1994.1.18から15年

何だかんだで中途半端に半日の空き時間ができた。そこで、前々から気になっていたところを思いつきで訪れてみることにした。目指すのは南楊州市である。
とりあえず清涼里まで地下鉄で出てくる。地上の清涼里駅は現在、工事中であり、ロッテ百貨店裏の昔ながらの駅舎も何となく仮設っぽくなっている。


春川へ向かう京春線を使って行けないこともないのだが、ここは利便性を優先してバスを使うことにする。乗るのは赤い座席バス。清涼里駅からだと駅前のバス停1番で1330番か765番に乗ることになる。料金は1800ウォン*1

渋滞さえなければ1時間もかからずに着くここは、모란공원(牡丹公園)という。


早い話、ここはこういう場所なのである。

ただ、その区域に入るなり見かけたこの横断幕は、これを撮った時点では「ただ目に入ったからカメラを向けた」というに過ぎなかった。

雪で滑りやすくなっている通路をさらに上がっていって、ようやく先ほどの人物が誰なのかに思い当たった。

まったく偶然に、故・문익환(文益煥)牧師の15周忌追慕式の日、私はこの地を訪れていたのである。

人間・文益煥

人間・文益煥

見る間に墓前に人が集まり、しんしんと冷え込む中、黙祷に始まって挨拶・追慕祈祷・賛美歌・説教・追慕の言葉…と、小1時間ほどにわたって式典が進められた。
これも何かの縁である。片隅で最後まで立ち会うことにした。




式典後のお話によれば、皆さんはこの後バスで移動してヘジャングクを食べる、とのことであった。ついて行ってもよさそうな感じは充分にあったのだが、残念ながらまだ目的を達成していないので、熱いお茶をいただくだけにしておく。


実は、目的というのは、この墓地に行ってみることだったのである。

전태일(全泰壱)。1970年、朴正熙政権下で抗議の焼身自殺を遂げた青年労働者である。「民主烈士」としてたいへん著名な、ある意味で神格化にまで至った人物だと言えるだろう。

全泰壱評伝

全泰壱評伝

またこの墓地には、同じく著名な「民主烈士」として知られるこの人物の墓地もある。

ところで、この墓域は、一般の公園墓地の中にあって、こうした人物を特別な形で埋葬する形になっている。同様の形式は、光州広域市・望月洞のいわゆる「5.18旧墓地」にも見られる。光州の場合、そうした墓域が道一つで「新墓地」=「国立5.18民主墓地」へと結び付けられている。
烈士墓域と国立墓地。両者の関係は、切り離されているようで切り離すことはできない。そうした微妙な要素をはらんでいるように、私には思われるのである。

*1:ちなみに、「この赤いバスには交通カードの乗り継ぎ割引が適用されない」といった情報がネット上には転がっているが、2008年9月から割引制度の適用が始まっている(このブログ記事参照)。したがって、ここで書いているような交通手段を利用するのであれば、T-MONEYは買ったほうが絶対にお得である。