もはやLCCは、その是非を論じる段階ではない。

…と思うんですけどねえ。嫌なら別に無理して乗る必要はありませんし、価格と引き替えにするものに納得できる人だけが乗ればいいわけです。それでも今後の成長が十分に見込めるだろうこと、関空でピーチの様子を見てればわかると思います*1

格安航空、拠点で明暗=ピーチ順調、後発2社は苦戦−就航1年

 国内初の格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションは1日、就航1年を迎える。既存の航空会社を大幅に下回る低運賃を売りに順調に顧客を獲得。ピーチは関西空港に拠点を構え、首都圏の成田空港を本拠地とする後発のジェットスター・ジャパンエアアジア・ジャパンに比べて不利との下馬評もあったが、新たな需要の掘り起こしにも成功した。一方、後発2社は成田の離着陸制限などが響き、苦戦が目立つ。(2013/02/28-16:30)

http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2013022800698

こういう現象もLCCにはつきものなわけですが、価格重視の利用者がホテルなどに宿泊するニーズがあるとも思えません。記事にもあるように早朝深夜の交通アクセス便の整備が現実的な策でしょう。もともと「24時間空港」を標榜していた関空なんですし。

関空ベンチ泊急増、格安航空の早朝・深夜運航で


空港のベンチで夜を明かす旅行客。ピーチ就航後、大幅に増えた(関西空港で)=宇那木健一撮影

 関西空港で一夜を明かす利用客が増えている。

 関空を拠点に昨年3月に就航した格安航空会社(LCC)「ピーチ・アビエーション」が、空港へのバスや電車が少ない早朝も運航するなどしているためで、1日平均80人と前年比で5倍以上に。

 就航から1年。周辺のホテルには、ピーチの利用客を当て込んだ動きも出ている。

 旅客便の離着陸が終わった午前0時過ぎ。ひっそりした関空ターミナルに、高校3年の男子(18)(福岡市)がギターを抱えてやって来た。大阪でライブをした帰りで、7時間後の便に乗るという。「朝、来ても時間ギリギリになる。乗り遅れたら困るから、ここで1泊します」と、待合のベンチに横になった。

 近くで本を読んでいた女性会社員(25)(京都市)は、旅先の沖縄からの到着が遅れて帰る手段がなくなったといい、「しんどいけど朝まで待ちます」。

 新関空会社によると、1月に空港で夜を明かした旅行客は1日平均80人で、昨年同期(15人)の5倍を超えた。多くの客を運んで料金を下げようとするピーチが、早朝から深夜まで運航しているためという。

 午前6時台にチェックインが必要なピーチの便は7便。最も早いのは午前6時10分までの台湾便で、大阪都心部からの公共交通機関で間に合うのは梅田からのバスしかない。またLCCは過密ダイヤで遅延が生じやすく到着が深夜になることも。ピーチは「早朝、深夜便充実を鉄道、バス各社に働きかけたい」とする。

(2013年2月28日16時51分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130228-OYT1T00968.htm

関空LCCの影響が目に見えて及んでいるのが神戸空港で、これは単純にピーチ・アビエーションスカイマークとの関係、特に九州便での競合関係が生じた結果でしょう。「神戸空港スカイマーク」というコンビは、使ってみるとなかなか便利でいい*2のですが、「関西空港ピーチ・アビエーション」という勢いのあるコンビにいかに対抗するかですねえ。やるとすれば、価格とイメージでの対抗が軸になるんでしょうが、今のところは両方とも明らかに劣勢です。そこで押し返しつつ、プラスアルファで神戸空港の独自性をどう打ち出していきましょうか。

いっそ、「JALANAも飛ばない空港」として、丸ごとLCC専用空港を目指した方がええんやないかなあという気もします。ソラシドエア(スカイネットアジア航空)とエア・ドゥが就航するというのであれば、国内にはまだフジドリームエアラインズスターフライヤーなどもあります。発着枠の規制緩和はもちろん前提となりますが、新規就航の余地はまだあるように思います。

神戸空港開港7年 関空にLCC就航で旅客減


開港7年を迎えた神戸空港関西国際空港にLCCが就航した影響で利用客が伸び悩む(昨年1月撮影、本社ヘリから)

