執筆者本人の問題、では済まされない話

このニュース、「有名人の疑惑」というところから始まっているせいか、盗作した論文で学位を取った本人に話が集中しているきらいがあって、そんなものの提出を認めてしまった指導教員や、そんなものに学位を与えてしまった大学の責任、という問題が後回しになってしまっているような気がします。どちらも事件に対する重い責任を負っている当事者であるはずで、他人事のようにコメントを出したり、被害者面したりしていい道理は間違ってもありません。

そのへんの追及が甘いのも、こうした事態を招く一因になっているんと違いますか。

記事入力 : 2013/03/22 13:33
韓国社会をむしばむ「盗作不感症」

盗作に罪の意識を持たない韓国、相次ぐ論文スキャンダル

 政治家・教授・牧師など、有名人の論文盗作は今や日常茶飯事になった。昨年は、文大成(ムン・デソン)国会議員(37)が論文の盗作疑惑のためにセヌリ党を離党した。最近では、ソウル大学政治外交学部のキム・ヨンチャン教授が論文を盗作していたことが判明し、ソウル大学の歴史上初めて盗作が原因で辞任した。さらに今年2月には、大統領府(青瓦台)秘書室長に内定していた許泰烈(ホ・テヨル)氏の博士学位論文盗作疑惑が持ち上がり、「愛の教会」の呉正賢(オ・ジョンヒョン)牧師も論文盗作の事実が明らかになった。韓国社会が、良心を売る不正行為といえる論文盗作に対し、不感症に陥っているわけだ。

 論文の盗作が明らかになったスター講師の金美敬(キム・ミギョン)氏は、修士号取得者の間で広く用いられている典型的な方法で盗作を行った。似たようなテーマで書かれた2−4年前の論文から、古い論文を引用した文章や段落をそのまま書き写すことで、あたかも古い論文を直接参照して書いたかのように偽装するという手口だ。直接の盗用対象となった中間段階の論文の存在を知らなければ、当の論文は古い論文を参照し、きちんとした方法で書かれたもののように見える。しかし中間段階の論文の文章・脚注・引用までそのまま書き写しているのだから、この論文は明らかな盗作だ。金氏は、ある地方大学の教授が1995年に発表した研究論文を書き写すと同時に、その論文を引用した2003年と04年の修士学位論文もそのまま書き写して利用した。ある大学関係者は「アンケート調査、統計などデータだけをこっそり入れ替え、幾つかの論文を巧みにつぎはぎする手法は、主に論文代筆業者の間で用いられる手。特に、社会人生活を送りながら大学院に通う場合、一種の“論文コピー工場”といえる代筆業者に論文を任せるケースが多い」と語った。

 代筆を担う業者とのコンタクトは、インターネット上で簡単にできる。19日にポータルサイトで「論文代筆」「論文代行」「論文コンサルティング」「論文お助け」などの用語を検索したところ、数十の業者がヒットした。ある業者は「文章を書くことに慣れていない方や、急ぎの日程で時間的に余裕がない方のために、論文作成を体系的に指導します」と称し、学位論文学術論文、研究論文いずれも指導可能だとPRしていた。別の業者は「お客さまの研究目的に合うテーマの選定から、論文の編集および校正まで責任を持ちます。提出機関の様式に合わせて組み立て、目次から脚注、参考文献まで“総合サービス”を提供します」と宣伝していた。事実上、代筆するということだ。ある代筆業関係者は、記者の電話インタビューに対し「現時点までの進行状況をメールで送ってもらえたら、それに合わせて論文を作成できる」と語った。

 インターネット上のあるコミュニティーサイトには「修士学位論文を代筆してくれる業者もいるそうですね。お金のない私は…」という書き込みがあった。この書き込みには「代行のクオリティーによって100万−300万ウォン(約8万6000−25万7000円)までいろいろ」「代筆する学生とか、論文審査を通過させる見返りに金を要求する教授とか(泣けてくる)」「担当教授じゃなくても、1次審査・2次審査・最終審査のときに、ほかの教授たちもみんな気付いてる」などさまざまなコメントが付けられていた。

