「出世払い」という言葉の現代的語感:日本私立大学団体連合会のある提案

あー、なるほどねえ。私立大学サイドからの提案ですから、その主眼は学生の「負担軽減」よりも国立大学と私立大学との「格差是正」ですね。当然のことです。

でもまあ、「ある立場の利害と都合から一方的になされた試案」という域を出てない、と言わざるを得ないでしょう。現実的な可能性を考えれば、ここまで取り上げるほどのものであるのかは正直ちょっと疑問です。巨額の財政支出を必要とするというのもさることながら、「出世払い」という言葉に逃げ込んでいる点がもう…。

「出世払い」なんて言うのが今日日、どれほど現実味があるのか。自民党教育再生実行本部の提案と重なってる時点でもう見えてるんですけど、「出世しなければ支払いが発生しない」という「合理的」判断を招く可能性を計算に入れてますか…?

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「昭和か!」とツッコみたくなります。

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大学授業料「出世払い」で 私大団連、全学生を対象に制度提案
2018年3月10日05時00分

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私大団連が提案している拠出金制度

 「高等教育の無償化」が議論されるなか、日本私立大学団体連合会(私大団連)が「出世払い制度」の創設を提案した。高等教育への公的財政支出を増やすとともに、国立大と私立大に通う学生の負担の差の是正を目指す内容。「いま、アピールしなければ機会を逃す」という危機感が背中を押した。(片山健志)

 500以上の大学が加わる私大団連が提案しているのは「高等教育機会均等拠出金制度」。私立大への公財政支出を大幅に増やしたうえで、残る家計負担も在学中に払う部分を圧縮し、8割は卒業後、所得に応じて負担する仕組みだ。

 オーストラリアの高等教育拠出金制度(HECS)を参考にした内容で、諸外国と比べて低い高等教育への公的支出を増やし、家計負担への依存から脱却することが狙いだ。政府が消費税の増税部分を使って進めようとしている高等教育の負担軽減策と異なって低所得世帯だけでなく、全学生を対象としているのも特徴。2月21日には、林芳正文部科学相に手渡した。

 ■公的恩恵13分の1

 提案の背景には、国立大学に通っている学生の方が、公財政支出の恩恵をはるかに多く受けていることもある。私大団連によると、国立大が年間1人あたり202万円なのに対し、私立大は約13分の1の16万円で、その分家計負担が大きくなっている。

 さらに、政府が昨年12月に閣議決定した「政策パッケージ」では非課税世帯の子どもについては国立大の年間授業料(年間約54万円)相当額を免除し、私立大に通う場合は一定の差額を上乗せする方針だ。私大団連は国立大の学生と私立大の学生の家庭負担額の差がいっそう広がって格差が固定されることを懸念し、「国立か私立かではなく、学生一人ひとりの能力と経済状況に応じた支援が必要」と訴えている。

 ■自民党内でも検討

 HECSを参考にした拠出金制度は、自民党教育再生実行本部も昨年11月に提案している。国立と私立の格差是正が目的ではないものの、低所得者だけでなく、すべての学生を対象にしている点や、卒業後の年収に応じて納付する仕組みは私大団連の提案と重なり、本部長の馳浩衆院議員は「国立と私立の間の格差をできるだけ解消する考え方は必要」と語る。文科省村田善則私学部長も「負担差を解消する方向で政策を進める必要がある」と理解を示す。

 ■巨額の財源、壁に

 ただ、私大団連の提案がすぐに実現することは難しそうだ。採用された場合は国立、私立を合わせた公財政支出の総額が現在の年間1兆5431億円から2兆6千億~2兆7千億円台に膨らむと試算され、巨額の財政支出が必要となるためだ。

 私大団連の構成団体の一つ、日本私立大学連盟の担当者は「私立大の現状について、社会の理解を得て、応援してもらわないとらちが明かないところまできた」と明かす。提案はそのため、まず一石を投じた形だ。

 ■公的支出の違いで2パターン想定

 私大団連が提案している拠出金制度は2パターンある。

 A案は、私立大全体で教育や研究に使っているお金の半分を公財政でまかなうと想定した。

 根拠は、私立大学の経費の2分の1以内を「補助できる」としている法律の規定で、可決された1975年の参院文教委員会では「できるだけ速やかに2分の1とするよう努める」と付帯決議された。実際の補助の割合は80年度の約30%がピークで、15年度は10%を割った。長年の要望を当てはめて計算したものだ。

 この場合、家計負担額は1年間で88万円となり、そのうち入学・在学中に支払うのは18万円だ。

 これに対し、B案では国立大生と私立大生の家計負担が同じになることを重視し、国立大生は1人あたりの公財政支出を1年間で160万円、私立大生は半分の80万円と想定した。同時に国立大の運営費交付金を減らし、国立大生1人あたりの家計負担を私立大と同じ97万円まで引き上げた。入学・在学中に払うのはいずれも19万円になる。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13395654.html