岡山には正直あまり縁がないのですが、両備ホールディングスと言えば和歌山電鐵の親会社ですからね。その動向は気にはなります。
読んでみると、これはけっこう大ごとになってます。ただ、理屈をしてはわりと単純な話で、規制緩和で自由競争を促されるのであれば、「その競争への対応として不採算路線は廃止する」という選択に他所から文句を言われる筋合いはないわけで、論理的にも当然の話です。どこでもそうだと思いますけど、赤字路線は黒字路線の収益で支えてきた構図なんですから、黒字路線の黒字が確保できなくなったら赤字路線も維持できる道理がない。
バスでも鉄道でも飛行機でも事実、そうなってますやん。
利用者の利便性確保を考えるのであれば、規制緩和・自由競争とは別の理屈を導入するほかはないでしょう。これまで公共交通機関としての役割を担ってきた民間企業であっても、経営を傾けてまでその維持を義務付けられるいわれはないですし、黒字が見込める路線に参入するところはあっても、赤字になることがわかっている路線に新規参入する事業者があるわけないですねえ。
そこをあくまで規制緩和路線で突っ張るのであれば、この路線廃止は受け入れるしかありません。「市民の理解が得られるかどうか」という話ではなく、「利用者として理解するしかない」ですよ。
両備HDがバス31路線廃止届 背景に過当競争 状況次第で撤回も
両備ホールディングス(HD、岡山市北区錦町)は8日、グループ2社が運行する路線バス78路線のうち、赤字幅の大きい31路線について廃止届を中国運輸局に提出したと発表した。期日は20路線が9月末、11路線が来年3月末。廃止理由については岡山市中心部でのバス事業の過当競争を挙げる一方、状況によっては取り下げる可能性も示唆した。
両備HDによると、対象は両備バス(岡山市北区錦町)が岡山、倉敷、玉野、瀬戸内市で運行する18路線、岡山電気軌道(岡電バス、岡山市中区徳吉町)が岡山、倉敷市を走る13路線。重複路線や他社との共同運行があるため、実際に廃止となるのは一部区間に限られるが、影響は1日約5500人に及ぶとしている。
本社で会見した両備HDの小嶋光信会長は、廃止の背景として、同業他社の八晃運輸(岡山市中区倉益)が計画している循環バス「めぐりん」の新路線開設を挙げ「バス事業は30~40%の黒字路線で残りの赤字路線を維持している。黒字路線に新規参入されれば赤字が膨らみ、全体を維持できなくなる」と述べた。
一方で廃止届の扱いについては「あらゆる可能性がある」とした上で「むしろ路線を維持するために提出した。全国の公共交通を守るための問題提起だ。自治体や市民、バス事業者が将来の公共交通網の在り方を考えるきっかけとしたい」と理解を求めた。
両備HDの試算では、めぐりんの新路線が開設された場合、競合路線での運賃収入減などで両備バス、岡電バス共に4割超の減収が見込まれるという。
八晃運輸は新路線について「運行開始が決まったら発表したい」とし、両備HDの路線廃止に関しては「まだ新路線の運行が始まっておらず、何も結果が出ていない段階で今から赤字路線をやめるというのは理解しがたい。利用者目線で考えてほしい」としている。
(2018年02月08日 23時08分 更新)
赤字31路線を一斉廃止へ バス会社、規制緩和に抗議
加戸靖史、村上友里 2018年2月8日20時12分
廃止方針が示された岡電バスの路線バス=8日午後6時20分、岡山市のJR岡山駅前、小瀬康太郎撮影
赤字バス路線の廃止を会見で発表する両備グループの小嶋光信代表=8日午前10時、岡山市北区、山口啓太撮影岡山県を中心にバス事業などを営む両備グループは8日、傘下2社の78路線のうち赤字31路線を一斉に廃止すると、国土交通省に届け出たと発表した。割安運賃を売り物にする他社が、両備の数少ない黒字路線への参入を計画。国も認める見通しとなったのに抗議する、異例の「実力行使」に踏み切った。地域住民の足への影響が懸念される。
2002年の道路運送法改正で、路線ごとの乗客数に応じ、国がバス事業者の数を制限する需給調整は廃止された。小嶋光信・両備グループ代表は8日の会見で「法制度を抜本的に改めない限り、どこの地方でも同様の問題が起きる。泣き寝入りはできない」とし、国や関係自治体、住民らを交え、問題解決に向けた協議の場の設置を訴えた。
今回の廃止路線は延べ113・8キロで、2社の営業距離の22%。岡山、倉敷、玉野、瀬戸内の4市にまたがる。1日の平均乗客数は計約5600人。20路線が今年9月30日に、11路線は来年3月31日をそれぞれ廃止予定日としている。
両備によると、岡山市中心部で運賃100円均一の循環バスを走らせている八晃(はっこう)運輸(同市)が昨春、両備の基幹路線である「西大寺線」への参入を国に申請した。運賃は両備より30~55%安い設定だという。
