シネマート心斎橋で映画「スウィングキッズ(스윙키즈)」を観る。:「Fuckin' ideology!」

これは日本での公開を心待ちにしていた作品です。2018年の12月に馬山のCGVで観て以来です。

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封切りして2度目の土曜日の午前、日本語字幕付きでの復習を兼ねた鑑賞でした。入りは4割ほどでしたかね。結果、私の韓国語力(ほぼゼロ)でも、まあだいたいのストーリーは理解できてました。ただ、以前も書いたように、巨済島の捕虜収容所についての予備知識がある程度は必要だと思います。

朝鮮戦争の時代、そこに収容されていた17万人以上の捕虜というのは基本的には北朝鮮軍人なのですが、共産主義を信奉するものとそうでない者(例えば北朝鮮軍によって各地で強制徴用された者)がいただけでなく、民間人で巻き込まれた者や中国軍人も含まれていて、それらが相容れないままに押し込まれているがゆえに、暴動も頻発する混乱した場であった。できるだけ短くまとめるとそんな感じでしょうか。

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で、この作品、巨済島の捕虜収容所という歴史上実在した場所(fact)を舞台に、実在しないタップダンスチームのストーリー(fiction)をぶち込んだ、「faction」と呼ばれるジャンルに位置づけられるものです*1。そこで描かれているのは、過去の歴史の再現と、そこに自らを置くことでかき立てられる想像力の産物。

ぬぐい切れず自らにまとわりつく戦争・思想・民族・人種・性…それらを踏み越えて、私はどんな夢を見ることができるか。夢見る中で、言葉にできない、もしくは言葉にならない何ものかを表現するために求められるのが、リズムであったり音楽であったりダンスであったりする。

距離を取って言語化する前に、音と動きの中に没入する。そして合間合間に、我に返って言語化された会話を聞き、それを反芻する。

そうすることで、観る者は、イデオロギーに囲まれた世界にいる彼らと自分についての空想を徐々に身体化していく。

そこでクライマックスのダンスシーンですよ。「Fuckin' ideology!」ですよ。痺れます。

まあ、こう考えていくと、あのシーンのエンディングは必然だったんだと思います。イデオロギーは日々、人を飲み込み、食らい尽くしている。彼らはイデオロギーに食われたんです。子どもたちや愛する妻や、あり得たはずの未来を遺して。

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ハッピーエンドかバッドエンドかという区分けよりも何よりも、これは、「イデオロギーと関わるあり方」に問いを投げかける、他人事ならぬ作品なのだと、私は受け取りました。

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彼らが踊る理由|ダンスと自由とデヴィッド・ボウイ【ネタバレ注意】 | ENHANCE JP

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『スウィング・キッズ』 捕虜収容所に響くタップの音
花まるシネマ

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 第一級のミュージカル映画を観ているような味わいがある。朝鮮戦争時の捕虜収容所を舞台にした韓国映画で、戦争×タップダンス、民主主義×社会主義という対極にあるものをあえてぶつけることにより見事な化学反応が生まれている。監督は、『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル。従軍記者のワーナー・ビショフが撮った、巨済(コジェ)捕虜収容所で仮面を被り、自由の女神像の前で踊っている捕虜たちの写真から着想を得たという。

 1951年、韓国・北朝鮮アメリカ・中国籍の5人による寄せ集めチーム「スウィング・キッズ」の誕生物語で、タップダンスを通した人種や国籍、イデオロギーを超える心の結び付きが、ベニー・グッドマンデヴィッド・ボウイらの名曲に乗せて描かれる。

 登場人物たちが歌とダンスによって心情を吐露するような、いわゆる正攻法のミュージカル映画ではないけれど、踊りたい!という欲求が募り、日常の音が次第にダンスのリズムに聞こえてきて我慢できずに踊りだすシーンなどは、まさにミュージカル映画のそれ。ただし、悲劇の歴史を背景にしているだけに、ただただ甘いだけではなく苦味もたっぷり。絶対にハリウッドでは作れないタイプの音楽エンターテインメントだ。ミュージカル好きは特に必見! ★★★★★(外山真也)

監督・脚本:カン・ヒョンチョル
出演:D.O.〈EXO〉、ジャレッド・グライムス
2月21日(金)から全国公開
(2020年02月18日 08時08分 更新)

https://www.sanyonews.jp/article/985755

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*1:詳しくは、映画パンフレットに掲載されている崔盛旭氏のコラム参照。