格安航空の韓国進出、そして日本は

朝鮮日報』の記事というのはもちろん、韓国の〈国益〉の観点から物事を論じる傾向にあるわけですが、仁川空港と密な路線を持っている日本でも、こうしたニュースが無縁であるはずがありません。

記事入力 : 2010/09/20 14:00:33
外国格安航空会社が韓国進出ラッシュ
中国・日本企業も参入準備

 韓国で格安航空会社の全盛時代が訪れようとしている。韓国内の格安航空各社が毎年大幅に国内シェアを高め、国際路線にも勢力を伸ばしている中、外国の格安航空会社も続々と韓国進出を果たしている。

 韓星航空が16日、「t’way(ティーウェイ)航空」という名称に変更し、金浦−済州路線就航を再開したのを機に、国内の格安航空業界は「5社競争体制」に突入した。日本第2位の航空会社、全日本空輸ANA)が来年1月に格安航空会社を設立し、韓国進出を狙っているほか、中国の格安航空会社・春秋航空もこのほど、「仁川国際空港への就航を計画中」と発表した。格安航空会社とは、機内食などのサービス負担を軽減し、運賃を従来の航空料金よりも安く抑えた航空会社のことだ。

 韓国では05年に初めて格安航空会社が誕生して以来、この5年間で国内線乗客の3人に一人が格安航空会社を利用するようになった。国土海洋部によると、今年1−8月で済州航空、ジンエアー、エアプサン、イースター航空の国内線旅客輸送シェアは34%だった。昨年の27%に比べ7ポイントもシェアがアップした。

 一方、格安航空各社の国際線進出も大幅に増えている。現在、仁川−大阪など国際線5路線を運航している済州航空は、10−11月に仁川−香港、仁川−マニラ、釜山−セブなど3路線を新たに就航させる予定だ。ジンエアーは仁川−バンコク、仁川−グアムの国際線2路線を運航しているが、新たに仁川−クラーク(フィリピン)、仁川−マカオ、済州−上海路線を計画している。エアプサンも今年、釜山−福岡路線が就航したのに続き、間もなく釜山−フィリピン、釜山−香港路線の運航を開始する予定だ。

 外国の格安航空会社による韓国進出も活発だ。フィリピンのセブ・パシフィック航空は仁川−セブ路線を運航しており、アジア最大の格安航空会社であるマレーシアのエア・アジア・エックスは11月に、仁川−クアラルンプール路線の運航を開始する予定だ。超格安を誇るエア・アジア・エックスの登場に、大韓航空など韓国の航空会社も神経を尖らせている。

 済州航空の咸大栄(ハム・デヨン)顧問は、「韓国・中国・日本といった地域は毎年旅客数が大幅に伸びている『黄金市場』だ。今後は、この地域の顧客獲得を狙う外国格安航空会社の参入がさらに増えるだろう。格安航空各社は今後5年以内に国内線で50%、東南アジア・中国・日本など中距離の国際線で30−40%までシェアを拡大させる可能性がある」と話している。

キム・ミンチョル記者

http://www.chosunonline.com/news/20100920000054

それにしても、日本の航空会社にしても、空港にしても、どうにも出遅れ感が否めないですねえ。関西空港も相当頑張らないと、「LCCで起死回生」という目論見が危うくなってくるかも知れません。羽田・成田も然りです。

そこで、時を同じくして、『日本経済新聞』がこんな記事を掲げています。

アジアの需要を取り込む航空政策を
2010/9/20付

 東京の羽田空港に4本目の滑走路ができ、10月下旬から本格的な国際線運航が始まる。政治的事情による台湾行きやチャーター便扱いの上海便などを除けば、羽田の国際定期便就航は32年ぶりだ。成田空港も3月から発着枠が22万回に増え、「航空ビッグバン」と呼ばれている。

 日本は首都圏空港の整備で韓国やシンガポールに後れを取ってきた。これを機に少しでも巻き返し、アジアでの存在感を高めていきたい。

始まった構造変化

 羽田空港に乗り入れる航空会社には、海外でロー・コスト・キャリアー(LCC)と呼ばれる格安航空会社も含まれている。連休明けに日本での事業計画を発表するマレーシアのエアアジアXという会社だ。

 こうした航空会社の特徴は運航から予約、機内サービスまであらゆる部分で費用を切り詰めた経営モデルにある。通常の航空会社の半分から10分の1という安い運賃を実現し、旅行者の支持を勝ち取っている。

