有給休暇

正直、私自身、有休をほとんど取らず(取れず)に働かされる環境に身を置いたこともあります。ですが、「仕事が回らなくて有休を取れない現実がある」というのと「仕事が回らないから有休を取るのを減らすべきだ」というのとでは、ぜんぜん話が違ってくると思うのですけどね。

一般職が有休を取りすぎて困る! 何とか阻止できないか
2012/12/10 18:45

Q&AサイトのOKWaveに、こんな相談が載っていました。質問者のtotto3232さんは、入社3年目の総合職。最近、中途採用で入社してきた一般職の女性たちが有給休暇を取りすぎていると不満に思っています。

有休を取得する人が増えると、業務が回らなくなってしまいます。他の課の人に手伝ってもらったり、追加コストが発生しない課長が休日出勤をして凌がなければなりません。

このままでは課長が身体を壊してしまいそうです。また、他の課に手伝ってもらいながら自分たちが有休を多く取っているのは、バランスを欠いているように思えてなりません。

頑張るのは経営者のためでなく「自分たちのため」

もともと質問者さんの会社では、総合職は基本的に有給休暇を取らず、一般職も消化率は低い慣習があるのだとか。しかし、会社に有休完全取得を前提にした人員を用意させるのは「現実的ではない」のだそうです。

「どうにか一般職に有休取得を減らしてもらう方法はないでしょうか?」

みんなで有休を取ったら会社が傾くのを知っていて、多くの人が取らずに協力している。それなのに「権利だから」と協力しない一部の一般職の行動は困る、という主張です。

回答者からは、「経営サイドの意向を暗黙のうちに汲んで有給を取らせないようにしようとする質問者様は、少なくともその一般職の皆さんにとっては権利を阻害する敵」(ohkinu1972さん)といった批判が飛んでいますが、そうではないと反論しています。

「会社が傾かないように協力しているのは、経営陣を思ってではなく自分たちのためにであり、非協力的な人たちは結果として会社を潰さないように努めている他の多くの社員に非協力的なのです」

他の回答者への反論でも、「身勝手に自分のプライベートを優先させてその他大勢の社員に迷惑をかけている」「節度を保てず、あるだけ権利を主張して会社を潰そうとして他の社員の足を引っ張って(いる)」と、表現をさらにエスカレートさせています。

「会社が潰れて困る」かどうかの違いかも

海外在住のkanakyu-さんは「こちらでは有休完全取得を前提に人員をそろえないなら会社の責任」、ohkinu1972さんは「質問者様も無能な経営者に騙されてこき使われているだけ」とコメントを寄せています。

しかし質問者さんは、これにも真っ向から反論します。

「経営者は労働者の敵ではありません。…役員は先輩の先輩の先輩であり、会社の制度は先輩の先輩が作ってるわけです。10年後も20年後もリストラしないでみんなで繁栄していけるようにどうしたらいいか、そうやってみんな同じ方向を向いてそれぞれで考えて仕事をしているのです」

さらには「有休取得の風土が蔓延したら、会社の体力はがた落ち」と憤りますが、残念ながら質問者さんに賛同するコメントはほとんどありませんでした。

おそらく中途採用の一般職の人たちは、割の合わない仕事はしたくないし、「ここが潰れたら他に行けばいい」と思っているのでしょう。一時的な頑張りで事態が改善するならば、少しは我慢もできますが、それが当たり前に求められるようになれば……。

一方で質問者さんは「この会社が潰れたらどうしても困る」と考えているのですから、すれ違いは避けられそうにありません。

http://www.j-cast.com/kaisha/2012/12/10157476.html?p=all

元ページの回答や記事に付いているコメントとともに、こちらの記事へのリンクがその記事のページにあるのも興味深いところです。

有休の取得は権利ではなく「義務」? 労働法学者の異色提言
2012/7/30 11:00

「休暇を取ることは義務である」と題した異色の記事が、専門誌に掲載されている。筆者は名古屋大学で教鞭をとる労働法学者の和田肇教授。

これまで学生には「年次有給休暇の取得は、労働者の権利である」と教えてきたが、権利を行使しない弊害は社会的に大きいので、これからは義務と捉えなおして取得を促進すべきではないかと提言している。

「年休未消化」は労働社会を貧弱にし、雇用創出を阻む

提言を掲載したのは、労働政策研究・研修機構が発行する「日本労働研究雑誌」という専門誌。2012年8月号は「日本人の休暇」という特集を組んでいる。

和田氏は「年休権不行使」の弊害を3つあげる。1つ目は「休暇が貧弱な雇用社会では、労働社会もまた貧弱となる」可能性があること。年休の未消化は、文化の創造や自己啓発の機会を労働者から奪い、また労働者が放棄していることを意味するという。

2つ目は、「雇用の創出を阻んでいる」可能性があること。労働者全員がほぼ100%年休を取得すれば、雇用創出の効果は相当なものになることが予想される。大量の年休未消化は、若年者労働者に安定した良好な雇用の場を提供するという政策に反する。

3つ目は、「電力エネルギー消費」削減の観点からだ。7月中旬から8月に事業場一斉休暇を取得させれば、夏場の電力ピークの消費量を抑えることができる。名古屋大学なら一斉休暇で1日500万円の経費削減になるという。

和田氏は、特に「雇用創出」と「電力削減」は企業のモラルだけに依るのではなく、

「年休取得率が90%に満たない場合には、国の雇用対策への協力として、未達成分を納付金として支払わせる」

といった方法を取り、労働基準法にも「使用者は、労働者との調整を経た上で、年次有給休暇を計画的に付与しなければならない」とうたうべきだという。

「クビになりたくないので有休が欲しいなんて言えない」というのが、いまの労働者の置かれた現実だ。しかし今後は、有意義な休暇を取らせて有意義に働かせるという新しい発想の会社が生まれてきてもいいのではないか。

http://www.j-cast.com/kaisha/2012/07/30140997.html