関西の社会学者を毎日新聞の東京朝刊が紹介する記事
これは、ちょっと「お!」と思わせる記事です。関西をフィールドにして関西で研究している人たちに東京で注目が集まるなんてことは、まああんまりないですから。
トレンド観測 Theme 「関西の社会学者」著作続々 マイノリティーの現場を深く
毎日新聞2017年9月23日 東京朝刊社会学者と聞くと、最新の社会事象に命名をしたり、テレビのコメンテーターなどで活躍したりするさまが思い浮かびがちだ。実際は、長年、特定のマイノリティーなどの「社会問題」の現場を調査・研究する人が多い。特にこの約1年、主に関西の大学院出身で30代~40代前半の(人文地理学、人類学含む)研究者が、続々と著書を出した。ほとんどが初の単著。ノンフィクションとして一般読者が興味深く読めるものも多い。京都大出身だが東京在住の石原俊・明治学院大教授(社会学)は「この間の『西の社会学者』たちによる研究成果は、非常に密度と強度がある」と強調している。
たとえば、日本最大の日雇い労働者の街とされてきた大阪市の釜ケ崎(あいりん地域)について。立て続けに3冊の研究書が出た。原口剛・神戸大准教授の『叫びの都市』(洛北出版)は、主に労働運動史を論じた。白波瀬達也・関西学院大准教授の『貧困と地域』(中公新書)は、この地域関連初の新書で、行政や町内会の視点も入れた。渡辺拓也・大阪市大研究員の『飯場へ』(洛北出版)は、労働者が継続して就労するための施設「飯場」を自身の労働経験も踏まえて描いた。
在日コリアンについては、朴沙羅・神戸大講師が、『外国人をつくりだす』(ナカニシヤ出版)を出した。行政史料や1世への聞きとりから、戦後占領期に朝鮮人が入国管理の対象とされた経緯を論じた。高谷幸・大阪大准教授による『追放と抵抗のポリティクス』(同)は、現代にまで射程を広げ、戦後日本の外国人管理の変遷を扱う。
有薗真代・京都大非常勤講師の『ハンセン病療養所を生きる』(世界思想社)は、10年以上かけた当事者への聞きとりの成果だ。療養所という極限状況を生き抜く創意工夫や権利獲得運動の歴史を描いた。齋藤直子・大阪市大特任准教授の『結婚差別の社会学』(勁草書房)も話題に。被差別部落出身者の「結婚差別」について本格的な研究書は初とか。
力作の背景に、石原教授は「関西にある戦前から首都圏から自立した社会調査や研究の蓄積」を指摘する。さらに、今の若手・中堅研究者は、1990年代以降、貧困や格差の拡大、外国人差別の悪化などを目の当たりに学生・院生時代を過ごしている。「だからこそ、以前からのマイノリティーの課題を、同時代の社会問題に照らして捉え直せているのではないか」
また、今回あげた研究者たちの同世代でも、首都圏の社会学者らの場合、10年ほど前に論壇デビューした人が多い。出版や新聞が東京中心のため、首都圏の方が研究歴が短いうちからメディアに「目を付けられやすい」傾向もあるようだ。石原教授は「世界的に人文社会科学の危機が指摘されるなか、関西で分厚い研究スタイルが若い世代に引き継がれていることは、一筋の希望と言ってもいい」と話している。【鈴木英生】
あと、記事本文中にはそれとは書かれていませんが、洛北出版・ナカニシヤ出版・世界思想社といった関西(というか京都)の出版社の名前が多く出てきている点にも注目したほうがいいですね。
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