大都市圏のビル型納骨堂について

1年前にも同じようなネタがありました。まあお盆の時期ですからね。

blue-black-osaka.hatenablog.com

記事の後半で議論されている課税については、前回の記事でも少し書きました。ここで書かれている論点について言えば、「宗派を問わず販売されている」というのはこうしたビル型納骨堂に限ったことではないので、それだけで納骨堂のみをビジネスとして課税するのは筋が通らないと思います。それだといわゆる「分譲墓地」全般にまで課税対象が広がってしまいます。

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ただし、こうしたビル型納骨堂を「永代使用」する墓地ではなく、遺骨の「一時保管」のための安置所としてとらえるのであれば、これはある意味倉庫などと同じ扱いとなる可能性はあります。つまり、「契約期限が切れた後には遺骨の入った骨壺を他に移転させることを前提とする」=「永代供養を前提としない」のなら、これは「墓地」とは別扱いで課税対象となり得るかもしれません。

私自身は、この記事に見られるような機械式駐車場納骨堂のシステムにはきわめて批判的な立場なのですが、それは「墓地としての持続可能性」という点に疑問を持っているからです。ですが、これらの納骨堂を「数年から数十年スパンで遺骨の一時保管をするための施設」ととらえ直すとしたら、それはそれで一定のニーズに応えるものとして評価することができるかもしれない、と思ったりもします。その場合には、「納骨堂へ納骨=永代供養」とはなりませんから、「遺骨のその後」についてもちょっと考えておく必要は出てきますね。

納骨ビル 大都市圏で増加…手軽さ受け 運営法人に課税も
毎日新聞2017年8月20日 10時30分(最終更新 8月20日 11時15分)

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参拝ブースの墓石(中央)に自動搬送されてきた父親の納骨箱の前で手を合わせる埼玉県内の男性と妻=東京都港区の赤坂浄苑で2017年5月27日、山崎征克撮影(画像の一部を加工しています)

 大都市圏で近年、宗派や国籍を問わずに遺骨を受け入れるビル型納骨堂の建設が相次いでいる。寺院関係者によると、遺骨の出し入れをコンピューターで自動制御し、数千規模の遺骨を収容できる納骨堂は全国に約60カ所あり、うち半数は東京都に集中する。利便性が高い都市部にあるほか、檀家(だんか)にならなくてもいい手軽さから支持されているが、運営する宗教法人に課税する動きもみられる。

 自動搬送式の納骨堂には参拝ブースがある。タッチパネルにICカードをかざすと、「○○家」などと刻まれた銘板付きの納骨箱が、立体駐車場のような収蔵庫から運ばれ、ブースの墓石にはめこまれる仕組み。花や焼香は用意されているのが一般的で、屋外の墓とは違って草むしりなどの手入れをする必要はない。

 金沢市に本院がある曹洞宗「伝燈院」は4年前、東京メトロ赤坂見附駅近くの一等地で自動搬送式の「赤坂浄苑」(港区)の運営を始めた。約3800基分を納骨でき、価格は1基150万円(年間管理料1万8000円)。仏壇仏具販売大手の「はせがわ」(福岡市)に販売や営業を委託し、既に約1500基が売れた。

 ビルの2、3階に参拝ブースが計12カ所あり、平日なら午後9時まで利用できる。今年5月下旬、父親の墓参りで赤坂浄苑を訪れた埼玉県内の男性(60)は「普通の霊園の墓より割安だし、妻との買い物ついでに手ぶらで寄れる気軽さもうれしい」と話した。

 東京に限らず、愛知や福岡などでもビル型納骨堂が建てられている。大阪府内では今年4月、初めて自動搬送式の納骨堂(4階建て、1780基)が吹田市内に誕生した。真言宗「常光円満寺」が運営し、価格は1基68万~88万円(年間管理料1万円)。3カ月半で約200基の契約が成立した。

 自動搬送式が登場する以前から、区分けされた棚に遺骨を入れるロッカー式の納骨堂は多数ある。地方の墓守がいなくなり、墓じまいして都市部の納骨堂に改葬するケースが多いため、今後も利用者が増えるとみられる。【山崎征克、近藤大介】