 こんなことになったのも「修士なら論文の代筆を依頼したり盗作したりしても大丈夫だ」という意識が、韓国社会にはびこっているからだ。

 ソウルのある名門私立大学の博士課程に在籍している学生は「博士はともかく修士だと、教授はおおむね形式だけ見るというやり方なので、(学生も)論文を綿密に書かない。ほとんどの部分を書き写して出しても引っ掛からない」と語った。およそ10年前に修士の学位を取得したというある社会人は「ある日、自分の論文を検索してみたら、5人がそのまま書き写して修士の学位を取っていたと分かって驚いた」と語った。ある大学教授は「一般の大学院ではない特殊な大学院は、もともと金を取って学位を与える場所なのに、今さらなぜそういうことを言うのか」と、全く問題視していないようだった。さらにこの教授は「政治外交学部のキム・ヨンチャン教授の論文盗作事件が起こったことで、ソウル大学を中心に大学本部レベルでの全般的な論文チェック強化案が出されているが、現実的には難しいという声が多い。現時点では、学者や学生の良心に頼るしかない」と語った。



ヤン・スンシク記者 , ウォン・ソンウ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/22/2013032201127.html

記事入力 : 2013/03/22 13:34
有名人による論文盗作が相次ぐワケ

名誉欲の強い社会で学位は好都合、大学は金もうけの手段

 韓国はなぜ「盗作の国」となってしまったのか。専門家は根本的な原因として「いびつな名誉欲」を挙げる。ソウル大学社会学科の鄭根埴(チョン・グンシク)教授は「韓国で修士・博士の学位を取得することは、社会的地位を向上させ名誉を得たいと考える人たちにとって、非常に都合のよい効果的な手段だ」と語る。つまり修士・博士学位の取得は「高学歴」を簡単に手にするための手段となっているのだ。

 このような雰囲気に便乗する各大学は、学位の授与を「金もうけの手段」として利用し、多種多様な「特殊大学院コース」を立ち上げた。これも最近の相次ぐ論文盗作の原因になっている。ある大学教授は「私立大学が立ち上げた『特殊大学院』や『最高経営者コース』などは、大学の名声を利用した金もうけの手段だ。これくらいのことは今や誰もが知っている」と述べた。

 そのため論文やレポートなどに対する検証は当然ずさんになる。教授たちは資格不足や能力不足の学生が提出した論文について、盗作された可能性が高いことを知りながらも、学生である以前に大学に収益をもたらす「顧客」と考えているため、学位論文などの盗作を黙認しているのだ。

 修士論文の盗作が明らかになったスター講師の金美敬(キム・ミギョン)氏は「夜間大学院の雰囲気はみんなよく知っているはずだ。盗作などの不正行為を悪いことと考える風潮はない。教授たちも論文を書くだけでよくやったと考えている。ましてや論文の内容など教授たちはほとんど神経を使っていない」と話した。

 韓国の大学では学部生時代から盗作を気軽に考える風潮があるが、これが大学院でも続いているという指摘もある。インターネットにはレポートのデータベースがあり、必要ならそこからいくらでもダウンロードできる。そのため一定レベル以上の大学で学生がレポートを提出する場合、正直な「レポート作成」よりも機転の利いた「つなぎ合わせ」の方がはるかに役に立つし高得点が得られる。学生たちはレポートの内容に基づいて成績が付けられるからだ。

 ソウル市内のある大学に在学中のLさん(25)は「自分から図書館に足を運んで資料を探し、レポートを書く人間はバカだ。ポイントだけを把握し、内容が同じか、あるいはよく似たテーマのレポートをいくつかダウンロードし、これらをつなぎ合わせて提出する方が、時間もはるかに節約できるし成績も良くなる」と話した。

ウォン・ソンウ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/22/2013032201131.html

記事入力 : 2013/03/22 13:37
先進国の大学、入学直後から盗作防止教育を徹底

1回でも盗作が摘発されると、その人物の全ての論文が否定される

 2011年5月に米国ミシガン州立大学で、ある教授による論文盗作が摘発され、この教授は解雇された。同大学の調査委員会はこの論文が発表されてから5カ月で盗作の事実を確認し、裏付けも取った。発表された論文を監視する仕組みが常に機能しているからこそ、摘発が可能だったのだ。このように海外の大学では盗作の監視も処罰も非常に厳しい。1回でも盗作が摘発されると、それまでにその研究者が発表した全ての論文が否定されるケースも珍しくない。

