労使関係の変化の陰で
かつてのような激烈な労使紛争は影を潜めつつある昨今ですが、その関係「良好化」の陰には、こういう問題がある、というわけです。かつては「人並みの扱い」を労働者が使用者に対して求めたのですが、最近では派遣労働者(非正規労働者)が、労使両者の外側で「人並みの扱い」を求めている、という図式になりますか。
言うまでもなく、これは他人事ではありません。そして、使用者ともに、あるいはそれ以上に、既存の労働組合や正社員(正規労働者)の態度が、問われるところです。
別の言い方をすれば、これは「生活保守主義とどう向き合うか」という難問です。
記事入力 : 2010/07/27 08:07:02
【社説】派遣労働者差別の危険性を認識せよ下請け企業からの派遣労働者として、現代自動車蔚山工場内で2年以上勤務したチェ氏が、現代自側に解雇を取り下げるよう求めた裁判で、大法院(日本の最高裁に相当)は同氏の訴えを認め、「2年以上勤務したにもかかわらず突然解雇されたチェ氏は、旧派遣勤労者保護法の適用を受ける。そのため、2年を超えた日から現代自は、チェ氏を直接雇用したと見なすべき」との判決を下した。判決理由として大法院は、現代自側がコンベアの左右に正社員と非正規職を並べて配置し、作業の開始時間や終了時間、作業の量や方法、手順、ペース、残業、夜間労働など、あらゆる面で直接決定していた事実などを指摘した。下請けが元請けに労働者を派遣し、作業を行わせることを業界では「社内下請け」と呼んでおり、これは納品契約を結ぶとか、一定の業務を引き受けて独立的に仕事を行うとかする一般的な下請け関係とは異なる。「社内下請け」では、下請け側はあくまで労働者を派遣するにとどまり、作業場での指示について、労働者は完全に元請け側の指示に従うことになっている。
自動車・造船・電子などの業界では、正社員雇用に伴う負担を減らすために、社内で下請け企業の労働者に派遣労働者として仕事をさせる慣行が今も続いている。今回の大法院の判決は、メーカー側の都合に合わせたこの労働慣行にブレーキをかけたものだ。また2007年から施行されている新しい派遣勤労者保護法では、「派遣期間が2年を超えた場合、派遣先企業はその労働者を直接雇用しなければならない」と規定しており、「派遣労働者を雇用したものと見なす」となっていた従来の法律よりも、労働者を強く保護している。
「社内下請け」により派遣された労働者に対する差別は、製造業全体の大きな問題として指摘されている。社内下請け労働者は現代自だけでも7000人以上存在し、自動車業界全体では数万人に達するという。作業場で派遣労働者は、正社員と同じ勤務時間にまったく同じ業務をこなしている。両者の違いは、「正社員は右側のタイヤ、派遣労働者は左側のタイヤを取り付ける」といった程度だ。しかし給与は正社員の半額程度で、通勤バスや食堂、休憩室といった福利厚生面でも差別を受けている。「同一労働・同一賃金」の原則からすると、現在の社内下請け構造を今後も続けることには無理が伴うだろう。しかしこれについて会社側は、「2年以上勤続した派遣労働者を一気に正社員として受け入れた場合、人件費支出の増加で国際競争力の低下は避けられない」と主張しており、派遣労働者の直接雇用には慎重な姿勢を崩していない。
これまではどこの業界も、正社員によって構成された労働組合の要求を受け入れ、その負担をすべて派遣労働者に押し付けるという形を取ってきた。つまり、正社員で構成された労働組合やその組合員が今受けている数々の恩恵は、いずれも派遣労働者の血と汗と涙から絞り取ったものだ。今後もこのような状態が続けば、会社側も労働組合も、いずれは派遣労働者をはじめとする非正規職からの挑戦に直面するようになるだろう。
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