2020年の大学4年生の苦境

「世代丸ごと」だから自分一人だけではない、と言えば言えるんですけど、おそらく上の世代が誰も経験したことのない事態を前にして受けるしわ寄せは、必ずしも平等ではないんですよね。苦しみは、弱いところから狙い撃ちしていきます。

いま目の前の生活苦も、卒論の準備を思うように進められないことも、どれもしんどいんですけど、内定を得ても就活をやめられない(いつ就活をやめてもよくなるかわからない)、という状況は、これは辛いですよ。ただでさえ大学に授業を受けに行くことも少なくなって孤立しがちな境遇であるにもかかわらず、一人で立ち向かうにはあまりにしんどい状況です。

収入ゼロ、卒論難航、内定取り消し… 大学4年生襲う「三重苦」
2020/5/24 6:00 (2020/5/25 13:35 更新)
西日本新聞 一面 白波 宏野 竹次 稔

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卒業論文の準備のためスライド資料を作成する男子学生。内定は得ているが、取り消しの不安感から就活も続けなければならない=21日午後、北九州市

 新型コロナウイルスの影響で、大学最終年度の4年生が「三重苦」に追い込まれている。アルバイト先の休業に伴う生活苦に加え、就職活動も卒業論文の準備も思い通りに進められない。内定を得ても、企業側の経営悪化で取り消される不安が拭えず、就活を続ける例も。原則入構禁止が続く大学もあり、卒論に必要な資料集めや実験が難しく、学生たちを悩ませている。

 北九州市内の大学に通う4年の男性(21)は4月末、バイト先のジムから5月末での解雇を言い渡された。集団感染の恐れがあるジムは3月末から休業に入り、同月の給与は半減し、4、5月はほぼゼロ。親からの仕送り月5万円と奨学金月3万円で家賃と生活費を確保するのがやっとだ。

 一方で就活の企業説明会は3月の解禁日前後から中止が相次ぎ、説明会や面接をオンラインで実施する企業が急増。男性がネットでエントリーした13社も全てオンライン面接で、企業側の担当者とは一度も直接会わないまま。社風も面接官の反応もつかみづらいだけでなく「オンラインで自分の思いがうまく伝わるか」との不安もつきまとう。

 同じ大学を来春卒業予定の男性(22)は、4月に商社の内定を得た。

 留学で休学したため奨学金がストップし、バイト先も休業中で収入はゼロ。就活のために蓄えていた貯金を取り崩している。就活には区切りを付けたいが、多くの企業が新型コロナの打撃を受ける中で「先行きは見通せない」。内定取り消しに備え、他の企業の面接に挑み続けている。

 卒論も難題だ。全国の文系研究者ら有志でつくる「図書館休館対策プロジェクト」が4月17~30日に学生や研究者を対象に行った調査(有効回答数2519人)によると、学内への立ち入り規制などの影響で、論文を本年度提出する予定の760人のうち、約7割が提出時期に間に合わないと回答したという。

 この男性も就活と並行して論文準備に取り組むが、大学は今も原則立ち入り禁止。図書館などの利用にも許可が必要で、手続きが煩雑だという。男性は「必要な文献を自腹で買う余裕などない。図書館が早く再開しなければ卒論も進まない」と焦りを募らせている。 (白波宏野、竹次稔)

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