 海外の大学では新入生に対する盗作防止の教育に力を入れている。韓国で学部の2年生まで終え、その後スポーツ経営学を勉強するため英国の大学に留学したハン・ソンホさん(28)は「論文の書き方は1年生の必修科目で、1学期をかけて徹底的に指導された。おかげで1行でも他人のものを流用するときには、その出処となる文献や論文のページまで明確にする習慣が身についた。『盗作は犯罪』という言葉は英国での4年間に数え切れないくらい聞かされた」と述べた。

 これに対して韓国では盗作に寛容だ。盗作が摘発されるケースそのものが珍しいだけでなく、明確な証拠がない限り、その執筆者は処分を受けない。このような風潮のためか、たとえ盗作が摘発されてもしばらくはシラを切るケースも多い。もちろん韓国の大学でも論文の書き方を指導しているが、効果はその講義の時だけだ。学生たちは他の講義では他人の論文やレポートをそのまま書き写しており、また脚注や引用元を明確にしなくても、それが問題にされることもなければ処罰を受けることもない。

 交換留学生としてドイツから韓国にやって来たロザンナ・サレスさん(28)は「韓国で学生たちが他の文献をそのまま書き写し、それを卒業論文として提出するのを見て驚いた。ドイツではこんな論文を提出しても受け付けてもらえないのはもちろん、何らかの処罰を受ける。ところが韓国では盗作論文を提出してそのまま卒業してしまっている」と話した。

 2009年に米国UCLAを卒業したYさん(26)は「あちらでは盗作に対して非常に敏感なので、他人の文章を勝手に書き写すことなど考えたこともない。韓国でも米国でも、盗作が摘発されるケースは決して多いわけではないが、その理由が違う。韓国では盗作の摘発に関心がないからで、米国では誰も盗作しないからだ」と語った。

パク・サンギ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/22/2013032201138.html

記事入力 : 2013/03/23 12:19
他人の論文で博士号を取得、公務員に罪悪感ゼロ

「授業には出席だけして論文は代筆」

 「最高のスター講師」として知られる金美敬(キム・ミギョン)氏(48)の修士学位論文をめぐって盗作の事実が判明したのに続き、今度は中央省庁の官僚の博士学位論文について盗作疑惑が浮上した。ソウル市内の私立M大学は20日、「政府機関の課長A氏が、本学の研究成果をそのまま書き写した論文で博士学位を取得した。当該大学に対し、A氏の研究についての倫理調査を依頼した」と発表した。M大学の関係者によると、A氏は今年2月「国際標準に基づく記録管理システムの適合性評価の指標に関する実証的研究」と題する博士学位論文を、ソウル市銅雀区にある私立大学の大学院に提出、学位を取得した。A氏はこの過程で、M大学が実施したアンケート調査の内容はもとより、表やグラフの出典を記載せず、そのまま書き写した。M大学は「A氏が書き写した研究報告書は昨年12月、本学がA氏の勤務先に提出したものだ」と主張している。

 A氏は本紙の電話取材に対し「うちの機関で研究業務を発注し、M大学が研究を行った。研究が終わり、権限がうちの機関に帰属したため、研究成果のうち適切な部分を論文に記載した」と主張した。「盗作」という概念は全くなかったというわけだ。一方、ある大学教授は「このような行為が『盗作』 に当たることも知らず、またこのようなことをしてもいいと考えるとは、あきれてものが言えない」と語った。

 ある中央省庁の高級官僚は「学位を取得した官僚の多くが(大学院の)授業は出席するだけして、論文は誰かに代筆させればいいと考えている。実際のところ、激務をこなしながら大学院に通い、学位を取得しようということ自体、無理な話だ」と話した。その上でこの官僚は「どうしてそんなことができるのか分からないが、一般大学院に登録した後、勤務時間中に(授業に)顔を出し、出席チェックをして職場に戻るケースもある。登録さえすれば、代わりに論文を書くアルバイトもいるため、学位の問題は簡単に解決するという話も聞く」と語った。