 神戸空港は16日、開港7年を迎えた。今秋には空港島の造成事業が当初予定より6年遅れで完了するが、利用客数は、関西国際空港に就航した格安航空会社(LCC)の影響で伸び悩む。赤字を穴埋めするために、空港を運営する神戸市は3年連続で企業会計から繰り入れをしており、〈視界不良〉は依然続く。(藤基泰寛、中谷圭佑)

■旅客数

 利用客数は、2007年度の297万人をピークに減少が続いたが、11年度は256万人と4年ぶりに増加に転じた。しかし、昨年3月、関空に国内初のLCC「ピーチ・アビエーション」が就航したことで状況は一変した。同年5月以降、利用客数は前年割れが続き、12年度は1月末現在で201万人と前年度同期比5・6%減となっている。

 神戸空港の路線は札幌、茨城、東京(羽田)、長崎、鹿児島、沖縄の6路線。関空のLCCとは札幌、長崎、鹿児島、沖縄の4路線で競合しており、完全に旅客を奪われた形だ。特に低価格を売りにしてきたスカイマーク(18便)は苦戦を強いられており、60%以上を維持していた搭乗率が55%に落ち込んだ月もあった。

■空港会計

 市は13年度当初予算案で空港の管理収支費に過去最高の25億8000万円を計上した。空港建設にかかった借金の返済に約20億円かかるが、着陸料収入は6億1800万円と開港当初に見込んだ3分の1程度にとどまっている。このため市は11年度から「新都市整備事業会計」の繰り入れを始め、13年度は7億8400万円(前年度当初比3100万円増)をつけた。

 着陸料が伸び悩む理由の一つとして、市は1日30便の発着枠規制を挙げる。規制で増便が見込めず、収入が増えないのだ。市は以前から国に対して規制緩和を求めているが、国土交通省は「周辺自治体を含めて地元合意ができていない」と応じる気配はない。

 矢田立郎市長は「規制がある限り、(企業会計から繰り入れる)こういう予算の組み方を続けざるを得ない」と説明している。

■展望

 明るい材料としては、スカイネットアジア航空宮崎市)とエア・ドゥ(札幌市)が6月に、沖縄線と札幌線を就航させる。両社とも関西初進出だ。いずれも全日空と共同運航のため、単純に便数が増えるとは言えないが、市は「様々な航空会社が就航することで注目が集まり、新たな利用者の掘り起こしにつながる」と期待し、「経済界などと連携してPRにも力を入れたい」とする。

 一方、10年5月に撤退した日本航空にも再就航を呼びかけているが、残りの発着枠が少ないことから、難色を示されているという。

 利用客はどうか。加古川市の会社員新川敏也さん(42)は「国際線が就航すれば、需要が増えるだろう。神戸の知名度も上がるはず」と言い、神戸市内に帰省する際、よく使うという宮崎県都城市の会社員男性(34)も「転勤が多いので多くの便が就航すれば帰省しやすくなる」と話す。

 上村敏之・関西学院大経済学部教授(公共経済学)の話「企業会計に依存している現在の経営状態は非常に厳しいが、発着枠の規制が緩和されなければ抜本的な改善も難しい。批判は受けるだろうが、例えば借金の返済に市税を投入するなど構造的な改革をしなければ今後、経営が行き詰まる可能性がある」

(2013年2月17日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hyogo/feature/kobe1361108595335_02/news/20130217-OYT8T00883.htm

関西空港でも、これくらいの努力はしているわけですからねえ。

関空会社、「アジア一のLCC空港」に認定
2013.2.1 20:55

 新関西国際空港会社は1日、英国に拠点を置く国際会議運営会社のテラピン社から、格安航空会社(LCC)への対応で優れた功績を上げたアジアの空港に贈られる「ロー・コスト・エアポート・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことを明らかにした。

 日本初の本格的LCC、ピーチ・アビエーションが拠点としていることや、LCC専用ターミナルを整備したことなどが評価されたとみられる。最終選考には新関空会社のほか、フィリピン・クラーク国際空港など3空港が残ったという。

 新関空会社の安藤圭一社長は、「受賞を糧に、よりコスト競争力を強化する」と話した。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130201/biz13020120560034-n1.htm