「ビジネス」判断 課税も

 東京都は2015年3月、伝燈院に対し、固定資産税と都市計画税計約400万円の課税を通知した。5階建てのビルのうち、参拝所や納骨堂に使う2~4階部分が主な課税対象になった。宗派を制限せずに遺骨を受け入れていることや、販売委託する会社にビルのスペースを提供して手数料を払っていることなどを考慮し、都はこうした運営方法が宗教行為に当たらないと判断した。

 地方税法は宗教法人が宗教目的に使う不動産を非課税とすると規定。伝燈院側は課税取り消しを求めて提訴したが、昨年5月の東京地裁判決は都の主張を全面的に認めて訴えを退けた。寺院関係者によると、ビル型納骨堂を運営する他の宗教法人も同様に課税されているケースがあるという。伝燈院の角田賢隆副住職(37)は「他宗派の方も受け入れ広く布教するのは宗教行為だと思うが、『ビジネス』と判断されれば仕方ない」と話した。

分け隔てない救済、妥当

 北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)の話 さまざまな事情の人々を分け隔てなく救済するのが宗教のはずだ。少子高齢化で檀家制度が崩れつつある中、寺院側が時代のニーズに合わせて都市部に納骨堂を建てるのは自然な流れと言える。宗派を問わず遺骨を受け入れる施設に課税する東京都の判断には疑問を感じる。

販売、宗教行為といえず

 寺院経営に詳しい慶応大の中島隆信教授(応用経済学)の話 同じ仏教でも各宗派で本来、弔い方などが異なる。宗派を制限せず遺骨を受け入れるのは納骨堂の契約を多く成立させるためとしか言えず、ビジネス行為と考えられる。料金を設定する販売という面からも宗教行為と考えにくく、今回の東京都の課税は妥当だ。

https://mainichi.jp/articles/20170820/k00/00m/040/119000c

ま、今はまだ状況が流動的な移行期ですけど、実際問題としてこうした納骨堂のニーズが高まっていることは事実です。上に書いた点についても、いずれは議論を詰めざるを得なくなるでしょう。

万松寺 コンピューター制御の納骨堂 織田家ゆかりの古刹
毎日新聞2017年5月21日 22時11分(最終更新 5月21日 22時18分)

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21日に完成した万松寺白龍館=名古屋市中区大須で2017年5月21日午前10時54分、尾崎稔裕撮影

 織田信長の父信秀が織田家の菩提(ぼだい)寺として建立した亀岳林(きがくりん)万松寺(ばんしょうじ)(名古屋市中区大須)で21日、遺骨2万柱を収容できるコンピューター制御の納骨堂、最新式のLED照明を備えた多目的ホールを持つ「白龍館」が完成した。

 織田家ゆかりの古刹(こさつ)は、建物正面脇に白い竜のモニュメントが置かれた近代ビルとして生まれ変わった。地上5階、地下2階建て延べ3135平方メートル。地下は納骨堂、2~3階は200人収容の多目的ホールが入る。

 ホールは合同法要のほか、コンサートや講演会、落語会などのイベントスペースとして一般に貸し出す。耐震構造ビルで、大規模地震の際は地域住民の避難場所として一部を開放する。

 大藤元裕住職(59)は「都市型寺院の在り方を地域の皆さんと考えながら、さまざまな情報発信ができる場所にしたい」と語った。

 万松寺によると、1540(天文9)年に現在の名古屋市中区錦に建てられ、同区丸の内を経て、1610(慶長15)年に現在の大須商店街の中心に移転した。第二次大戦の空襲で焼失し、戦後に廃材などで再建された。本堂は1994年に5階建てビルとして建て替えられ、それ以外の不動堂など4施設が今回の新ビルとして整備された。【尾崎稔裕】

https://mainichi.jp/articles/20170522/k00/00m/040/129000c

大津・納骨堂訴訟 ビルから改装計画 大もめ 1日初弁論
毎日新聞2016年11月1日 09時30分(最終更新 11月1日 11時47分)

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納骨堂に改装される予定のビル(中央)。中央奥が乗念寺=大津市で2016年10月30日、本社ヘリから森園道子撮影

