台風19号が浮上させた「二人称としての自己責任」論

まあ、前々からそうだったんですけど、「自己責任=あなたの責任(私には関係ない)」ってことですよね。違いますか?

私人間の揉め事ならともかく、生命の危機を前にして、国家が国民にそれを建前に掲げだしたら終わりやと思うんですけどね。間違ってますか?

以下は、備忘のための記録として残しておきます。

台東区自主避難所、ホームレス男性の避難断る
青木美希 2019年10月13日15時27分

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写真・図版避難所に入れなかった64歳の男性が一晩を過ごした場所付近。台風の中、10人近くの野宿者が身を寄せたという=2019年10月13日午前7時3分、東京都台東区

 台風19号が接近、上陸した12日、東京都台東区が、自主避難所を訪れたホームレスの男性2人を受け入れなかったことが、区や関係者への取材でわかった。区側は、避難所は区民を対象としたもので、2人が住所不定であることを理由に受け入れを断ったという。

 区は「住所不定者をどうするかとの観点が抜けていた」と説明し、「反省点とし、今後、住所不定者をどう援助できるかを検討する」としている。

 区などによると、ホームレスの男性(64)が12日午前9時ごろ、自主避難所となっていた区立忍岡小学校を訪れた。自主避難所は区民が対象で、受付の際に氏名や住所を記入してもらっていた。区によると、区職員が記入を促したところ、男性に「住所がない」と言われたので「区民対象ですので入れません」と断ったという。男性は取材に対し、「『北海道に住所がある』と説明したところ、『都民のための避難所です』と断られた」と話している。

 男性は建物の軒下でビニール傘を広げて一晩を過ごしたといい、「風が強く雨も降っていて受け入れてもらいたかった」と取材に答えた。

 別の男性も午後に同じ避難所を訪れたが、同様に受け入れを断られたという。

 こうした対応を受け、野宿者支援団体の一般社団法人「あじいる」の今川篤子代表らが避難所を訪れるなどして「多くのホームレスがいるので避難場所を用意して欲しい」と訴えた。だが、区によると、区災害対策本部員である区危機管理室長の判断で準備できないと断ったという。

 今川代表は「いつ誰がホームレスになるかわからないのに、人命にかかわるときでも差別するのかと目の前が真っ暗になった」と話している。

 今回の台風で別の区の避難所では住所不定者を受け入れていた。渋谷区防災課の行廣勝哉課長は「避難所は原則区民向けだが、今回は大型の台風で人命にかかわるとして受け入れた」とした。

 災害救助法について詳しい津久井進弁護士は、「内閣府は災害救助法に基づき、被災者の現在地での自治体が救助を行う『現在地救助の原則』を基本としている。今回の行為は原則に反する行動で、人権侵害でもある。論外だ」と話している。(青木美希)

https://digital.asahi.com/articles/ASMBF3RVWMBFUTIL01K.html

災害救助法の第二条および第二条の二あたりですかね、該当するのは。
www.bousai.go.jp

「お前らは人間じゃないと言われてるようだった」男性は避難場所のすぐ外で台風の夜を過ごした - BuzzFeed.com
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「もう堤防には頼れない」 国頼みの防災から転換を
2019/10/14 0:38

首都を含む多くの都県に「特別警報」が発令され、身近な河川が氾濫する事態を「自分の身に起きうること」と予期していた市民は、どれほどいただろうか。近年、頻発する災害は行政が主導してきた防災対策の限界を示し、市民や企業に発想の転換を迫っている。

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千曲川の決壊で浸水した長野市穂保=13日午前8時10分(共同通信社ヘリから)

2011年の東日本大震災津波で多数の死傷者を出し、防潮堤などハードに頼る対策の限界を見せつけた。これを教訓に国や自治体は、注意報や警報を迅速に出して住民の命を守る「ソフト防災」を強めた。しかし18年の西日本豪雨でその限界も露呈した。気象庁は「命を守る行動を」と呼び掛けたが、逃げ遅れる住民が多かった。

堤防の増強が議論になるだろうが、公共工事の安易な積み増しは慎むべきだ。台風の強大化や豪雨の頻発は地球温暖化との関連が疑われ、堤防をかさ上げしても水害を防げる保証はない。人口減少が続くなか、費用対効果の面でも疑問が多い。

西日本豪雨を受け、中央防災会議の有識者会議がまとめた報告は、行政主導の対策はハード・ソフト両面で限界があるとし、「自らの命は自ら守る意識を持つべきだ」と発想の転換を促した。

南海トラフ地震や首都直下地震に備えるには、津波の危険地域からの事前移転や木造住宅密集地の解消など地域全体での取り組みが欠かせない。それを進めるにも市民や企業が「わがこと」意識をもつことが大事だ。

個別対策でも同様だ。運輸各社は計画運休により首都圏の公共交通をほぼ全面的に止めた。災害時にいつ、だれが、何をするか定めた「タイムライン」は被害軽減に役立ち、それが定着し始めたのは一歩前進といえる。

もし上陸が平日だったら企業活動や工場の操業にどんな影響が出たか懸念が残る。企業がテレワーク(遠隔勤務)などを真剣に考え、経済活動を維持する工夫も欠かせない。(編集委員 久保田啓介)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50958710T11C19A0MM8000/

参考までに、「二人称としての自分」について考察した論考に、こういうのがありました。

http://www.tufs.ac.jp:8080/ts/personal/kazama/shigen/2/Shigen2.pdf

松木康「北河内地方における二人称としての「自分」の使用について」(『思言 東京外国語大学記述言語学論集』第2号、2006年)

このへんとか、ちょっと示唆的です。

社会的身分に関しては、全層で大半の人が目上に対しての使用は不可としていることから、聞き手が社会的に同等以下であるということが、「自分」の使用の前提条件をなっているということがわかる。