斎場と葬儀社と遺族とのいざこざ

ここのところの葬儀をめぐる急激な構造変化に伴って出てきた話ですが、お隣のことと笑ってはいられない内容だと思います。

「葬儀」という仕事 (平凡社新書)

「葬儀」という仕事 (平凡社新書)

記事入力 : 2012/03/07 12:34
遺体をかたに利権争いを繰り広げる斎場と葬儀社
物品購入をめぐるいざこざ、最大の被害者は遺族


 「遺体を早く出してください」(葬儀社の社員)

 「葬礼用品を購入しなければ、安置室のドアは開けられません」(斎場関係者)

 「…」(遺族)

 先月3日、京畿道にある病院の斎場で、葬儀を営む会社の社員と斎場関係者が顔を真っ赤にしながら言い争っていた。その間、遺族はぼう然とした表情を浮かべていた。

 先月3日に起こった、とんでもないハプニングは、斎場関係者が葬儀社に対し、香やろうそく、アルコール、綿など葬儀用品の購入を強要したことがきっかけとなった。葬儀社が葬儀用品の購入を拒否すると、斎場は故人の遺体を引き渡さないと言い出した。斎場が購入を強要した物品の金額は、計50万ウォン(約3万6000円)。家族を失った悲しみに暮れる遺族は、50万ウォンをめぐって言い争う葬儀会社と斎場関係者の様子に、ただ天を仰ぐばかりだった。

 このところ、葬礼の費用をめぐる斎場と葬儀社間の利権争いが深刻化しており、遺体の引き渡しを拒否する事態まで起きている。こうしたハプニングの狭間で最大の被害者は遺族だ。

 昨年10月、ヤンさん(36)はソウル市内の大学病院で父親の葬儀を執り行った。ヤンさんは、花代を含む葬儀社の商品に加入し、斎場には施設利用料と食事代さえ払えば済むと思っていた。ところが葬儀が終わった後、ヤンさんは斎場から花代としてさらに80万ウォン(約5万7000円)を請求された。

 ヤンさんは「斎場には外から花を持ち込めないと言われたため、葬儀社から花代として請求された会費20万ウォン(約1万4000円)を返金してもらい、病院に別途80万ウォンを支払った。加入時には追加料金は一切かからないと大言壮語していた葬儀社も、外から花は持ち込めないと言い張る斎場も、どちらも常識的に理解できない」と語った。

 斎場側が物品購入を強要するケースが一度や二度ではなく、故人の遺体引き渡しを拒否する事態まで起きている理由は、葬礼市場の構図が変わったからだ。

 かつては斎場側がひつぎ、死に装束、遺族の衣服など葬礼用品の販売と進行を全て引き受けていたが、最近では葬儀社が市場に参入し、斎場が利益を得るのが難しくなった。そこで斎場側は、葬儀社に対しひつぎの覆い、香、ろうそくなどの葬礼用品や花の購入を強制し、葬儀社側は追加費用を遺族に転嫁するという悪循環が起こっている。

 K大学病院葬礼場の関係者は「ここ5年間で、葬儀社が雨後のたけのこのように増え、収益は目に見えて減少した」と語った。また、H葬儀会社の営業課長は「十あったら十、全ての斎場がひつぎの覆い、香、ろうそく、花などを押し売りしているため、営業が大変」と語った。

 葬儀社と斎場が互いに利権争いの原因を相手になすり付け合っている一方で、被害は全て遺族に降りかかる。韓国消費者院のイ・ソンドン次長は「遺族は不利益を被ってでも大事(葬礼)を済ませ、その後は激しく苦情を提起したりしない。実際には、これまでに寄せられた苦情よりも被害に遭ったケースは多いはずだ」と語った。

ソク・ナムジュン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/03/07/2012030701357.html