現在のところ、国内のLCCを見る目と、海外でのLCCの現実との間にはまだかなりの落差があるように見えます。こういうのを、ビジネス的には「商機」と言うのではないんですかね。

LCC離陸1年「将来はバラ色ではない」? 低料金で拡大も安全面で不安
2013.2.28 21:18


格安航空3社の機体。(上から)エアアジア・ジャパンピーチ・アビエーションジェットスター・ジャパン

 国内初の格安航空会社(LCC)で、全日本空輸などが出資するピーチ・アビエーションが3月1日に就航1周年を迎える。同社を皮切りに国内LCC3社が、破格の低運賃で激しい競争を展開し、新規需要を掘り起こした。一方で欠航が頻発するなど安全面や運航面に不安を抱え、搭乗率が思うように上がらない社もあり、完全に根づくまでにはまだ時間がかかりそうだ。

 ピーチは昨年3月、関西国際空港を拠点に福岡、札幌を結ぶ2路線で運航を始めた。機内サービスが有料で座席が窮屈な一方で、徹底したコスト削減により、関空−福岡線で片道2万円程度の大手に対し、3590円からと圧倒的な低価格を実現。直近の搭乗率は77%程度と、目標の70〜75%を上回る。利用者は2月27日に1カ月前倒しで累計150万人を突破。まずは無難な離陸を果たした。

 井上慎一最高経営責任者は「これまで飛行機に乗ったことがない人も利用している」と目を細める。

 現在は国際線3路線を含めて計8路線を運航し、今後も関空−仙台など4路線を追加する計画だ。那覇や福岡と東南アジアを結ぶ路線の開設も視野に入れる。

 国内LCCでは、全日空子会社のエアアジア・ジャパンと、日本航空が約3分の1を出資するジェットスター・ジャパンも路線を拡大。エアアジアは昨秋、国際線にも進出した。

 ただ、課題も多い。ジェットスターは昨年11月、社内規定を満たしていない整備士を責任者に選任して国土交通省から厳重注意を受けたほか、2月にはエンジン故障で欠航を余儀なくされた。エアアジアも欠航が頻発し、運航面に不安を残す。

 一方、「薄利多売」のビジネスにとって重要な搭乗率も一部で低迷。エアアジアは1月の搭乗率が約57・7%と低迷し、目標だった初年度の黒字化を断念した。

 ジェットスターは搭乗率を高めるため、2月26日に日航と提携。日航の国際線に乗り継ぐ便をセットで販売してもらう戦略に出た。出資関係があるとはいえ、LCCが大手と組むのは異例だ。2社に比べ順調なピーチも初年度は関空の着陸料が免除されており、単年度の黒字化は2年目と先だ。

 航空業界に詳しい早稲田大学の戸崎肇教授は「旅行予約サイトと組んだチケット販売など、日本市場に合わせる努力が必要。LCCの将来はバラ色ではない」と指摘する。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130228/biz13022821190046-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130228/biz13022821190046-n2.htm

例えば、済州航空など、国内・国際合わせてもうこれだけの路線で飛んでいます。

http://www.jejuair.net/jejuair/ko_KR/storyjejuair/route_introduce.jsp

LCCにとって日本路線は、開拓の余地が大きい、しかし一方でワンオブゼムに過ぎない市場なわけです。

LCC、日本で「空中戦」“空白域”に海外勢注目 顧客争奪
2013.2.14 08:56

 格安航空会社(LCC)誕生2年目の国内航空市場に、シンガポールや韓国、中国などのLCC勢が進出機会を狙っている。LCC激戦区のアジア太平洋地域の中で、日本市場のLCCのシェアが低く、事業拡大の余地が大きいからだ。これに対し、日本のLCC勢は路線網のさらなる拡大に着手し、地盤を固める戦略で迎え撃つ構えだ。(フジサンケイビジネスアイ


 ◆10年後にシェア40%

 「この会議で、これだけ日本が話題になったのは初めてじゃないか」

 1月31日〜2月1日にシンガポールで開催され、アジア太平洋地域のLCC首脳・幹部らが情報交換を行った「世界LCC会議」。日本のLCC、ピーチ・アビエーションの関係者はこう感想を漏らした。