 夜間の大学院で修士学位を取得した地方公務員は「大学院に通っている公務員たちの間では、論文代筆業者の価格や、代筆者についての情報をひそかに共有している」と話した。

 公務員たちが論文を盗作、代筆する慣行は、盗作に寛大な韓国社会の悪癖と関係している。ある大学の関係者は「盗作の事実が判明しても、一時的に恥をかくことにはなるが、社会活動や経歴に問題が生じるわけではない。盗作を容認する学界や社会の空気が問題だ」と語った。

 韓国では、盗作が問題になった公職者たちが、何ら制約なく活動している。2006年には、金秉準(キム・ビョンジュン)副首相兼教育人的資源部長官(当時)が、国民大の教授だった1987年、教え子の博士学位論文を書き写して学会誌に発表したという疑惑が浮上し、就任からわずか13日後に辞任した。だがその後、大統領の諮問機関である政策企画委員会の委員長や、大統領特別補佐官(政策担当)などを経て、国民大の教授職に復帰した。また、大統領府の許泰烈(ホ・テヨル)秘書室長も、論文盗作疑惑が浮上した際、謝罪しただけで済まされ、人事には何ら支障が生じなかった。

 一方、先進国では論文の盗作は「犯罪」と見なされる。事実が判明した場合、社会と学界の両方で罰を受ける。11年3月、ドイツのグッテンベルク国防相は博士学位論文の盗作が判明し辞任した。正確な出典を示さず、論文の一部を書き写したとして、博士学位もはく奪された。昨年4月には、ハンガリーのシュミット・パール大統領も、1992年に書いた博士学位論文について盗作が判明し、大統領を辞任するとともに、博士学位も取り消された。

 ソウル大社会学科のイム・ヒョンジン教授は「短期間に学位を取得しようとする公務員や公職者たちは、学問に臨む者としての規範がないため、このような問題が生じる。このような行動に目をつぶる韓国の教授たちにも落ち度がある」と話した。



梁昇植(ヤン・スンシク)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/23/2013032300576.html

記事入力 : 2013/03/23 12:20
論文盗作の温床と化した特殊大学院

横行する公務員の論文盗作、深刻な実態

 「正直言って、看板(学位)で人脈を作るのが目的だ。学問に関心があって(大学院に)行くのではない」

 最近、ソウル市内の有名私立大学の特殊大学院で修士学位を取得した地方公務員は「多くの人にとって特殊大学院とは、カネで学位を買う所だ」と語った。

 中央省庁の官僚は「地方公務員や政府系機関の職員は、大学院に通っている人が多い。学位の審査が適当に行われ、論文も不十分なものにならざるを得ないということは、この方面の知り合いは皆知っている」と話した。

 特殊大学院は1959年「会社員や一般市民に教育を施す」という趣旨でソウル大に開設された後、63年の高麗大経営大学院を皮切りに、私立大学で開設が相次いだ。70年に27カ所だった特殊大学院は、2009年には759カ所にまで増加した。学位を取得しようとする公務員や会社員たちの間で「特殊大学院ブーム」が巻き起こり、1990年に3万5857人だった特殊・専門大学院生の数は、20年で17万9101人にまで増えた。

 ソウル大のある教授は「特殊大学院は公務員に対する再教育を行うという意味で、その趣旨は適切だ」とした上で「韓国では外国と異なり、論文を提出して初めて卒業できるため、会社員や公務員が論文を盗作したり、代筆を依頼したりする」と指摘した。米国ハーバード大のケネディ行政大学院では、一定の資格を持つ公務員は、MPP(Master Public Policy)というコースを履修すれば、論文を提出しなくても学位を授与している。

 特殊大学院だけでなく、医科大学院の学位論文も問題になっている。ある医学部生(27)は「修士課程に在籍する研修医は、英語で論文を書かなければならないため、韓国語で書いた研究概要や参考資料を代筆者に渡せば、論文を書いてくれる」と話した。また、ソウル市内の大型総合病院の医師は「学問を志し学位を取得しようとする医師も多いが、特に地方の医科大学院では、学位を取得するためだけに籍を置くケースも多い」と語った。

ウォン・ソンウ記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/23/2013032300579.html