両備側は「過当競争が起きる」と反発したが、国交省は近く認可する見通しだ。両備のバス2社は西大寺線などの収益により、全体の6~7割を占める赤字路線を支えてきたが、八晃の参入で年3億円近い減収となり、全路線の維持は難しいとしている。
小嶋代表は、和歌山県の旧南海貴志川線を、猫の「たま駅長」がいる和歌山電鉄として立て直すなど、地方公共交通の「再生請負人」として知られる。会見では「規制緩和の弊害で公正な競争ができなくなっていることへの問題提起だ」と述べ、国などの対応次第で廃止の見直しもあり得るとの考えも示した。
八晃運輸は朝日新聞の取材に「参入を申請するのは自由だ」とコメント。国交省中国運輸局の担当者は「参入が不当な競争を生まないかはきちんと審査する」と語った。
全国のバス事情に詳しい交通ジャーナリストの鈴木文彦さんは「バス需要が右肩下がりの時期に実施されたため、各社の消耗戦のような価格競争や、ツアーバスの安全性低下など、規制緩和に問題があるのは確かだ。ただ、バス利用者の多くはそうした業界の実情を知らない。『路線廃止』というやり方で、両備側の意図が市民にどれだけ伝わるかは微妙だ」と話す。
青息吐息のバス業界
路線バスの業界は全国で苦境にある。国土交通省の統計では、年間の乗客数は42・8億人(2016年度)で、ピークだった1960年代の約4割に。規制緩和前の00年度と比べても1割少ない。マイカー普及や地方の人口減が原因だ。
バス会社は、大都市と地方を結ぶ高速路線を拡充するなど、収益の確保に努めてきた。だが、30両以上のバスを持つ全国248社のうち、65%の161社が赤字(15年度)だ。三大都市圏以外の地方では83%にはね上がる。労働時間が長いのに賃金が低い傾向が続いており、運転手の確保も悩みの種となっている。
国交省によると、15年度までの10年間で廃止された赤字路線は、東京―大阪間の距離の約40倍となる計1万6千キロメートルに上る。(加戸靖史、村上友里)
両備・岡電バス 31路線廃止
2018年02月09日
来年3月末で廃止される「汗入・火の見・重井病院線」の路線バス(岡山市北区の天満屋バスステーションで)
廃止路線について説明する小嶋代表(岡山市北区で)◇倉敷など4市 黒字線他社参入で
両備ホールディングス(岡山市北区)は8日、グループ会社が運行する両備バスと岡電バスの計78路線のうち、31路線を廃止すると発表した。岡山、瀬戸内、倉敷、玉野4市の主に郊外の赤字路線で、1日当たりの影響人員は約5500人。岡山市内の黒字路線に他社が運行申請したことに伴い、赤字路線の維持が難しくなると判断した。(加藤律郎)
◇赤字穴埋め難しく
同ホールディングスの小嶋光信代表が記者会見で明らかにした。廃止するのは、両備バスが36路線中18路線(78・5キロ)、岡電バスが42路線中13路線(35・3キロ)で、7、8両日に中国運輸局に廃止届を提出した。9月末、来年3月末の2段階で廃止する。
小嶋代表によると、廃止のきっかけは、八晃運輸(岡山市)が運行する市内循環バス「めぐりん」の路線拡大という。
同社は昨年3月、岡山駅前を起点に県庁前、東山などを通り、イオンモール岡山を経由して岡山駅前に戻るコースを同運輸局に申請。このコースは、両備バスの黒字路線である西大寺線と重なっており、料金は両備バスの140円区間、220円区間を100円に、400円区間を250円程度に設定されているという。
岡電バスも同じ方面の路線を同様の料金で運行しており、めぐりんの新路線が認可されれば、2社の減収総額は年間で約2億8100万円に上る見込みとしている。
両備バスの黒字路線は30%、岡電バスは40%で、その利益で赤字路線を維持してきたという。小嶋代表は「2002年の改正道路運送法による規制緩和の弊害」と主張。八晃運輸の申請は「不当な競争を引き起こすおそれがある」として不適切と訴えた。
これに対し、同運輸局旅客第1課(広島市中区)は「採算が取れる料金設定であれば、企業努力でもあり問題はない。許可か不許可かは近日中に結果が出る見通し」と説明。八晃運輸の担当者は「認可されるよう準備を粛々と進めている」と話した。
◇廃止が発表された路線
【両備バス】新倉敷駅線▽青葉町車庫線▽玉野光南高校線▽企業団地線▽宝伝線▽旭川荘線▽岡山荘内渋川線▽岡山宇野渋川線▽川鉄本線▽岡山国道30号線▽クラレ・住友線▽操南台団地線▽岡山倉敷旧2号線▽王子ヶ岳線(以上、9月末廃止)▽牛窓北線▽牛窓南線▽岡山小串鉾立線▽岡山上山坂宇野線(以上、来年3月末廃止)
【岡電バス】三野線▽中央病院線▽神道山線▽西小学校線▽京山線▽ポリテクセンター線(以上、9月末廃止)▽花尻入口線▽北長瀬線▽新保・万倍線▽中庄・北長瀬・バラ園線▽汗入・火の見・重井病院線▽コンベックス線▽付属校線(以上、来年3月末廃止)
http://www.yomiuri.co.jp/local/okayama/news/20180208-OYTNT50275.html