韓国大統領選挙は朴槿恵が制す

当初、投票率が予想以上に高くなったことから、若者世代の支持を集める文在寅に有利かと思いましたが、意外とあっさり「朴槿恵当確」が出ましたね。

安哲秀支持者がもろ手を挙げて支持に回るほどの魅力が文在寅にはなかったこと*1や、保守支持層が危機感を持って結集したことなど、いろいろ分析はできるでしょうが、そんなことは専門家やテレビで解説するような人にお任せしましょう。

2012年12月20日02時01分
韓国大統領に朴槿恵氏 初の女性、接戦制す


当選が確実になり、セヌリ党本部で支持者に笑顔を見せる朴槿恵氏=19日午後10時24分、ソウル、代表撮影

【ソウル=貝瀬秋彦】韓国大統領選は19日に投開票され、保守系の与党・セヌリ党朴槿恵(パククネ)氏(60)が、革新系の最大野党・民主統合党の文在寅(ムンジェイン)氏(59)との大接戦を制し、当選を決めた。初の女性大統領が誕生する。保守政権が継続するが、朴氏は選挙戦で李明博(イミョンバク)政権の政策を厳しく批判しており、経済政策などに変化が出てきそうだ。

 朴氏は午後11時50分ごろにソウル中心部の広場に姿を見せ、「だれもが夢を実現できる国民幸福時代を必ず開く」と宣言した。文氏は党本部で「政権交代を望む国民の熱望を実現できなかった」と敗北を認めた。朴氏は故朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の娘で、初の親子2代の大統領にもなる。来年2月25日に就任する。

 今回の選挙では、「新しい政治」を掲げて無所属での立候補を模索した安哲秀(アンチョルス)氏(50)が、既成政党に不信を抱く若者や無党派層に支持されたが、途中で断念して文氏を支持。文氏は先行する朴氏を急激に追い上げたが、有権者は政界で長く活動し、「危機を克服できる準備された大統領」とアピールした朴氏の手腕に期待を託した。

 中央選挙管理委員会によると暫定投票率は75.8%で、前回2007年の63.0%、02年の70.8%を大きく上回った。無党派層の一部が朴氏の支持にまわったほか、危機感を抱いた保守層が結束して得票を押し上げた可能性がある。

 今回の選挙では、現政権下での経済格差の拡大を受け、大企業偏重の経済政策を改める「経済民主化」が大きな争点になった。文氏が大企業への厳しい規制策を打ち出したのに対し、朴氏は経済の停滞を招かない程度の規制を主張し、急激な変化を望まない層を引きつけた。

 対北朝鮮では、南北関係の行き詰まりを招いた現政権の強硬路線への批判を意識して「対話が必要」としたが、「人工衛星の打ち上げ」と称する長距離弾道ミサイル発射実験を受け、抑止力の強化をより強く打ち出した。ただ、関係改善への意欲は示しており、現政権との差別化を図る可能性が高い。

 日本の政治家に知人が多く、対日関係には神経を使うとみられる。

 朴氏は大邱出身。父親が大統領の時代に大統領府で暮らし、母が74年に凶弾に倒れた後はファーストレディー役を務めた。5年前の前回大統領選では、党内の公認候補選で李大統領に敗れた。

 盧武鉉ノムヒョン)前政権で秘書室長などを務めた文氏は、朴氏を「古い政治の象徴」「貴族候補」などと批判して5年ぶりの政権交代を目指したが、及ばなかった。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201212190843.html

2012年12月20日03時00分
朴氏、両親の面影が支持引きつける


ソウルで19日、大統領選投票の列に並ぶ韓国の有権者たち=AP

【ソウル=箱田哲也】与党セヌリ党朴槿恵(パククネ)氏(60)が激戦を制し、女性として初めての当選が確実になった韓国大統領選。信念を曲げない姿勢で、朴氏に両親の面影をみる高齢者や保守層の支持を引きつけた。保革に二分された「二つの韓国」をまとめ上げられるのか。

 政権交代を求める世論の逆風をはねのけ、朴槿恵氏は勝利した。愚直なまでに原則と信念を曲げない一途な政治姿勢への評価に加え、高齢者層に強く残る亡き父と母への思い出を十分に生かし、強固な保守層を守りぬいたことが大きかった。

 大統領の座を目指す朴氏の歩みは、5年前、党公認候補選で李明博(イミョンバク)大統領に負けた時から再スタートをきった。前回は安保への不安など、女性候補であることへの抵抗感を意識し、「強い指導者」像を演出し続けた。それは、強権で民主化勢力をねじ伏せた父の姿を思い出させた。

 だが貧富格差が拡大し、中間層が細った今回は違った。国民の多くの嘆願に耳を傾け、今も「国母」と慕われる母の陸英修さんをほうふつさせるように、視点を庶民におろした。

 不人気の李政権を反面教師とする形で、南北や経済政策ではむしろ革新陣営の主張を先取り。南北問題では有力ブレーンが「文候補の主張とほぼ同じ」と言って回るなど対話重視の姿勢を強調したほか、真っ先に福祉の拡充や財閥主導の経済構造の改革を唱えた。

 終盤、次々に繰り出す改革公約に保守層の揺れが見えると、政策を微調整。北朝鮮が事実上の弾道ミサイルの発射実験を強行した後は、反発する保守層に配慮して強い姿勢を強調した。

 野党側の文在寅(ムンジェイン)氏と安哲秀(アンチョルス)氏が候補一本化をめぐってぎくしゃくし、最後まで一枚岩になれなかったことにも大いに助けられた。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201212191047.html

個人的には、これで朴槿恵が「国立墓地の設置および運営に関する法律」第5条に基づく顕忠院への安葬資格を得ることを、慶祝したいと思っています。

朴槿恵が朴正熙・陸英修と同じ墓域に眠るためには、この資格を得る必要がありましたからね。大統領となれば、後ろ指を指されることなく、正々堂々と、両親とともに眠ることができます。






現代韓国史の中で、国民国家形成に大きな役割を果たし、そして自らも国家に翻弄された一つの家族の「恨」の解かれる道筋が、今回の選挙によってつけられたと言えるでしょう。ある意味でそれは私的な家族の問題とも言えますが、一方で全羅道の「恨」を背負った金大中大統領の誕生に匹敵するような한풀이となるような気もします。

来年からの5年間で朴槿恵がどのように大統領職を務めるかはわかりませんが、それはおそらく、自らの棺の蓋が閉まるまでのタイムスパンで考えられたものとなるはずです。そのことを思えば、もしかしたら世俗的・刹那的な価値観を超越したところからの判断が、見え隠れするようになっていくかもしれません。

*1:サンプル数1のリサーチによる。