 首都圏ではすでに茨城空港に、春秋航空という創業から6年の中国企業が乗り入れた。韓国などからも4社程度が乗り入れを検討しており、日本の航空会社は経営体質の見直しを迫られる可能性がある。

 全日本空輸は自ら格安航空会社を香港の投資会社などと設立すると発表した。再建中の日本航空国土交通省の勧めで検討を始めた。だが、安い運賃で日本人旅客を奪い合うだけでは新たな成長は見込めない。旅客の構成の変化、日本の空の構造転換に合わせた戦略が重要になる。アジアの人々の所得水準に合わせた格安航空事業の拡大が欠かせない。

 日本発着便の主役は日本人だったが、海外渡航者は2000年の1782万人をピークに昨年は1545万人まで減った。一方で日本を訪れる外国人は今年、03年の約2倍になり、1000万人を超す可能性が大きい。増加が目立つのは中国などアジアの人だ。近い将来、訪日する外国人は日本人の海外渡航者より多くなり、「19年以降は2500万人規模」(観光庁)との予測もある。

 空のビッグバンは、今年の増便、増枠だけで終わりにはできない。日本人の旅行需要を掘り起こすのはもちろんだが、アジアなどから旅行者やビジネスマンをどう呼び込むか、さらに踏み込んだ戦略が必要だ。

 1つは格安航空を含め、多くの航空会社が乗り入れられるよう空港の発着枠を増やすこと。羽田は今回、年40万回、成田も14年までに30万回を確保するが、それだけでは膨張するアジア需要にこたえきれない。

 羽田については第5滑走路を検討する一方、今は使われていない「旧B滑走路」を修復、再利用できないものか。さらに、かねて議論に上ってきた米軍横田基地の活用も外交交渉をしてはどうか。これらで年間30万回近い発着枠が生まれる。

 2つ目は日本の空を自由化する「オープンスカイ」の推進だ。世界ではすでに3分の2が自由化の対象地域だ。米国は92カ国と自由化協定を結び、欧州連合(EU)は1993年に域内を自由化した。

 近隣諸国では東南アジア諸国連合ASEAN)が15年から域内を自由化、韓国はそのASEANと自由化に合意した。だが日本が自由化協定を結んだ国はまだない。航空自由化は日本の航空会社にとって試練かもしれないが、外国のライバルと競ってこそ経営体質を強くできる。

 外国客をさらに増やせば、観光や買い物、医療などで経済活性化、雇用の創出につながる。自国の航空会社を守るために海外勢や新興の格安航空の参入を制限すべきではない。

輸出と同じ効果を期待

 九州では型破りな航空会社構想が浮上している。福岡、長崎などと上海や北京などの間を毎日運航し、運賃は無料。その代わりに「九州バウチャー」という疑似通貨を売り、買い物などをしてもらうという。

 旅客1人が10万円分を九州に落とせば、1日3000人として年1000億円。高度医療などと組み合わせれば経済効果はさらに膨らむ。政府や航空会社に頼れないと考えた西日本鉄道、JTB九州など地元企業や自治体が具体化に意欲的だ。

 日本は空港整備特別会計を使い空港を98にまで増やしたが、結果的に旅客不在に近い路線も生んだ。その延長線上では、これからの航空政策は描けない。採算に合わない空港は思い切って統廃合し、首都圏やアイデアのある地方の空港にはお金をかける。国際的にみて著しく高い着陸料も下げる。発着枠も国籍ではなくアジアから活力を運んでくれる航空会社かどうかを基準に配分する。

 アジアの人々にとって日本はブランドであり、日本製品を国内で買ってもらえば輸出と同じ効果がある。しかも観光産業は海外に逃げない。日航再建で法的整理という手法を選んだ民主党政権だが、空港政策でも思い切った戦略の転換が要る。

http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E6EBE4E1E7E2E2E0E2E2EBE0E2E3E28297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D

ただ、言っていることは分からないではないんですが、すでに格安航空会社が就航している関西空港や中部空港、そしてすでに韓国・中国と緊密な関係を結んでいる九州地方への目配りが足りない点、個人的には「しょせんは東京ローカル記事」と言いたくなってしまいますねえ。

実際、関西に住んでいれば、成田空港に行くより仁川空港に行ってトランジットしたほうが楽だったりしますし*1、羽田の国際便を使うことはまあないでしょうから。

*1:伊丹空港から仁川空港に飛べればもっといいんですが…。