化が進む可能性がある。【近藤大介、山口知、千脇康平】
都市特有の悩み
石田光規・早稲田大文学学術院教授(社会学)の話 高度経済成長期に地方から都市部に移り住んだ人らの多くは、入る墓がなく埋葬の悩みを抱えているのではないか。さらに、最近は親子でもバラバラの個人という感覚が強く、生前から埋葬について話し合う家族は少ない。一方、行政も家族関係に立ち入ることは難しく、有効な対策を講じることは容易ではない。