 アジア太平洋地域の「年間最優秀LCC対応空港」として、昨年10月にLCC専用ターミナルを設けた関西国際空港大阪府泉佐野市)が日本勢として初受賞。また、日本−シンガポールの直行便を飛ばしたとして、豪ジェットスターが「年間最優秀LCC新路線就航会社」に選ばれた。

 日本の航空市場は昨年が「LCC元年」で、LCCの市場シェアは「3%前後」(国土交通省)。一方、シティバンクのリポートによると、アジア太平洋地域全体で、LCCが占める航空市場シェアは現状で24%。アジア太平洋の消費者は航空機の利用には「価格に敏感」(シティバンク)との見方から、今後10年間で40%前後までシェアが伸びると予測される。

 それだけに、日本市場は遅れてきたLCCの「ホワイトスポット(空白域)」。他社に先駆けて新路線を就航し、市場をおさえていけば、商機は広がるとみる。日本政府も、経済成長戦略の一環で、LCC市場を2020年までにシェア25%程度に引き上げるという目標を打ち出している。

 ◆相次ぎ新路線

 昨年6月にLCC事業を開始したシンガポール航空系のスクートは、LCCでは珍しく中大型機「B777」(402人乗り)を使い、同10月末から成田−シンガポール台北経由)を1日1往復で就航。同社関係者によると、第2の日本向け路線として、早ければ年内にも関空シンガポール台北経由)の新路線を検討している。

 キャンベル・ウィルソンCEO(最高経営責任者)は「次の新路線をまだはっきり決めたわけではないが、今後、航空機材を増やしていく中、日本路線を充実させる」という考えを示している。

 日本路線をいずれも台北経由とする点は、親会社のシンガポール航空の日本直行便との食い合いを避ける意味があるほか、「シンガポール、台湾からの海外渡航需要が高い」という点も踏まえる。

 韓国のLCC最大手、済州(チェジュ)航空も「北東アジアでナンバーワンのLCCになる」(首脳)という野心を達成するには、隣国の日本市場は、「今後のコアマーケット(中核市場)」との認識だ。

 2015年までに韓国発着で、新たに成田、札幌などの日本路線を設ける計画を明らかにした。韓国では日本より多いLCC5社がしのぎを削っており、まだ競争が始まったばかりの日本市場は、地元の韓国に比べても攻略しやすいとみる。

 また、中国の春秋航空も「日本市場は重要」(王●(ワン・ユウ)副社長)という認識を示す。早ければ今年10月から日本法人を通じて成田空港を拠点に日本の国内線市場に参入し、来年以降は日本発着の国際線を飛ばす計画を描く。

 ■低運賃だけでない差別化が鍵

 ただ、昨年9月、沖縄県尖閣諸島国有化をめぐる日中関係の悪化で、上海発着の3路線(茨城、高松、佐賀)の搭乗率は通常の「9割以上」から悪化し、同社のビジネスモデルに影響が出ている。“日本撤退”の可能性も報道された。

 一方、迎え撃つ日本勢では、「日本初のLCC」との自負がある全日本空輸系のピーチは、関空に続き、第2拠点に那覇空港を設定した。路線網は「4時間圏内」を基本原則とする同社では今後、那覇発着の新路線を充実させる検討を進めるなど、海外勢との競争に備える。

 エアアジア・ジャパンジェットスター・ジャパンの残る日系2社は、3月末からLCCの空白域である中部国際空港発着の新路線を就航する。日本市場という足元を固める戦略に出る。

 「群雄割拠の戦国時代」(小田切義憲エアアジア・ジャパンCEO)に入ったLCC事業の勝負を分けるのは「運賃の低価格だけではない差別化戦略」(航空アナリストの杉浦一機氏)という。(西川博明)

●=火へんに日の下に立

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130214/biz13021409000010-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130214/biz13021409000010-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130214/biz13021409000010-n3.htm

*1:成田は知らないので、ジェットスターエアアジアを見ていてわかるかどうかは、私にはわかりません。

*2:予約サイトの使い勝手や単純明快な価格設定、神戸の交通拠点である三宮からのアクセスなど…。