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乗念寺(手前)が納骨堂への改装を計画しているビル(奥中央)=大津市で2016年10月30日、本社ヘリから森園道子撮影

住民反対で市が不許可処分 寺側反発「市長の裁量権乱用」

 大津市中心部で400年以上の歴史がある浄土宗の寺が、近くの飛び地に所有するビルを納骨堂に改装する計画に対し、市が近隣住民の反対を理由に「宗教的感情に適合しない」などとして不許可処分とした。周辺は江戸時代から多くの寺と墓があり、寺側は「市長の裁量権の乱用に当たり違法だ」と猛反発。市に処分取り消しを求めて大津地裁に提訴した。1日に第1回口頭弁論がある。【大原一城、森野俊】

 原告はJR大津駅の北約300メートル、同市京町2にある乗念寺で1588年に開山。市歴史博物館が10月から企画展「乗念寺の文化財」を開くなど市内では由緒ある寺として知られる。約200基の墓がある寺の敷地が手狭になり、檀信徒(だんしんと)の要望もあって、市道を挟み約100メートル南の飛び地(約140平方メートル)で修行所などに使っていた4階建てビルを納骨堂に改装しようと計画。2014年から市保健所と協議を進めた。

 15年3月に寺が開いた近隣住民向けの説明会で反対意見が噴出。「気持ち悪い」「無念の死をとげた骨もある。生活が脅かされ恐怖だ」などの声を上げた住民らが約260筆の署名を集め、翌月に越直美市長に反対を陳情した。市はこれらを判断材料に同年7月に不許可処分とし、寺側の異議も今年1月に却下した。

 市は「墓地等の経営等に関する条例」を根拠に▽110メートル離れることが要件の診療所や幼稚園が近隣にある▽例外として「市民の宗教的感情に適合し、公衆衛生その他公共の福祉に反しない」時は市長裁量で許可できるが、住民の反対が非常に多い--などとしている。

 これに対し、寺側は「近隣は寺の密集地で、すぐ近くにも別の寺の墓地がある。乗念寺の納骨堂だけ気持ち悪いという特別な感情を宗教的感情ととらえるべきではない」などと訴える。檀信徒や縁者らから約1300筆の署名を集め、地域の13寺が宗派を超えて加盟する「大津市仏教会中央分会」が納骨堂設置に協力するとの文書も添えて、今年7月に提訴した。

 寺側が反発する理由は過去の経緯にもある。訴状によると、飛び地は00年、市道拡幅のため寺の敷地を市に約500平方メートル売却する代替地として市から提案された。土地は非課税で「将来は境内地として利用できる」との合意があったと主張する。市保健総務課も非課税の事実を認め、「どんな合意があったか調査中」としている。

 乗念寺の住職(49)は毎日新聞の取材に「先々代住職が市議会議長を務めた経緯もあって『市政に協力を』と言われ、仕方なく飛び地を了承した。人間は誰でも死を迎える。宗教に敬意がない市の判断は本当に残念だ」と批判している。

納骨堂、「新しいタイプの墓」として都市部では需要

 納骨堂は墓地埋葬法で墓地と同等に扱われ、「他人の委託を受け焼骨を収蔵するため許可を受けた施設」と定義される。墓地事情に詳しい関係者によると、都市部では大規模な納骨堂ができる例が目立ち、交通の便がいい立地で「新しいタイプの墓」として需要があるという。

 厚生労働省によると全国に約1万2000施設ある。2014年度の施設数を10年前と比較すると、全国ではほぼ横ばいだが、東京都は28%増の387施設、大阪府は47%増の239施設など、大都市圏で右肩上がりの傾向だ。

 竹内康博・愛媛大法文学部教授(墓地法)は「納骨堂は土葬時代の墓などとは違い、衛生上の問題はない。墓地や納骨堂を提供することは本来、行政の責務でもある」と説明。今回の訴訟について「市町村長に大きな裁量があるのは事実だが、不許可にするなら、それなりに合理的な理由が必要だ。住民の反対意見を、そのまま宗教的感情と判断することには疑問がある。必要性や公共性を重視すべきだろう」と話す。【大原一城】

https://mainichi.jp/articles/20161101/k00/00m/040/133000c